夜を這う指先

二度見した過去とは目が合ったから何秒間か目を合わせていたんだ
よそ見した未来とはよそよそしいそよ風が吹きそうで不規則な鼓動が暴れ出す
今など自暴自棄の横殴りの雨がお似合いだ
間合いも気にせず曖昧なフェイドアウトに揺られて自分自身との近親相姦が大好物な生き物で
海抜ゼロメートルから潮が干からびる音を聴く
乾いた身体を抱いて微量に湿らす微妙な湿度感
不干渉な不感症に感染して心に腐敗の装甲を
肌の下だけ腐蝕していくのを感じながら継ぎ接ぎの夜を溶接しては継ぎ足していくことに意味を二度見している内に変遷する季節に幾度と真実を隠蔽されることでしょう
きみが増殖する季節にはぼくなど殲滅されていくことを願うのに背後から忍び寄る希望の音すら消せずに戸惑いに連れ去られてしまう

苦しまないように苦しめてあげるね
改造される思想を騙すための時間だね
変身すること夢見て夢に喰われた理想だね
半透明を半壊させて半開の窓を割ってね
性別不詳の昇天を目指して感度を温めてね

獣さえ機械仕掛けの冷たい怪物に成り下がり
無機質な記憶を陣取るよう包囲網を狭めて
入り口や出口のない場所で声を圧し殺せば
圧倒的な欺瞞と搾取を華々しく散りばめる

淫らな肢体を風に晒せば誰もが見惚れて
神様の玩具だからぐちゃぐちゃにしよう
天の罰か天の配剤か天の廃材かその身体は
手足を伸ばして固定すれば星型に見えるから
流れ星のような生命を優しく殺めていたい
はやくはやく焦らずにじっくりと溶けてる
この脆く醜くも美しい今にまみれた記憶の容れ物としての肉の塊を上手に分解してみせて
剥がれながら破片はなまぐさく剥離されながら最後の最期まで火照り続けてきみの中の狭い部分を撃ち抜きたい発射したい息絶え絶えに喘ぎながら脈打ってしまいたい