私のアンテナに1ミリたりとも引っかからなかった映画だが(存在すら知らなかった)、尋常ならざる強力な推薦を受けて見ることに。見逃さなくて本当に良かった。今年の日本映画ベストワンは、おそらく本作で決まり。ほぼ無名に近いスタッフ・キャストが生み出した、奇跡の名作だ。
最良の「青春映画」であり、最良の「バンド映画」…そこまでは分かるが、驚かされるのはこれが実に骨太の「社会派映画」だったこと。それが決して取ってつけたようなものではなく、その要素無くしてこれほどの感動はありえないドラマ的必然性に満ちていた。
今の日本で、このような形でロミオとジュリエット物語が成立してしまうことの驚き。そしてそれが成立してしまうことの悲しみ…これが中盤以降、基調低音となって作品のカラーを決定づける。
驚くべきは、物語の進展に伴う作品の印象の変化だ。最初の方は、悲劇的な展開まで含めても、ラノベ的にベタで薄っぺらい映画文法に辟易。「こりゃダメだ」と思ったのだが、その悪印象が中盤以降どんどん反転していくことに息を呑む。むしろ序盤の軽薄な印象に鼻白んでガードを下げてしまったことで、後半の感動の嵐に滅多打ちにされた感じ。これが意図的な演出なら、完全にしてやられた。
映像は終始 沖縄の明るい光と色彩に満ちている。ところが後半は、その明るさの中で展開する不条理な現実と悲しみに胸が引き裂かれる。むしろ明るいが故に悲しい。そして悲しいけれど、生命感を感じさせる。
若い役者たちもそうだ。序盤の馬鹿で軽薄な印象が、これ以上ないほどの愛しさに反転していく驚き。2人の女の子も、最初のうちは「顔が可愛けりゃいいってもんじゃないぞ。演技ってものを舐めるなよ!」と思っていたのが、最後には「地球上にこの2人以上に愛しい女の子はいない!」とまで思ってしまう。
ちなみに私は、モンゴル800については有名曲を少し知っている程度で、一切の思い入れは無い。見る前は「モンゴル800の若い頃のドラマ化なのかな?」と思っていたが、全然違うようだ。既成のバンドの曲からインスパイアされた映画として、これ以上のものはほとんどあるまい。
中盤からはずっとウルウル。後半何度も涙が頬を伝い、劇場から出てきても映画を思い出しだけで涙がとまらない。残念だったのは、1日1回上映になったせいで意外と混んでいたこと。貸し切り状態だったら、形容ではなく文字通りの意味で声を上げて嗚咽していたところだ。
そんなわけで渾身の力を込めて推薦。ゴジラは後回しにしてもいいから、これだけは見るべし。出来れば一切の情報を入れない方がいい。特に予告編は「え!そこ見せちゃうの!?」というネタバレがあるので、絶対見ないように。
本編に関しては絶対見るべし。
必ず見ろ。
本当に騙されたと思って見て!
まったく箸にも棒にもかからなかったら、私がチケット代を払ってあげるから!
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絶対に払わないで済む自信があるからこそ言えること。
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