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2019年01月16日01:22

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【拳闘】メイウェザー×天心 《壱》試合前

プロボクシングは現在17階級に分けられているが、軽い方だと1階級の差は2kg程度しかない。
『そんなに細かく分ける必要があるのか?』
『2kgでそんなに違うのか?大袈裟だよ』
そう疑問に思う人は少なくないだろう。俺もそう思ってた。ところが、これが全然違うらしい。
判り易い例えとして『階級の違いは小学生の学年の違い』と言われてる。
小学1年生の中で一番ケンカの強いヤツと、2年生で一番強いヤツの違い、ってこと。こう考えると、その差は大きそうだ。
最近は複数階級制覇が流行ってて有り難みが薄れているが、下の階級のチャンピオンが上の階級でも戴冠する、いわゆる『2階級制覇』と言うのはかなり凄いことだ。それを、なんと『5階級』に渡って制覇したと言ったら、もはやどう表現すればよかろうか。小学1年生が、5年生に勝つなんてちょっと考えられない話。まさに『偉業』としか言い様が無いが、それを成し遂げた男がフロイド・メイウェザーJ rであり、心技体、全てがトップクラスの、恐ろしいまでに強いボクサーだ。
『世紀の一戦』と謳われたマニー・パッキャオとの試合では、ファイトマネーは何と330億円。それだけの大金を払ってでも試合が観たいと、人々に思わせるだけの強さ、価値のあるボクサーと言うこともできる。
そのメイウェザーが今回、那須川天心と対戦することとなった。『マイケル・ジャクソンが紅白に出る』くらい衝撃的と言う人もいるくらいの大事件で、当然日本中の格闘技ファンや関係者は騒然となった。皆が対決を喜んだが、また同時に、実現に懐疑的な人も多かっただろう。
この話は、一度メイウェザー本人から取り消される。『大晦日のお祭り』としてエキシビションをやるつもりでいたメイウェザー側は、話を煮詰めていくにつれ、真剣勝負を挑もうとしているRIZIN側との間に温度差を感じ取ったからだ。何か一発かましてやろう的な、RIZIN側の下衆な思惑が見え隠れしていたのだろう。
慌てたRIZIN側は『記録には残らないエキシビション。3分3ラウンドで、判定はせず』というルールを再確認し、実現が決定となった。

大きな問題は2つある。1つはルール。キックボクサーの天心とボクサーのメイウェザー。キックの有り無しだが、これはメイウェザーが妥協するはずはないだろうし、やはり『蹴りは無し』となった。
もう1つは体重差だ。

上の階級で戦う場合、選手はその体重に合わせて調整する。
『両者共同じ体重で戦うなら「体重差」なんて無いジャン』
と思う人がいるかもしれないが、そう簡単な話ではない。
体重を落とせば筋肉や脂肪も減るので、当然パワーも耐久力も低下する。と同時に、対戦相手も小柄な選手が多くなる。
小柄なボクサーは突進型のインファイターであることが多いから、対戦するとしたらその前進を止めるリードジャブや飛び込み様を狙うカウンター、相手の射程外に逃れるフットワークなどが要求される。
反対に、体重を上げればパワーも耐久力もアップするが、その分相手も大きく強い。
大柄でリーチの長い相手に対しては、被弾覚悟で飛び込まないと自分のパンチが届かない。故に、打たれ強さ、踏み込みの速さ、打ち合いで打ち勝つパンチ力などが必要となる。
本人の特性や素質、性格とか技術などによって自分にベストの階級を見つけることが重要となるが、以上の様に、階級が変わると戦術なども大きく変わる為、どの階級でどういうスタイルで戦うかは大きな鍵となる。
また、減量や増量にも限界がある。筋肉量を増やせばパンチ力も際限無く増す、という訳でもない。過度な筋肉により動きが硬くなったり、エネルギーの消耗が大きくスタミナ面で問題が出る。逆に減量で脂肪を減らし過ぎても打たれ弱くなるし、同じくスタミナが無くなってしまう。程々の『適正体重』というのがあるのだ。

今回、天心は62.1kgに仕上げた。一方メイウェザーは66.7kgで、両者の体重差は4.6kg。
これだけでも既に2階級くらいの差があるが、問題は、元々55kgくらいで戦っていた天心が7kg以上も増量してる点だ。体重差が縮まったし減量苦から解放されたんだから良いのかと言えば、それもまた違う。
例えば、クルマのエンジンを改良し、パワーを引き上げたらどうなるだろう?単純に、スピードが速くなってメデタシメデタシ、とはならない。
パワーが上がればそのトルクを吸収するタイヤが必要だし、スピードが増した分ブレーキも強化しなければならない。燃費が悪化すればタンクの増量も必要だろうし、車体の剛性も心配だ。
つまり、『全体のバランスが狂う』ってこと。クルマの例えで続けるなら、我々が普通に乗ってる乗用車ならば多少の余裕を持って設計されてるだろうから、少々バランスが崩れたところで問題は少ないだろう。しかしボクサー達は究極のアスリート。全てを極限まで研ぎ澄まし、最大の戦闘力を絞り出しているのだ。極めて繊細で、絶妙なバランスの上に成り立っているF-1マシーンが、いきなり馬力が2倍になったらめちゃくちゃになってしまうことだろう。それと同じようなものである。
普段55kgの体重で戦っている天心は、いつもより余計に力が入り過ぎてぎこちない動き(鈍く)なったり、重い身体がスタミナを消費したり、そうした弊害があったはずだ。それに増量した7kg分全てを筋肉にできたのならまだしも、少なからず脂肪も残ったことだろう。戦うのに邪魔な脂肪が増え、動きにキレが無くなる危険も考えられる。
人にもよるだろうが、2kg程度の増量ならまだしも、いきなり7kgも上げたら自分の身体じゃないみたいな感覚だったのではあるまいか。その時点で戦うこと自体も難しいだろうし、加えて天心はボクシングの試合は初めて。更に付け加えるなら、その相手が5階級を制覇した、『ボクシング史上最高のパウンド フォー パウンド』メイウェザー。
どこをどう切り取っても『無謀』としか言いようの無いマッチメイクである。

メイウェザーはただ強いだけではない。俺は個人的には天心にとって、相性的に最悪だと見ていた。その理由は彼のボクシングスタイルだ。相手の攻撃をズバ抜けたディフェンス力で防ぎ、卓越したカウンターで仕留める堅実な戦い方。一言で言うなら『待ちのボクシング』。
マイク・タイソンに
『庭の芝生が育つのを見守る様な(退屈な)ボクシング』とまで言われた、隙が無く冒険しないスタイルだ。
一方の天心も、鋭いカウンターや奇想天外な回し蹴りを持ち味とし、相手の一瞬の隙を突くスタイル。しかし身長173cm、リーチ183cmのメイウェザーに対し、天心は身長165cmでリーチは169cm。体格で劣りリーチの短い天心は、待っていたら自分の射程外から一方的にパンチを貰ってしまう。自分から飛び込んで行くしかない。しかし飛び込めばカウンターが待っている。そこはメイウェザーの土俵だ。ガードが固いし自分から打って来ないからカウンターのチャンスは少ないし、蹴り技は一切禁止。これで一体どう戦えと言うのだろうか。
逆に、ガンガン前に打って出て来る相手であれば天心にもチャンスはあった。打ちに来ればガードが開いて隙ができ、その一瞬にカウンターのチャンスが生まれるからだ。

オスカー・デ・ラ・ホーヤ、リッキー・ハットン、ファン・マヌエル・マルケス、シェーン・モズリー、ミゲール・コット、サウル・アルバレス、マニー・パッキャオ、コナー・マクレガー…
目も眩む様な錚々たるビッグネーム。いずれもボクシングを極めた強豪たち。しかし誰もメイウェザーを負かすことはできなかった。
ハッキリ言って、日本ボクシング史上最強と言われている井上尚弥でさえ、メイウェザーには全く歯が立たないだろうし、それどころか上に挙げたボクサー達にだって井上は勝てないと思う。
ボクシングルールで戦うなら、天心は多分その井上にも完敗だろう。
そう考えて行けば、天心がメイウェザーに勝つ可能性は限りなくゼロだ。
試合を受けたからには何かしらの突破口があると睨んでいただろうけど、少なくとも俺には全くその糸口が判らなかった。
唯一メイウェザーの欠点らしい欠点は『パンチが無い』ということだが、それはあくまでも『強いボクサーにしては…』って話であり、遥かに体重差のある天心にしてみれば殺人パンチである。

さて、一体全体どんな試合になるだろう。
メイウェザーが油断して、天心のパンチが当たるか?
完全に甘く見ているから、それは充分有り得ると思う。

それが奇跡的なクリティカルヒットとなり、天心がKO勝ち。それも無くは無い。

一番可能性があるのは、イキる天心をメイウェザーがいなし、ドローに持ち込んでヤレヤレ… って展開だ。そして試合後に
『簡単に倒せたけど、わざと遊んでやった』みたいな捨て台詞で焚き付け、再戦して再び大金をせしめる。
このシナリオだろう。

試合は結果も勿論だが、一体どんな展開となり、どんなことが起きるのか、全く予測できないだけに、寧ろそれが楽しみでもあった。
そんなことを色々考えながら大晦日。その日はやって来た。


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