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2018年11月01日21:34

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「やぶれかぶれ青春記・大阪万博奮闘記」読了

【書名】やぶれかぶれ青春記・大阪万博奮闘記
【著者】小松左京
【発行】新潮社(新潮文庫)

「作家・小松左京の原点を知る上で必読のテキストを収めた」という文庫オリジナルの作品集。自らの青春時代を小説化した「やぶれかぶれ青春記」、小松左京没後に発見されたモリ・ミノルとしてのデビュー作の紹介も含めた漫画家としての小松左京に関する息子さんによる補足説明「『青春記』に書かれなかったこと――漫画家としての小松左京」(小松実盛)、万博研究を進めるうちに実際に関わることになったEXPO '70についての記録「ニッポン・七十年代前夜」、万博が持つべき理念について熱く語った「万国博はもうはじまっている」、などが収録されています。

昔むさぼり読んだ諸作品の原点がそこかしこに見られ、自分としてはどれも初見でしたが逆に懐かしい思いが浮かんできました。著者の根底には戦時体験があり、それが小説にも万博の理念にも反映されていて、そこに「図書館にこもってとにかく手あたり次第に読んだ」という外国文学(最高記録は「戦争と平和」(トルストイ、岩波文庫)全十二巻読破三日間だとか)のエッセンスも加わってあの骨太で文明に対する深い洞察を含んだ作品群ができたのかと納得しました。万国博に関するレポートはどちらも理念重視で、あの時代の「熱さ」が伝わってきます(まさかそのすぐ後にオイルショックを挟んで「しらけ世代」「三無主義」などと言うドライな時代が訪れようとは)。

ところで最近、手持ちのCDをデータ化してスマホで聞けるようにしているところなのですが、「やぶれかぶれ青春記」や「ニッポン・七十年代前夜」などで戦中・戦後の気分にどっぷり浸ったあとで「星の流れに」(菊池章子)を聞いたところ、涙が止まらなくなってしまいました。文学や音楽の持つ「力」って、ここまで人の心を揺さぶるすごいものなんですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Xa0Jl71N7ag
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