これは、ある有名な小説の出だし。
山道を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。
情に竿を刺せば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角、人の世は住みにくい。
ここまでならネットで検索すれば、すぐに作品のタイトルが出てきます。
ここだけを知っていて、作品そのものを知っている気になってませんか?
主人公は何故に山道を登っていたのか?
なぜ、そんな事を考えていたのか?
そもそも、主人公の名前は?
ネットで検索して調べたら正解が出てくるでしょうが、本を手にとって読んでみるのが一番手っ取り早い。
小説「草枕」の最初の2ページには、冒頭の「山道を…」に続いて、作者の夏目漱石の「人間には、なぜ芸術が必要なのか?」という疑問と、彼自身の見解が書かれています。漱石が当時、人間関係に悩まされていたことを伺い知れます。
文章は難しくはないので、書店で見かけたら読んでみてください。所要時間は5分程度。
そして、漱石が考える「芸術に不可欠なもの」がラストの1ページで明かされます。
厚さにして1センチ足らずの薄っぺらな本ですが、何度も読み返しています。
「本」を手軽に買えるという意味では、悲しいかな…、時代の要望に応えた結果でしょうね。
仕方ない…。
その反面
ネットのレビューは、ごくたまに読みますが、小説を「本当に読んでいるの?」と眉に唾をつけたくなる。
最近の小説のレビューは、どこかの有名人が書いた批評の「お決まりの賛辞」を縮小再生産しているようで、本っ当に腹が立つ。
世渡り上手なら「長い物には巻かれろ」と忖度するのでしょうが、狸は不愉快極まりない。
「スタージョンの法則」をご存知か?
「SF小説の99%は、クズである」。
「SF小説」、「小説」全般を「文学」に置き換えても、違和感は無いでしょうね。
一部のファンに賞賛される作品は、芸術に興味のない人には「クズ」同然。
そんな「クズ」を集めたところに、なんの価値があるの?
極論すれば、「書店」や「図書館」の存在意義を問われているんですよ。
狸が以前、書店で見た光景。
今は無い書店で、年上と思われる女性が購入したのは、ジュール・ベルヌの「地底旅行」。
レジにいた店員が「良い本を読んでいますね!」と笑っていました。
おすすめのポップはなくとも、書店員の好みはなんとなくわかります。
レジで本を何気なく差し出した時、「私の好きな作品を選んでくれて、ありがとう!」という表情がとても楽しい
■数字に見る「リアル書店」のいま 都会の有名店舗が閉店、続く苦境
(弁護士ドットコム - 09月12日 10:03)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=149&from=diary&id=5285075
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