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2017年12月31日19:03

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100冊の岩波少年文庫 (感想編)

6/22に「50冊の岩波少年文庫」と題した日記を付けましたが、その続きです。100冊に到達しました。

↓50冊のときの日記:
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1961118466&owner_id=2173139

■珠玉の短編集
「50冊」の日記を綴った後で、「短編を不当に低く評価してしまってたな」とあるとき気付いた次第。収録作すべてが傑作ってことはあり得ないのに、それが理由で低く見るのはどうかと。なので、100作品から改めて選びました。

◎真夜中のパーティー
 (フィリパ・ピアス)
大人になってからはすっかり忘れてしまうような、子供だけが持っている感性や、大人としての精神性の芽生えをテーマに据えた短編集です。とにかく淡く繊細で、感情表現は抑制的というクールな筆致が、けっこう大人向けの味わいです。

◎八月の暑さの中で ホラー短編集
◎南から来た男 ホラー短編集2
  (金原瑞人・編)
ホラーといっても、おぞましい描写はほとんどないので安心を。古今の英米作品から選んだ、この後どうなっちゃうんだろう? という物語ばかりです。ボードゲーマー的には、「ボトルインプ」(Bottle Imp) の元ネタが載ってるのも嬉しい。

◎西風がくれた鍵
 (アリソン・アトリー)
収録されてる6編は、どれも妖精が出てくるような幻想的なものばかり。だけど数多ある英米の同系統のお話とは、ほんのり色合いが違ってて新鮮でした。作家の個性を感じられます。

◎イワンのばか
 (レフ・トルストイ)
キリスト教への信仰心が色濃く描写されてはいるものの、根底にあるのは「他人に対しての慈愛を大切にして生きなさい」という、もっと普遍的なテーマでしょう。読者への訴えかけが直球過ぎるきらいもありますが、素朴な印象と相まって、なんとも言えない暖かさを味わえました。

■特に素晴らしかった作品
ここからは、51冊〜100冊目が対象です。

◎ジーンズの少年十字軍<上><下>
 (テア・ベックマン)
かつて実際にあった、少年少女だけの十字軍を題材にした物語ですが、中身はかなりエンタメ寄り。いくら読者を飽きさせないためとはいえ、ここまで目まぐるしく事件を起こすのはどうなんだ? という感想もよぎった程です。それでも破綻しないのは、徹底した時代考証という下敷きがあるからでしょう。本国オランダでの80刷超えも伊達じゃない。

ただ、登場人物たちが、舞台装置の一部でしかないような。これは当世の作品ではよくあることでしょうが、岩波少年文庫では異色ではないかと。

◎さいはての島へ
 (アーシュラ・K. ル=ヴィン)
ゲド戦記の3巻目。ゲド戦記は9/28の日記に詳しく書いたので、ここでは割愛します。

◎ジーキル博士とハイド氏
 (R.L. スティーヴンスン)
世界中に知れ渡っている、スティーヴンスンの代表作。出だしから最後まで、読者を釘付けにする語り口の、実に巧妙なこと! プロットもよく練られてますね。オチを知っていても、一気に読み進めてしまいました。

■印象深い作品
◎影との戦い
 (アーシュラ・K. ル=ヴィン)
ゲド戦記の1巻目です。

◎やかまし村の子どもたち
◎やかまし村の春・夏・秋・冬
◎やかまし村はいつもにぎやか
 (アストリッド・リンドグレーン)
家が3戸しかないスウェーデンの田舎を舞台に、子どもたちの日常の出来事を、明るく和やかに描いたシリーズ。心が癒やされます。各冊15編前後のエピソードが綴られていますが、最終巻になっても焼き直し感がないのがスゴい。どこまでアイデアが尽きないんだろう。

◎名探偵カッレくん
◎カッレくんの冒険
◎名探偵カッレとスパイ団
 (アストリッド・リンドグレーン)
子供が名探偵って設定は巷に溢れてますが、さすが大家リンドグレーン。わんぱく少年達の日常と大事件のブレンド具合が、メチャクチャ巧いです。ただ、巻が進むごとに事件のスケールも大きくなるんですが、比例してご都合主義の度合いも増してしまってるのが惜しい。そんなわけで、私が一番気に入っているのは一作目です。

それにしても、リンドグレーンは才人です。ハチャメチャ・ナンセンス系 (長くつ下のピッピ)、和み系 (やかまし村)、そして少年探偵モノの本作。作風は違えど、どれも見事な力量を発揮しているのですから。

◎リンゴの木の上のおばあさん
 (ミラ・ローベ)
不思議な魅力に溢れた一作。祖母からみた理想の孫と、孫からみた理想の祖母の像を対比してみせるのが作者の目論見なんでしょうが、二つの理想像が作中でうまく溶け合って...ません。まるきり混じり合ってないんです。でもっていきなりストンと終わってしまう。それでも、よく分からないけど魅力的です。なんでだろう。

◎床下の小人たち
◎野に出た小人たち
 (メアリー・ノートン)
ご存知、ジブリ映画「借りぐらしのアリエッティ」の原作本。映画を先に観てしまったので評しにくいですが、やっぱり名作じゃないかな、と。でもって原作の最大の魅力は、この物語にぴったりな、端正な古典の雰囲気。やはり本作の舞台は、英国じゃなければと思わせてくれます。

小人シリーズは、このあとまだ3冊続きます。

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