鍵のついた夢を開けるために入眠して
日々のつかれを癒そうと入浴するように
するりと何事もなく布団に滑り込んで
なぜか別の扉を開けてしまったかのような
悪夢にうなされていると喉がからから
鍵をかけ忘れてここに戻ってきたのに
同じ世界にはもう二度と入り込めない
さようなら平行世界また会いに行くから
そちらの世界もぼくなど忘れるだろうけど
さみしいときにはいつでも心で呼んでいて
時間も空間もばらばらの場所に毎夜飛んで
不時着しながら季節の化粧を落としては
また新しい色の装いを寄せ集めては纏う
細胞のひとつひとつに名前を付けられたら
無限の双子や三つ子が増殖し続けて
みんなで手を繋いで寄り集まったのなら
ぼくらの形が見えてくるのだろうか
月に一度行ってから戻ってこれたりしたら
景色が嘘みたいに違って見えてくるだろうか
本当はまいにち何が起きているのか解らない
考えることをやめて人間として振る舞うけど
教育の中で疑問符を奏でることを剥奪されて
謳う台詞は目の前に見える切り取られた一節
行間に破砕された空白は真っ白でも透明でも
存在を認知できなければブラックホールと同じ
そこにたしかに吸い込まれたいと思うのはなぜ
破滅を願う気持ちとどこか同調してしまうのか
こんにちは平行世界どこかで会ったような
間違いだろうと勘違いだろうと構わないような
前世でも来世でもないような共時性の魔物が
鍵のかかった胸の扉に風の息を吹きかける
すーすーと通るむなしさは不思議とさみしくない
満たされるために今回はからっぽになるから
月の満ち欠けと潮の満ち引きが静かに繰り返し
からだのどこかで行われているのを感じていた
地球の座標軸の中ではごみみたいな点だけど
神が宿る愚かな存在は悪魔の中に神を見い出す
私は裏切りと反逆の魔窟からの悪夢からの使者
なのにこれでもかというほど神をしつこく宿す
あの山にもあの海にもあの石にさえ神を宿す
絶望の花を咲かせながら一歩でも近づこうとする
懲りもせず薄汚いまま愛にしがみつこうとする
身勝手で汚らわしいのに見捨てられないのはなぜ
冬空から天使が溶けそうな冷たさで舞い降りる
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