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2017年11月19日11:02

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貨客船兼自動車渡船の進水式 #内航船の日

本稿は事前にスマホで書いてメールに下書き保存しておいた原稿に、現場で撮影した写真を添付し、命名されたばかりの船名を加筆して投稿しています。

写真は山口県下関市彦島江の浦町6-16-1にある三菱重工下関造船所江浦工場で今日(2017-11-19)撮影したもので、今日10:55開式の命名・進水式が一般公開されていました。



進水船の概要
 船舶の種類
  貨客船兼自動車渡船
 全長
  約93.5m
 幅
  約15.8m
 総トン数
  約2000

今月1日に造船所のウエブサイトで進水式の公開が発表された際に、この概要も書かれていました。

この概要だけで私ならすぐに「あの船の代替だな」とピンとくるのですが、本稿は報告書でも論文でもないので、面白みは大事ですから、もったいぶることにします(笑)。



貨客船と自動車渡船を兼ねる、ということは、コンテナ貨物も旅客も自動車も1隻にまとめて輸送する必要がある、言い方を変えれば、貨物船とフェリーとを使い分けるだけの需要がない航路で使われる、ということです。

そこにこの大きさの船を充てる、となれば条件を満たす航路はかなり絞り込めますよね。

ただ、そんな考えが頭の中でできるのは業界の方と私のようなヲタクだけでしょう。

艦船に詳しい方はかなりの人数がおられるのですが、日本は島国なのに商船のことはあまりにも知られていません。



さて、造船所の仕事をできるだけ簡略に書くと、

1.開発
 本船のような1点物は別として、同型船を複数建造することが普通です。造船所側が標準船型を開発して船主から受注するケースが増えています。

2.船主、海運会社からの引き合い
 船の仕様を船主や海運会社から造船所に提示して、造船所の設備が納期に合うように使えるか、の引き合いです。

3.基本設計
 仕様書から船の性能を決め建造価格を見積もります。

4.見積もりの提示

5.発注・契約と船価の1/3の支払い

6.詳細設計
 造船所が性能や強度を詳細に検討し図面を仕上げます。

7.資材発注
 工程の進捗に合わせて納品されるように発注します。

8.鋼材加工
 製鉄所から納入された鋼板を切ったり溶接したりします。

9.ブロック製作
 加工した部材を大きな塊に組み上げ、あとで船台に運んで繋ぎます。

10.先行艤装
 パイプなど先に取り付けておくのが合理的な部品を取り付けます。

11.起工と船価の1/3の支払い
 ここまでは工場(隣接している場合も離れた所から船で運ぶ場合もある)で造り、船台に最初のブロックが搭載されるのが起工式で、その後次々にブロックが運ばれ、接合して船の形にしていきます。

12.進水(←今ココ)
 船台建造では船体をすべらせ、ドック建造では注水して、海水に浮かべます。

13.艤装工事
 造船所の艤装岸壁に係船して、内外装やエンジン関係、電気関係の諸設備を設置します。

14.海上試運転
 岸壁で最終検査をし、洋上で試運転します。様々な操船を試しますが、エンジンをフル回転して最大速力を出す「速力試験」の時が、船が生涯で最も速く走る瞬間になります。

15.引き渡しと船価の1/3の支払い



では、タネ明かしを始めます(笑)。

本船は先程「フェリーとしま2」と命名されました。

鹿児島港から十島村(としまむら)の有人7島各港に寄港して名瀬港(奄美大島)までの435kmを週2往復している、村営の「フェリーとしま」(2000年4月就航)の代替船です。

十島村には空港はありません。

旅客と混載できない物(ガソリンなど)は別の船で輸送されていますが、郵便も食料品も医薬品も雑貨も、全て本船が頼りです。

年に一度「検診便」として、レントゲン車を積み医師などが乗り、各島に相当時間停泊して、片道2泊3日かけて航行する日があり、その便には電力や水道などの技術者も一緒に乗り、各島でメンテナンス作業をしています。



本船が就航したらダイヤ改訂があるかもしれませんが、現行ダイヤをご紹介しておきます。

1日目(月・金)
 鹿児島23:00
2日目(火・土)
 口之島5:25
 中之島6:30
 諏訪之瀬島7:40
 平島8:35
 悪石島9:40
 小宝島11:15
 宝島12:00
 名瀬15:40
3日目(水・日)
 名瀬2:00
 宝島5:15
 小宝島5:55
 悪石島7:20
 平島8:30
 諏訪之瀬島9:25
 中之島10:40
 口之島11:40
 鹿児島18:50



これら有人7島と他の無人島を合わせて吐噶喇(とから)列島と呼び、十島村に属していますが、村役場は鹿児島市内に置かれています。

温泉が湧いている島が複数あります。

立派な旅館やホテルはありませんが、有人7島全てに民宿があります。

悪石島と小宝島の間の水深が一番深く、海水温の境になり、魚種や植生の境になり、ひいては方言や習俗など人の文化の境になっています。

大物狙いの釣り人には人気がある島々です。

繰り返しますが「村営フェリー」が片道435kmです!



十島村→http://www.tokara.jp/



地球の7割は海です。そして、日本は島国です。出掛けませんか、船旅へ。
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