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2017年10月03日19:01

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9月の。

9月に観たのは『ザ・デイ』『君の名は。』『アフターライフ』『DIG!』『ジンジャーの朝』の5本。

●『ザ・デイ』
何でだか文明崩壊した世界で、生き残るために人を食うコトを選択した人間たちと、彼らから逃げる人間たちの攻防の物語。主人公たち5人は荒野を彷徨った挙げ句に隠れ家となり得る『扉付きの家』を見つける。逃げるのに疲れた彼らは此処に住もうと考えるが……
構図だけ見れば凡百のゾンビモノもどきなんだけど、コレは『人間の正気の物語』だな。マンイーターたちも『コロニー5』の人食いたちみたく狂獣に墜ちたワケじゃない。ヒトの心をキチンと保ち、その上で『自身が生き延びる』ための選択を行い、しっかりと理性的に決断して人を喰う。親子の情もガッツリあって、子供に愛を語り成長を促すその口で他人を喰うのですよ。こっちのがずっと怖い。し哀しい。
仲間に話せぬ秘密を持ち、罪を悔い死ぬのを待ってたメアリは生き残る。『彼ら』に妻子を喰われ復讐を誓うアダムに助けられて。メアリにとってはシビアだしキツいラスト。生き残った『姉』はメアリと一緒に行くのかとちょとだけ思った。それもいいかなと。姉の心情を考えればあり得ないのだけど。
結構ずっしりとした見ごたえある映画。人間同士の命のやり取りの緊迫感を、極限状態に置かれた主人公たちの焦燥を、彩度の低いザラザラした画面が一層引き立てて。予想外に良作でしたよ。満足。

●『君の名は。』
ストーリー解説はいいよね超最近の超ヒット作だし。簡単に云いますれば田舎に住む女の子と東京に住む男の子が何でかちょくちょく入れ替わり続けてまぁ大変。以上。
『思春期の男女の入れ替わり』も『時空間の位相がずれた恋』もまぁありふれたっちゃありふれたモチーフではあるけれど、それを組み合わせたのが新しいっちゃ新しいのかな。楽しかったですしそれなりに引き込まれもしたな。テンポも良かった。アニメアニメした演出はちょとくどいと感じる部分もあったけど、長々した挿入歌とかわちゃわちゃした掛け合いとかね、でもまぁアニメだからね。正しいよね。
『かわたれどき→かたわれどき』と『口噛み酒は自分の半分』てプロットは「ああ」て思った。かたわれどき→片割れ時なのだね。自分の片割れと会う時間。コレが結びつく流れは綺麗だったな。夕暮れが『たそがれ』で明け方が『かはたれ』だった気がしたけどまぁいいや。元は区別なかったらしいし。
アトあの街にはクレーターが3つある。よね?作中で出来たモノと、湖と、御神体の場所も多分そう。だから元々『そう云う場所』なのかもね。彼処で定期的に起きる『神事』。あの彗星が来るたびに地球に接近し、欠片を落としてゆくのかも。あの場所に。意味は判らないけど。神様のするコトなんか。

●『アフターライフ』
恋人とケンカしてレストランを飛び出したアンナは交通事故に合い、気付くと葬儀屋の地下室。紳士的な葬儀屋さんが云う「私は死体と話せるんだ。君は死んだ」。「生きてる」と主張するアンナを「皆そう云う」と穏やかに諭し、葬儀屋は粛々と葬式の準備を進める。そんなん。
アンナの『死』が葬儀屋の偽装かも?てのは早々に気付くけど、映画そのモノは其処を曖昧にしたまま、硬質な夢のような空気感で容赦なくきりきりと、それで居てふわりと儚く進んでゆく。その雰囲気自体は嫌いではないし、話もそれなりに引き込まれはしたのだけどでも趣味ではないな。て云う感想。
何だろうね。登場人物みんな気持ち悪いのですよ。アンナは精神の高揚の激しい付き合いづらそうな人間だし、そのアンナを束縛する母親と云い、なよなよした恋人と云い、今ひとつ感情移入が出来ない。
結局、ヒトを救ってるつもりの狂ったシリアルキラーの葬儀屋が後継者を見つけてめでたしめでたしって話?あぁその葬儀屋。別に嘘はついてないのだよね。彼の解釈ではアンナは『死んでる』から。
アンナを演じるのはクリスティーナ・リッチ。このヒトもかなり特徴的な顔だよね。印象に残る。『バッファロー’66』『スリーピー・ホロウ』『モンスター』なんかはすげえ好きだったんだけどな。
全体的に「惜しいな」て云う映画。何処が?て訊かれるとまぁ、要である葬儀屋さんの行動原理が若干一貫性を欠いてたってのはあるかも知んない。ポールは彼基準でも死んでは居なかったと思うし。判んないけどね僕は彼じゃないし。まぁでも面白かったですよ。空気感もストーリィも好みではあったし。

●『DIG!』
90年代アメリカの2つのアングラバンド、ブライアン・ジョーンズタウン・マサカー以下BJM、そしてダンディ・ウォーホルズ以下DW。「革命を起こし世界を征服する」盟友である彼らの7年間を、演奏や日常そして様々な人の証言で綴るドキュメントフィルム。
BJMを率いる破綻型の天才アントン。そしてDWのリーダー、コントロール型の天才コートニー。センシティヴでメンバーの演奏にも完璧を求め、ライヴでは乱闘になるかキレて退場するかのどっちかのアントンは『愛すべきダメ人間』でして正直なトコロ大好物です。ソロの方がいいのかもねこのヒト。
そしてドラッグと馬鹿騒ぎと乱闘の果てにBJMはなるべくして空中分解し、DWは彼らと決別する。「奴は才能ある芸術の怪物。常に3年先に居て、追いついたと思ったときには更にその先に」「もう一緒にやる気はない。楽屋で顔を合わすのもイヤだ。アルバムは買うけど」て云うDW側のコトバ。
そう。2人とも天才だけどアントンは『真似の出来ない天才』なのだよね。別次元。そして多分だけどコートニーはそれを充分知ってる。そう考えるとね。自己破滅の縁でフラフラと叫ぶアントンを、したたかに業界に適応して行くコートニーのナレーションで描くこの映画はより一層の趣を増すのです。
彼ら以外ではBJMのメンバー、タンバリン担当のもみあげ兄ちゃんジョエル・ギオンがいい味を出してたな。明るく強く、一番普通に周囲に気を使えそうな人。だからこそ彼が「4年も無駄にした。タンバリンだけじゃなく意見を交わせるトコへ行く」てってバンドを、映画を去ってったのは寂しかったな。
希望に溢れてたバンドの最初の頃の映像に戻って、そして映画は終わる。コレもまた寂しい。

●『ジンジャーの朝』
1945年、広島に原爆が落ちて戦争が終わった年。友人同士の母親から同じ日に生まれた2人の少女ジンジャーとローザ。彼女たちもまた親友同士となり1962年。冷戦真っ只中、核戦争の恐怖が地球全体を薄く広く息苦しく覆う中で生きる2人の世界の変容と終焉。そんな話。
冒頭。彼女たちの誕生から成長。母親同士が繋ぐ手と、娘同士が繋ぐ手。父親を失うローザと幸せそうに父と遊ぶジンジャーの対比。までを台詞なしで描くシィンはシンプルで効果的で印象にとても残る。
核の恐怖に怯え、ただ生きるコトを望み反対集会に引き寄せられてゆくジンジャー。シッカリしてるようで儚げにフワフワと『永遠の愛』について語るローザ。共通する思春期特有の危うげなバランス。
ローザがジンジャーの父ローランドに接近したコトから親友との関係、そして尊敬する父との関係、ジンジャーの世界が崩れてゆく。幼い頃に母共々父親に捨てられたローザはローランドに『父』を求めたのかもね。ただ『愛』の概念が未分化だっただけなのかも。それだけだったのかもね。判らんけど。
父親と暮らすと云ってジンジャーが出てったアト、母はジンジャーを産んで止めた絵を再び描き始めて居る。コレも、まぁ母個人としてはいいコトなのかも知れないけど繊細なジンジャーを追い詰める。
そして訪れる崩壊と、再生への幽かな息吹。最後の「だから許すよ」に込められた覚悟。静謐の中、凜として映画は終わる。タイトル通りの『朝』を僅かに匂わすに留める終わり方はカナリ好き。
「少女のまま人生を楽しむんだ。焦って大人になるな」て云う穏やかなマークおじさん。全体的にピリピリと精細な空気の中、主人公から少し離れて優しく佇む彼がこの映画の癒やしになってるね。

●●●
月間賞は『ザ・デイ』に。僅差で『DIG!』そして『ジンジャーの朝』かな。
『DIG!』は同時受賞でも良かったのだけど、でもアレは映画の面白さって云うよかアントンとコートニーの魅力だろうなと思い、僅差としました。
あ『君の名は。』もかなり面白かったし『アフターライフ』だってつまらなくはなかった。幸せな月だったな。
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