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2017年09月29日19:45

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タタ・ナノは何故あまり売れなかったのか?

久しぶりの日記です。

インドでの長距離の移動中、同乗者のインド人と車内から外を見ていた。

「タタ・ナノをあまり見かけないな、未だ3人乗り、4人乗りのバイクが沢山走っている・・」

タタ・ナノ(TATA NANO)は、インドの大手自動車メーカー・タタ・モータースが開発し、2008年に発表、市販を開始した小型乗用車である。

当時のインドの最安値の車は「マルチ・スズキ800」で、20万ルピーだった。

このマルチ800が買えない層は3−4万ルピーのバイクを買い、曲芸まがいに一家4人が乗って移動していた。
これが日常茶飯事であった。

タタのラダン会長はここに目を付けた。

1.中下層の人はこんな危険なバイク乗りはしたくないと思っているはずだ。雨の日の移動も困難だ。車が欲しいに決まっている。  しかし道路はバイクであふれている。
2.これは最安値の車:マルチ800でも20万ルピーで、バイクの5倍以上の価格差があるからだ。
3.10万ルピーの車を作れば、バイク利用者の市場を取り込めるし、マルチ800の客層をも取り込める。
4.これはインドに限らず、東南アジアの国々にも言えることだ。
5.全く新しいコンセプトで1万ルピー・カーを作れば、マーケットは莫大なものとなろう!

これがタタ・ナノの戦略的位置付けだった。当時「アジア21世紀を席巻する超戦略CAR」いうことで鳴物入りで報道された。
タタ・ナノを見たインド最大のシェアを誇るマルチ・スズキの鈴木会長も「外見は立派だ」と感想を漏らした。

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「タタ・ナノは何故予想に反してあまり売れなかったのか?」

長時間の車中で同乗者インド人と話し合った。
大体の結論は以下の通り。

(1)10万ルピーという価格設定に製造上の無理があった。
(2)出火事故を起こしたりしたので安全上の不安を煽った。
(3)助手席のドワ・ミラーを無くしたり、ホィール止めのボルトナットが3本だったりで、完成車としてのイメージが完全で無かった。

(4)バイクの利点を見落としていた。
(5)細道が多く、駐車場もなく、道路が整備されていない街中では車よりバイクの方が圧倒的に便利。
(6)ランニングコストとしての燃費の問題。タタ・ナノの燃費は悪くはないがバイクとは比較にならない。

(7)タタ・ナノは2015年にフルモデルチェンジをして著しい改良を施したが、価格は20万ルピーに近くなりマルチ・スズキとあまり変わらない価格となった。
(8)それならば少し頑張って、実績のあるマルチ・スズキを買おうと思う人が増えた。

→インドでは日本技術の評価はすこぶる高い。例えば電気製品ではソニーの評価が高い。みんなソニーのテレビが欲しいのだが、高いので仕方なくサムスンやLGのテレビを買う、といった感じだ。

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そんな話をしている時、車が一台のバイクを追い抜いた。

バイクの後部席ではサリーを着てスカーフをまとった婦人がしっかりと、運転する男性に抱き付いていた。
婦人は嬉しそうな顔で、男性も満足げな顔だった。

「もう一つ理由を見つけたぞ!」

僕は言った。

「あのバイクに乗った時の爽快感は自動車では味わえない。僕は16歳で自動2輪の免許を取り女友達を後ろに乗せたが、その時、背中に感じた胸の圧力の心地よさは今でも忘れない」

同乗のインド人は「あははは・・・」と笑った。










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