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2017年09月16日09:43

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マスターができるまで 久々 1401

その夜、夕食の席で美保子叔母の退院が延期になった事を知らされたヒトミ達の衝撃はそうとう大きかったようでしばらく言葉を失っていた。
中でも、一番、気の弱いミドリは早々と泣き出し、母から
『泣かんでもええから。
延期いうたかて、一週間ほどのもんじゃ、、、
アッという間じゃが、そんなモン、、』
と慰められたりした。
さすがにリエは気丈で
『ええわ
それでも』
と言い、
『じぇけど、そのかわりに、わたし、毎日、お見舞いに行くわよ!』
と宣言した。
母が
『リエちゃん』
と言い、
『気持ちはわからんでもないけんど、、、
毎日は無理よ』
と言った。
しかしリエは母の言う事などに聞く耳を持たず
『ね
お姉ちゃまがた
そうしましょう
そうしましょう』
と音頭をとり、いつまでも、メソメソしているミドリに
『いつまでバカみたいに泣くの止めなさい!
泣いたって、決まった事は決まった事なんだから。
どうしようもないでしょ!
いいわね。
その中での最善の策をとりましょうよ』
と言い放った。
そして
『叔母ちゃま、』
と母を呼ぶや
『じゃから、延期になったぶん、毎日、私らぁを病院まで運んでね。
ええでしょ、そのくらいの事、できるでしょ』
と言った。
母は
『運ぶって
病院まで行くの?
毎日、、』
と困惑した態をみせ
『あなた、、どうしましょ、、』
と、父の方を見た。
父が
『リエよ、、
毎日は無理じゃ
病院までの送り迎えの時間もねいし。
そもそも叔母ちゃまはお前らの運転手じゃねいけんの、、』
と言うとリエは
『あら!』
と心外そうな声を出し
『じゃってお父ちゃまがおばちゃまにお願いしたら大抵の事はきいてくれるいうとったわよ』
と反論した。
母が
『あのね、、』
と言いかけた時、父がまぁまぁと手で制し、
『実がどがな事をいうたんか知らんが、叔母ちゃまはお前らの召使いじゃねんで。
ワシらの飯も作ってもらわんとおえんし、二階も手伝うてもらわんとおえん。
その合間合間じゃったら運んでやらん事もねいがの、、』
と言った。
リエが何か言いかけた矢先、こんどは母が
『飯作ったり二階の手伝いしたりって
それもどうですかいな、、
なら、しょせん、私は召使いですが
ご主人様がちと変わるだけで、、』
と膨れた。
父が
『アホ
もののたとえじゃがな』
と言い、
『私、それでも行く。
叔母ちゃまが無理ならタクシーを呼んでもらってでも行く』
とリエが言い張り
『お母ちゃま
お腹が張り裂けたって本当、、』
と怖々ヒトミが聞き、
『張り裂けた!
ヒー
怖い!』
とミドリが泣き叫び、台所はてんやわんわの大騒ぎとなった。
その時、玄関の方から誰かの声が聞こえて来た。
俺が
『誰か呼んどる!』
と言ったが
『張り裂ける!』
『怖い』
『そんなんウソよ
伯父ちゃまが脅しとんよ』
『あほ
ほんまのことじゃ、脅したりするか!』
『あなた
子供相手になんですか』
と台所は喧噪の坩堝だった。
しかたなく俺が
『誰!』
と言いつつ表に出てみると、そこには仕事も終わって帰宅したはずのナツコがたっていた。
俺が
『ナッちゃん!』
と言うとナツコは
『ヨシヒロちゃん』
と俺に縋るような仕草をし
『今、家に帰ったらな、、、
シゲがシゲが』
と言ったかと思うと、一気に、目から大粒の涙をこぼし始めた。

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