西安は永らく憧れの地であった。いよいよその地を踏むことになった。1995年ミラノ駐在を終えて、サンパウロへ赴くまでの6年間、私は大阪で主に中国に関係するビジネスに携わっていた。
その間に訪問した土地を列挙することで中国語の初心者を驚かすことができた。我 去过（私は行ったことがある）に続けて町の名前を言うのである。ハルピン、長春、瀋陽、大連、済南、上海、蘇州、南京、無錫、杭州、紹興、寧波、温州、福州、厦門、汕頭、深圳、広州、東莞、仏山、順徳、珠海、長沙、武漢、成都、西安、天水。太源、北京。お蔭で中国の都市名は今でもスラスラ言える。
ブラジルから帰って、東京勤務を経たのち、2009年に日本語教師になって、2011年に初めての教職のための就活をしたのは中国だった。その時分、最も訪ねてみたい街は西安だったのを覚えている。日本で言うなら京都か奈良。中国で首都を経験した街は、北京や洛陽、開封などもあるが、都市の持つ重み、響きからして長安＝西安というのは格別のものがある。あの国が一番輝いていた時の首都、従って日本人も最も憧れたのではないかと思われる。今で言うなら、ニューヨーク、パリ、ロンドン、ベルリンなのだと思う。
それはさておき、ＰＣで予約したホテルはなんと以前はＡＮＡが経営していたホテルだというのを後で知った。しかも到着してもう一度びっくりしたのは、それが城壁で囲まれた街の南門を見下ろす位置にあったのである。更に私は粘って、城壁側の部屋を希望し、鍵を開けて入ってみるとなんと城壁を眼下に見る角の部屋で部屋のどこからも南門が見える部屋だったのだ。深圳の弘法寺で、家族のこと、次の仕事のことと併せて一路平安をお願いしたのが通じたと思わずにいられなかった。
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