リトル沖縄の旅から帰ってきたら、
あっ!!!!
工事の音に予感がして、
屋上に駆け上がってみたら、
こうだった風景が、
こうなっていた。
クスノキ、
ついに切られちゃったんだぁ。
無性に寂しくなり、
思わず掌を合わせた。
工事の人たち、
ぼくよりも年上に違いない、
長い長い時を生きて来たクスノキに、
それなりの敬意を払ってくれただろうか・・・・。
とりあえず家族たちにラインで速報。
すぐにカッペ、チッぺ、サッペから返信があった。
みんな寂しがってる。
カッペは、
「あの丸太、貰えないかなぁ。
スズメちゃんのテーブルに使えそう」
あ!
そんなこと考えもしなかった。
長い間、家族を見守り続けてくれたクスノキが、
記憶だけを遺して無に帰してしまうのは哀しい。
でもぼくは人見知りの強い小心者で、
アクティブなタチじゃない。
しばらく迷ってたけど、
このまま瓦礫としてあの木が運び出されてしまったら、
きっと後悔すると思う。
何かに背中を押されるように、
気が付いたら身体が動いてた。
現場まで行って、
作業をしているお兄さんたちに声をかけた。
「すみません、
あの丸太をひとつ貰うわけにはいきませんか?」
「あぁ、いいですよ、どうぞ。でも、重たいですよ」
手頃そうなのをひとつ選んで持ってみた。
「うわぁ、重た〜!」
「でしょ。隅っこの方に取っておきましょか?」
「ありがとうございます。自転車取ってきます」
今まで隠れていた我が家がぽっかりと浮かび上がってるのを指さして、
「あのウチの者なんですよ」
「あぁ、そうですか。すっきりしたでしょ?」
「いえ、ちょっと寂しいです」
「なるほど、そうかぁ、それは残念でした」
とても感じのいいお兄さんたちで、
この人たちならただ切り倒すだけじゃなくて、
ちゃんと敬意を払ってくれただろうと思い、安心した。
自転車に乗って、取りに戻ったら、
お昼休みなのかお兄さんたちはいなかった。
苦労して自転車の荷台に乗せ、
フラフラと押して帰った。
それからテラスまで運び上げたんだけど、
何十キロあるんだろ。
久々に、「必死のパッチ」になった。
しばらく荒い息が収まらなかったほど。
それからぼくは、
泡盛博物館所蔵の甕を開け、
クスノキには及ばないが、四半世紀眠ってきた古酒を汲みだした。
古い木にはやっぱり古いお酒だ。
テラスに設置したクスノキの丸太に改めて合掌し、
泡盛を注ぎかけ、
ぼくも一杯お相伴して供養をした。
長い間ありがとう。
これからもよろしく。
ものすごく濃い木の香りが
テラス中に漂っていた。
よかったぁ!
よくできました、俺!
あの巨木とはお別れの日だったけど、
新たにウチのテラスで、
クスノキが息づいてくれた。
そのうち、
ジャックくん(仮名)やベティーちゃん(仮名)が、
この上で遊んでくれる日も来るだろう。
いつかこの家がなくなる日まで、
またずっとぼくたちを見守ってくださいね。
もうあなたは借景じゃなくて、
ウチの一員なんだから
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