『看聞日記』に面白い記事があった。
応永三十一年(一四二四)八月二十三日条
今日、御所の棟木の上にミツバチの巣があるのを見付けた。そこに、キバチが二〜三十匹飛来し、ミツバチの幼虫を食べようとしている。それで巣の周りを数千匹のミツバチが集まり、キバチと合戦を始めた。四時間余り噛み合い、死んだり傷ついた蜂が多数でた。
遂にミツバチは負けて、退散した。キバチはミツバチの巣を食い破り、幼虫を食べた。ミツバチは千〜二千匹も集まっただろうか。一方、キバチはわずか二〜三十匹だった。それでもキバチが勝ったのである。死んだり傷ついた蜂が御所内に散らばって落ちている。希に見る不思議な事だった。ただし、蜂同士が戦うのは通常のことらしい。
ミツバチは原文ではしし蜂(獅子蜂)。獅子蜂にはスズメバチとミツバチの意味があるが、ここではミツバチのことであろう。
キバチは原文では三日蜂(みかばち)。みかばち(木蜂)は 樹蜂(キバチ)の古名である。大形の蜂。
こういう記述があるのも『看聞日記』の面白さだ。
ログインしてコメントを確認・投稿する