ヨットレースの世界最高峰、アメリカズカップを観戦してきました
正確には「ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズ福岡大会」です。
注1
さて、いきなり福岡に行く前に、見ておかねば成らないものが愛知県の蒲郡にあります。
JR蒲郡駅のホームから海の方向を眺めると、ご覧の物体が目に入ります
駅を出て近付いてみましょう。
「蒲郡 AC-3」の文字が見えます。
これぞ、ニッポン・ヨットクラブによるアメリカズカップ用の最初の建造艇「ニッポンチャレンジ JPN-3」でした
艇首に「日本」の文字も見えますね。
さらに海に向かうと、 「JPN-6」が見えてきました。
手前の工事中の部分に、実はかつては「JPN-3」が置かれていたのでした。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=312481230&owner_id=1602714&org_id=311789211
JPN-6をグルリと観察します
艇体の下に黒い重りがぶら下ってる(ストラットとバルブ)事以外は、基本的な考え方は普通の船と変わりません。
使われてる材料や造型方法が、当時最先端のハイテクでした。
よくよく見ると、水線下は完全に滑らかではありません。
丸い凹みは何かの弁でしょうか?
付近にはニッポンチャレンジ用とだけ分かる、各種異物や、何かが置かれてた痕跡が転がってます。
鯨の胸鰭状の物はラダー(舵)ですね。
無造作に転がるマストやスプレッダー、ブーム類。
木材ではなく、当時最新のCFRP製です。
金属はチタン合金など国の威信をかけて用意された材料なので、今でも全く腐食無く新品のようです。
ワイヤーやターミナル類もまるで今すぐ使えるようなコンディションです。
保存法は最悪ですが、材料が凄過ぎるのです。
艇体とバルブ(重り)を繋ぐストラット。
ストラット自体は、帆走を円滑に行う流体力学的付加物としての機能も担ってます。
一方のバルブは、帆に風圧がかかった時に艇が転覆しない為の重りで、これ自体が推進の役に立っている訳では無いデッドウエイトであり抵抗源でもありました。
ストラットとバルブを廃止して、風の力を全て艇を進める為に使えるようにするのがヨット設計の夢であった訳です。
土台の木材は鉄道用の枕木ですね。
四角い穴はストラットの取り付け穴です。
抵抗を考えるとバルブはならべく比重が大きい(体積が小さい)方が有利なので、コバルトかタングステンの粉末を混ぜて鋳造(合金ではない)されてると思われます。目で見て大雑把に感じる部分ですが、驚きの技術です。
ついでに周辺も見ましょう。
海賓館マリンセンターハウス(旧鈴木診療所)
http://www.gamagori.jp/souvenir/detail_85_1_16_0_0.html
中には、ニッポンチャレンジ関係の備品が展示(というより放置)されてます。
これはウインチを起動させるペデスタル。
おそらく軽合金製。
水槽模型船は「JPN-30」。
写真右列真ん中がSRCの旧目白水槽。
注2
竹島水族館
この日は入場待ちの行列が出来る程の繁盛ぶりでした。
手前のサークルには、かつて世界一周コンクーリートヨット「ERIKA」号が展示されてましたが、老朽化の為解体されました。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=313461295&owner_id=1602714&org_id=314246859
現在国内ヨットレースのエリカカップは、このERIKA号の業績に因んだものです。
http://erika.toscrace.jp
右下は旅館「常磐館」のレプリカ「海辺の文学記念館」
http://spn.gamagori.jp/look/detail_61_1_13_0_0.html
上は旧蒲郡ホテル。
http://www.classic-hotel.jp
文学記念館内部には、旧蒲郡駅跨線橋階段支柱が保存されてます。柱の前に設置されてるスタンプラリーの台をどけてもらい、撮影させて頂けました。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=314246859&owner_id=1602714&org_id=313461295
他にも、透かし彫りやシャンデリアなど、旧蒲郡ホテルの調度品が流用、展示されてます。
旧蒲郡ホテル。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=325452310&owner_id=1602714&org_id=324223254
竹島に渡ります。
橋から右を見ると、お食事中の方々が。
島から振り返るとこんな景観。
竹島の「八百富神社」。
チェリオの自動販売機は健在でした。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=326450464&owner_id=1602714&org_id=325452310
蒲郡は地方都市にありがちな、駅前再開発でどこにでも有る大規模量販店が一等地を確保、地元で商売してる人間は駅前から追い出されるって構図ですね。
そして再開発地域に隣接してる土地は突然時代が半世紀逆戻りって極端な地域性も典型な感じです。
蒲郡は実は製綱メーカーのメッカでもあるのです。
こちらは廃業された工場跡でしょうか。
味わい深過ぎるアパート
上から下がったフックは何でしょうね?
駅北側の豪邸。個人宅です。
ランチは駅前の鰻「一松」。
鰻の白焼きと、蒲郡名物生シャコ
シャコ刺身は甘みがあって意外な美味しさ
他にお客も居なかったので、料理が出来るまで女将と喋ります。
「駅前のニッポンチャレンジは、マスト付きで維持費が強烈そうですねぇ」と言ったら、目がキランと光ってニッポンチャレンジ関係者から他のヨット、地元や役所の裏話まで色々話して下さいました。
ERIKA号の名前の元のエリカさんは現在英国でケーキ会社を経営してるそうで、数年前に久しぶりにお店に来たそうです。
以前に来た時に食事した鰻屋「素鳥」は再開発で店は移転、しかし一年しないうちにご主人が健康を損ない廃業してしまったそうです。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=323277596&owner_id=1602714&org_id=324223254
その一松の女将は七十代。
元々実家は蒲田で商売をしていたものの、空襲で焼け出され池上まで命からがら避難。
後に蒲郡に移転したのだそうです。
http://www.gamagori.jp/gourmet/detail_27_1_14_0_0.html
という感じで蒲郡を後にします。
注3
という訳で、いよいよ福岡(博多)へと乗り込みます
駅前の穴は丁度塞がれた直後。
普通に舗装直後の道路にしか見えません。
この後の沈下も計算数値以内で収まっており、凄いと感じます。
練習日は観戦区域には入れず、福岡タワーを目指します。
http://lvacws-fukuoka.jp/team.html
例によって最寄の駅から目的地に向かうのに、表通りから路地に入って向かいますが、大失敗でした。
目的地に接近した所で、延々と続く塀に阻まれ海の方向に抜けられません。
津波対策にしては高さも強度も足りない妙な感じです。
どうやら、福岡ドームでイベントがあった時、騒ぎを起こす連中が住宅街に入って来れない様にするのが目的のようでした。まさに万里の長城と同じ用途ですね。
タワーの展望台に上がると、既に多くのヨットファンが。
皆が会場に一番近い角に寄ってるので、同じ視界を持つ別の場所に陣取ります。
各国艇はレース海域に集合、ブイなどが配置の為に移動中です。
遠方には斉藤海運のホンダ専用自動車運搬船「あさか」が。
海域を外と隔てるインターナショナルオレンジの幟を掲げた警戒船。
ケッチと呼ばれる帆走形式です。
注4
警戒船が配置された内側の海域にはレース関係者の船しか入れません。
海上観戦も主催者から設定されており、登録された船は指示された位置に陣取る事に成ります。
ブイが配置されるまで、各艇が自由に練習を始めました。
シリーズ戦用の艇は「AC45F」という名称で、設計の幅は狭く、ほぼワンメイクといってよい仕様です。
45は、長さが45ftという意味。
左、スエーデン代表「アルテミス・レーシング」(以下、瑞艇)。
右、ニュージーランド代表「エミレーツ・チーム・ニュージーランド」(以下、NZ艇)。
日本代表「ソフトバンク・チームジャパン」(以下、日艇)。
その右は随伴するランナバウト。
紅い双胴艇はカメラ船。
英国代表「ランドローバーBAR」。
一番前の帆である「コードゼロ」はジブステイにクルクルと撒かれてしまわれてて、従来の帆船のジブとはコンセプトが異なります。
二番目の帆であるステイスルーはフォアステイごと下げられて艇体間に張られたトランポリン(ネット)に置く作業中です。
マストの帆はキャンバスのような物ではなく、骨組みにスキンが貼られたハードウイングという物で、その名の通り帆船の帆よりも、航空機のスロッテッドフラップ付き翼に近いものです。
艇体の形も普通の船舶とはかなり違います。
先端が刀のようで、普通の船とは逆に上に向かって窄まってます。
ウエーブピアサーという船形で、波浪に突っ込んでもそのまま突き進んで抵抗に成らない形です。
左、フランス代表「グルパマ・チームフランス」。
風はほぼ画面上方向から吹いており、日艇とすれ違います。
思い思いに馴熟航走をする各国艇。
TV中継ヘリは、中日本航空のアエロスパシアルAS350。
以前は名古屋TVの機体だった筈。
二本マストの動力高級ヨットは観戦船の中で一番目立ってました。
平仮名で「あさひ」と船名表記が。
船籍はジョージタウン。
旗も英国商船旗の真ん中にエンブレムを追加したマレーシアの商船旗でした。
どこの大富豪の所有でしょうか。
左上は巡視船「らいざん」。
コードゼロを展開する英艇。
左は合衆国代表「オラクルチームUSA」(以下、米艇)。
観戦船、左はレストランシップ「マリエラ」、中は三檣スクーナー「みらいへ」。
右の巡視艇は「こちかぜ」。
海上保安庁からは三隻警備に出てましたが、もう一隻、とから型っぽいのの船名は分かりませんでした。
対州海運のフェリー「たいしゅう」。
海面からの反射の具合で、この日は殆ど風が無いのが分かります。
普通のヨットなら動く事も出来ない微風です。
なので、スキッパー(艇長)は海域の風のありかを見極める事が、艇を操縦する以上に重要な役目となります。
艇体の前方に甲板が無く、丸く成ってるのはタートルバックといって、船首が波を突っ切っても、海水が速やかに下に落ちる為の形状です。
日艇の船尾に居る紅いドライスーツの人は、体験レポーターの元バトミントン選手の潮田玲子氏。
模擬レース開始。
各艇、ルイヴィトンのカラーのスタートブイへと向かいます。
危ない危ない、でもプロですから大丈夫。
続いて第1マークへと向かいます。
第1マークをクリアする各艇。
手前は結婚式場「マリゾン」。
この日は写真右方向の観戦会場である地行浜には入れないので、タワー下の、ももち浜から観戦してました。
レースのコース設定はこんな感じです。
風上ゲートと風下ゲートの距離が1マイル(海里では無い)である他は、風向きや海象条件によって各ブイやゲートの配置、さらにそれらをどう巡るかが変わります。
練習日の設定。
スタートライン、赤矢印。
第1マーク、青矢印。
風上ゲート、黄色矢印。
風下ゲート、紫矢印。
ゴールライン、緑矢印。
BMWマークの風上ゲートを回って、風下ゲートに向かう各艇。
赤い風下ゲートを回って・・・
日艇を先頭にゴールラインへ。
この日は風が弱過ぎ、スタート→第1マーク→風上ゲート→風下ゲート→ゴールラインってコースに成りました。
再びスタートラインへ。
第1マークを周ります。
瑞艇が皆と違うコースを選択しました。
しかし上から海面を見ると、多くの艇が向かった方が風が有りそうです。
帆船は風上に一直線には進めない為、ジグザグに方向を変えながら風上に向かいます。
この間、様々な駆け引きも行われます。
艇速が向上したのと(理想条件で40ノット超え。普通のモーターボートでは追い付けない)、帆の形式の性質上、クラッシックなレースのように「敵の風を奪う」戦術は無くなりましたが、これは競技としてつまらなく成ったという意味ではありません。
各艇、風上ゲートへ。
英、NZ艇が他と違うコースへ。
ところで、ヨットの方向転換ですが、木造帆船の知識で入った人間には風上に向きを変えるタッキング(上手まわし)は馴染みなものの、ウエアリング(下手まわし)をせずイキナリ風下に方向を変えるジャイブという航法には戸惑います。
英艇は右舷のダガーボードを降ろしてるようですね。
このレースは各艇の判断が大きく分かれたようですが、それでも競ってるのが凄いです。
風下ゲートを周ってゴールへ。
ダガーボードが半下がりの英艇。
再びスタート。
逸早く風上ゲートを周って風下へ向かう英艇。
私的には、今回のアメリカズカップは英国チームが本命だとみてるのです。
JR九州のジェットフォイル「ビートル」。
雨が降ってきました。
そしてまたスタート。
風上ゲートのパイロン(ブイ)を回る瑞・仏艇は接近警報の緑ランプが点灯しています
雨が激しく成ってきました。
練習が終わり、各艇が引き上げます。
ゲートのパイロンもギグに曳航されて引き上げです。
タワーから南方向を。
タワーの風速計では、北の風、風速2m/sです。
そりゃそうだよね
引き上げ船団の向かっている先に、宿営地の福岡市立小戸ヨットハーバーがあります。
福岡大会の観戦エリア、地行浜。
画面右外側に福岡ドームがありイベントも開催されるので、翌日からのこの区域は大変な混雑に成ると予想されます。
夕飯はドシャ降りの中、やはりアメリカズカップ観戦に来ていたGingaさんと私のお気に入り屋台「DON」で。
DON名物「ドライカレー」
おでん。
出汁が素晴らしい
無国籍感満点の屋台で大好きなのです。。
そういや一旦宿にチェックインした際、博多織のお土産屋に寄ったら女将に「いつもコースター買ってくださる方ですよね?」と。
ここでも顔覚えられてしまいました。
本戦編につづく。
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