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2016年11月25日00:24

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佐久間ダムから大嵐駅の廃道を歩く

最近はネパールや日本百名山で忙しかった。
とても充実していたのだけど、なんだか物足りない。
どちらも、たくさんの人が通る決められたルートを歩いているだけだからなあ。

ひさしぶりに探検的、冒険的なところに行ってみたい。

ということで、今回選んだのは静岡県の県道288号「大嵐佐久間線」だ。
静岡と愛知の県境で天竜川左岸沿いの道だ。
崩壊が激しく、すでに廃道になっている。
総延長距離は20キロほど。
ここの走破記録は10年近く前のものがネットにあるだけだ。

どうなっているのだろう。
歩いてみることにした。


11月23日(水)

前日は天竜の道の駅で車中泊した。
ちょっと二日酔いのまま車で移動する。

7時すぎ、飯田線中部天竜駅近くの駐車場に着いた。
駅の待合室で朝食。

8時ごろ出発する。

山登りと違って廃道歩きというのは、どうも油断してしまう。
でも場合によっては沢を渡渉したり、崖を登ったり、けっこう危険なのだ。

民家の並ぶ中部天竜の集落を抜け、舗装道路を歩いて佐久間ダムに着いた。
このダムは1956年に完成した。
当時としては日本一の規模だった。
天皇夫婦も来て短歌を詠んだ。
「佐久間ダムすげーな!」という意味の歌が記念として石碑に刻まれている。
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その石碑のある公園のようなところを奥に行く。
すぐに「全面通行禁止」の柵がある。
乗り越えて先へ行く。
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しばらくは舗装道路だ。
道幅は2.2メートル。
軽自動車しか走れない。
でも落ち葉の上にワダチがある。
ダムを管理する電源開発の車が通るのだろう。
山側の脆そうなところには金網が被せてある。
これも最近補修したようだ。
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30分ほど歩くと地道になった。
自動車のタイヤのあとはまだ続いている。
このまま最後まで行くのかな。

歩きだして1時間ほど。
だから5キロほど進んだところで、道を塞ぐ障害物が出てきた。
これはもう、車が来ていないゾーンに入ったのだ。
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倒木や土砂崩れを乗り越えていく。

途中で廃屋があった。
中を覗いてみた。
懐かしい感じの生活道具が古く朽ち果てていた。
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やがて通行禁止の標識。
もうとっくに自動車など走れる道じゃないけど。
たぶんここまでは、電源開発がたまに補修管理しているのだろう。
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鹿の白骨死体があった。
きれいに骨が散らばっている。
死んだときの身体の位置が推定できるほどだ。
これだけ完全に骨が残っているということは、何ヶ月も人が通っていないのだろう。
頭骨と背骨の一部を袋に入れて持ち帰ることにした。
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さらに倒木、土砂崩れが続く。
だんだんひどい状態になってきた。
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完全に道路がなくなって岩の斜面になっているところがあった。
樹木が生い茂り自然に戻りつつある。
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なんとか乗り越えて、さらに先へ。

大嵐側の通行禁止の標識までやってきた。
ここからは歩きやすくなるだろう。
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と思ったら、まるでそんなことはない。
逆に派手に崩壊している。
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ときどき橋が出てくるけど、よく落ちないものだ。

また廃屋があった。
この道も30年ぐらい前は生活道路として使われていた。
普通に自動車が走っていたそうだ。
こんな状態からは信じられない。
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あと2キロほどで終点だというところ。
とんでもない崩壊箇所があった。
岩の崖になっている。
沢登りなどだったら躊躇なくロープを出すところだ。
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でも油断して登攀具など持ってきていない。
自分の技術と幸運を信じて、なんとか渡りきった。
もしも滑り落ちていたら死んでただろうなあ。

核心部を抜けても崩壊箇所が続く。
一つひとつは3メートルとか5メートルとかのガレ場を登って降りるだけだ。
でもそれがいくつも続くと、かなりの高さを登り降りしたことになる。
さすがに疲れてくる。
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橋が崩落していた。
沢に降りて渡渉する。
渡り終えてポケットを探ると地図がない。
沢を渡る前に落としてしまったのだ。
また渡渉し直して探して拾う。
これでまた疲れてしまった。
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時間は13時30分。
夏焼の集落が見えた。
あそこまで行けばお終いなのだ。
道もアスファルト舗装になってきた。
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13時40分、通行禁止部分を踏破した。
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ついでに夏焼集落を見学することにした。
自動車で行けない狭い道を歩く。
突き当りに階段がある。
50メートルほど登る。
10軒ほどの建物がある。
斜面にへばりつくように建っている。
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もうここには定住している人はいないそうだ。
でも畑には作物が植わってあり、いちばん奥の家からは話し声が聞こえてくる。
通いで自宅を管理している人がいるのだろう。

集落の上に神社がある。
石仏や祠が安置してある。
その奥に登山道があった。
せっかくだから登ってみる。
100メートルほど上がった。
どうも林業の作業用の道のようだ。
最後まで行っても何もなさそうなので引き返す。
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走って下りて県道の終点まで戻る。
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終点には何台かの車が駐車してあった。
測量の人たちと、夏焼集落の人のもののようだ。

駐車場所の横に夏焼トンネルの入口がある。
1キロちょっとの長いトンネルだ。
ヘッドランプをつけて歩いていった。
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トンネルを抜けると、すぐに飯田線・大嵐駅だった。
時間は3時、次の列車まで1時間以上ある。
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きれいな待合室で、持ってきたパンを食べた。

この駅の住所は静岡県浜松市天竜区だ。
でも50メートルも歩くと、天竜川を渡って愛知県豊根村だ。
夏焼集落が無人になってから、最寄りの静岡県の人家まで山を越えて10キロはある。
だからこの駅を使うのは、ほとんどが愛知県民だ。
待合室も愛知県のお金で建てた。
看板には「ようこそ豊根村へ」と書いてあり、観光パンフレットも愛知のものばかり。

ようするに静岡の領地でありながら、北方四島や竹島のように愛知が実効支配している。
愛知県民としては嬉しいことだ。

16時6分の普通列車が来た。
中部天竜の駅に戻る。

帰りは浜松まで出て「天然温泉・風と月」で入浴。
休憩室で昼寝していたら帰宅が深夜になってしまった。

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