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2016年06月06日23:17

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真空妙有−なぜ「日本会議」は今になって改憲にリーチをかけるほどの力を手に入れたのか?

菅野氏は大した仕事をしたと思う。
しかし、インタビューを読んで
どうも腑に落ちない点がある。

弱小の組織
空疎な思想
背景の弱さ
高齢化するメンバー
十年一日のごときかわり映えのない主張

……これだけ見たら、
日本会議なる組織が
発展できる余地は
全く見当たらない。

それがなぜ、
安倍自公政権を誕生させ、
敗戦以来の保守派の主張であり悲願であった
憲法改正にリーチをかけるに至ったのか?

「生長の家」にルーツを持つ弱小右翼学生運動組織の
「日本青年協議会」から発展した「日本会議」と、
自民党の弱小派閥「清和会」が
手を結んだというのだが……。

素朴な疑問ながら、
弱小組織と弱小派閥が手を結んだくらいで、
どうしていきなり
今まで長期与党の座をほぼ独占してきた
自民党がやろうとしてできなかった憲法改正に
リーチをかけるほど強大な力を
獲得できたのだろうか?

どうにも腑に落ちない話である。

実は、
「日本会議」的保守が
近年になって急激に勢力を拡大するに至った秘密を解き明かす
「ミッシング・リング」が存在する。

少なくとも、おれはそう睨んでいる。

菅野氏は、
「日本会議的保守」のネタ元が
『正論』 『WiLL』 『諸君!』といった、
いわゆる「保守論壇誌」であると指摘する。

その「保守論壇誌」、
否、産経や読売新聞といった大新聞も含めた保守論壇全体が、
折からの活字離れによる新聞・書籍の売り上げ低迷と
『新ゴーマニズム宣言』と『嫌韓流』のヒットを見て、
嫌韓ネタと韓流叩きに走った。

「ネトウヨ」という呼称が定着する以前の2ちゃんねるでは
「コヴァ」つまり小林よしのりの『新ゴー宣』を読んで
にわかに保守主義にカブレた連中、というくらいの意味の
蔑称で呼ばれていたニワカ保守の取り込みを図った。

逆にオタク保守の側も、
ある時から突然既存の大手メディアに注目され、
社会が自分たちの主張に同調する雰囲気になったのに鼓舞されて、
ニコニコ動画に専用メディアの「チャンネル桜」を開設し、
「在特会」を結成したりして、
「行動する保守」を自称して街頭に繰り出し、
朝鮮学校への妨害やヘイトスピーチを繰り広げた。

総選挙で敗れて野党に落ちた自民党の側でも、
「ローゼン閣下」のあだ名を取ってオタクに人気のあった
麻生太郎あたりが中心になって
保守オタク人気を自民党支持にまんまと結びつけた。

そうして、保守論壇が
中国・韓国叩きと当時の民主党に対する批判を結びつけて
民主党政権の瓦解と自公の政権奪取を狙った。

その策は見事に図に当たり、
第二次安倍政権の誕生と相成ったわけである。

ところがそうしているうちに、
「朱に交われば赤くなる」
「木乃伊取りが木乃伊になる」じゃないけれど、
保守メディア、保守業界、保守界隈そのものがネトウヨ化した。

すでに宿敵であった左翼、革新勢力が無力化して
そのカウンターとしての存在意義を失い、
「保守が保守として保守すべき、
守るべき伝統とは何か」という自らへの問いかけもなくなって
思想的に真空になっていた「保守」は、

ネトウヨ的エートス(?)と、
小泉純一郎以来の自民党の体質である
ネオコン的新自由主義イデオロギーを
まともに吸い込んでしまった。

そうして、
少なくとも20世紀の保守派、
たとえば一昔前の西部邁あたりなら
口を極めて批判していたはずの
「ヴァルガリズム」(俗悪主義)や、
「ヴァンダリズム」(破壊主義)そして、
「ポピュリズム」(衆愚政治)そのものを体現する存在に
なりさがってしまったのである。

田母神俊雄のような怪しげな男を
保守界隈総出でプッシュしたというのは
その表れである。
運動のモチベーションは突き詰めると「反左翼」「反戦後民主主義」に過ぎません。単に「壮大なる反対運動」に過ぎない。だから中身が空っぽなんです。
菅野氏のこのことばは
日本会議的保守の本質をついている。

逆に言えば、
そういう「中身が空っぽ」の真空状態だからこそ、
掃除機のようにネトウヨもネオコンも吸い込めて、
巨大なエネルギーを獲得できたともいえる。

ただし、日本会議的保守には
「壮大なる反対運動」という本質しかないから、
結局のところ、
反韓・反中・反朝つまり「反特亜」という形で
外に敵を作って内の結束を固め、
異分子は排除・抹殺するという形での
国づくりしかできない。

もう少し具体的に言えば、
彼らの理想通りの国づくりを進めたら、
彼ら自身がいかなる美辞麗句を並べようとも、
日本は
「シンガポールのように経済活動する北朝鮮」
のような国にしかなりようがないということである。

そこがすこぶる恐ろしいところである。

―――――――

「日本会議は中身空っぽ」
異色の著述家・菅野完氏が解明


(2016年6月6日バックナンバー/日刊ゲンダイ)

 安倍首相を筆頭に多数の閣僚が関連議連に名を連ねる保守系市民団体「日本会議」。この組織を徹底解明した新書「日本会議の研究」(扶桑社)が飛ぶように売れている。4月末の発売前から重版が決定。今は入手困難の状態が続く“騒ぎ”になっている。しかも、著者は学者でもジャーナリストでもない一介の元サラリーマンだった著述家の菅野完氏だ。

■日本会議は本来の右翼でも保守でもない

――1年ほど前まで会社勤めしながら、扶桑社のウェブサイトで連載したものを書籍化したそうですね。なぜ日本会議に関心を持ったのですか?

 いわゆる「ネトウヨ」と呼ばれる人たちが現れ、さらには7、8年前くらいから、「朝鮮人を殺せ」と叫ぶヘイトスピーチが各地で繰り広げられるようになりました。変な人たちだと思って調べていくと、彼らのネタ元がいわゆる「保守論壇誌」であることに気づき、そこから日本会議に行き当たった。私は自分のことを思想的に“かなり右寄り”だと思っていますが、彼らの言説はあまりに幼稚だし、レベルが低いと言わざるをえない。

  −1−

――どの辺が幼稚だと。

 彼らは平気で資料を無視する。事実より「物語」を重要視する。「国家の誇り」が事実より大事だという。右翼の本来の役割は「国を国家から守る」ことだと思うのです。国とは“邦”であり“故郷”でもある。また、保守という視点で言えば「国家の暴走に掣肘を加える」ことも重要です。しかし、日本会議周辺の人々の意識には、“国家”しかない。その意味では彼らのよって立つところは、本来の右翼でも保守でも何でもない。

 しかも、「憲法改正」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」など判で押したように同じような主張が目立つ。この異様ともいえるバラツキのなさは何なのかと、彼らの言動を観察しつつ、主張の“出典”を探したら、ほぼ例外なく「正論」「WiLL」「諸君!」などの保守論壇誌でした。寄稿している“識者”の多くが日本会議周辺の人たちでした。

  −2−

――保守論壇誌を読み込むうちに違和感を覚えたそうですね。

 相撲解説者の舞の海秀平氏がなぜ憲法を語るのか。教育学者の高橋史朗・明星大教授がなぜGHQの占領政策の過去について論じているのか。門外漢の人たちがもっともらしく戦後の歴史や憲法を語る。これが日本会議の特徴です。

■会員は団塊の愛国オジサンと愛国オバサン

――日本会議の関連議連には与野党の国会議員280〜300人が所属していると報じられています。

 日本会議本体の役員名簿には元最高裁長官、東大名誉教授、神社本庁統理など法曹界・学界の要職経験者が名を連ねています。多数の宗教団体も参画しているため、とてつもなく巨大な組織に見えますが、中身は空っぽです。

――具体的にはどんな点が。

  −3−

 日本会議が唱えている「改憲」「靖国参拝」「愛国教育」などは、非近代的で、思想的にも政治的にも目新しさがまったくありません。組織の中核を担っているのは70年安保の学生運動のときに左翼学生と戦った「右翼学生運動」のメンバーたちで、運動のモチベーションは突き詰めると「反左翼」「反戦後民主主義」に過ぎません。単に「壮大なる反対運動」に過ぎない。だから中身が空っぽなんです。

――ものすごい巨大組織というイメージがあります。どんな人たちが参加しているのですか?

 日本会議には約3万8000人の会員がいますが、その多くは「日教組の教師は追い出せ」と叫んでいるような団塊世代の愛国オジサンや愛国オバサンです。圧力団体としての日本会議は、労働組合や業界団体などのかつての圧力団体と比べて規模は小さく、財界に強力スポンサーがいるわけでもない。この1年で徹底的に資料を集めて調べましたが、日本会議の小ささ、弱さが目についたのが正直な感想です。

  −4−

政治家には信条より確実な「票」が魅力

――そんな組織が明らかに政権に影響を与え、実際に安倍首相は改憲に向かって突き進もうとしています。どうしてそんなことが可能なのでしょう?

 事務局のマネジメント能力の高さが力の源泉なのだと思います。日本会議はこれまでに大規模な集会を何度も日本武道館で開催してきました。例えば去年11月に開催された「今こそ憲法改正を!1万人大会」などは事前に「1万人を集める」と公言し、言葉通りに参加者を動員し、きっちり1万人を集めています。単一の宗教団体のイベントで1万人という数は驚くに値しませんが、日本会議の事務局は霊友会、崇教真光、遺族会など異なる各種教団・団体から複雑な利害関係を調整して正確に参加者を動員する。政治家は改憲うんぬんといった日本会議の思想信条以前に、彼らの緻密な計数管理能力に魅力を感じているのでしょう。

――数は少なくとも選挙の「票」が読めるということですね。しかし、同様な“集票マシン”では、農協など多くの団体で高齢化による弱体化が指摘されます。何が違うのでしょう?

  −5−

 日本会議も高齢化しています。しかし利権維持や経済的な理由で団結する農協や医師会などと比べ、思想的な理由だけで団結しているので、不況などの世の中の動向に左右されないのが大きな強みなのでしょう。

――しかも、市民運動の手法を取り入れている。

 事務局を取り仕切るのは新興宗教「生長の家」にルーツを持つ民族派学生運動が発展してできた組織です。70年代に入り左翼学生運動が停滞し始めると、民族派学生たちはリベラル陣営の運動手法を模倣しながら取り入れました。署名活動や講演会活動といった「草の根」の運動をコツコツと地道に続けた努力が、2000年代になって結実したといえます。

――生長の家の学生運動といえば、去年の安保法制審議で「集団的自衛権は合憲」と主張した憲法学者の百地章・日大教授や、安倍首相の“右翼思想の師匠”と呼ばれる衛藤晟一・首相補佐官も出身者だと指摘されていますね。

  −6−

 百地、衛藤の2氏および、明星大の高橋史朗教授などは、日本会議事務総長である椛島有三氏が率いる「日本青年協議会」という生長の家学生運動にルーツを持つ右翼団体の幹部です。メディアは彼らを安倍首相のブレーンとして紹介することがありますが、来歴にまで踏み込んでおきながら、なぜか「生長の家学生運動」には言及しない。

■弱小派閥と弱小学生運動組織が結束

――安倍首相と日本会議がシンクロするのは、幼稚な思考回路が同じだからでしょうか?

 思想信条というよりも、双方の置かれた特殊な事情が結びつきを強めているのだと思います。安倍首相の出身派閥である清和会は、自民党主流派だった木曜クラブや宏池会などと比べ、利権も票田も少なく、生き残るために宗教組織と結びつくしかなかった。その弱小派閥に、弱小学生運動組織が結びついたのが、今の安倍政権とも言えます。

  −7−

――弱い立場の者同士がくっついた感じですね。

 はい。しかも安倍首相は閣僚経験がほとんどないまま異例の出世を遂げました。党内基盤が脆弱だった首相にとっては、規模が小さくても堅固な日本会議は頼れる組織だったのでしょう。そしてこの「弱者連合」は、今、ついに「改憲」という結実を迎えようとしています。

――ところで、大手メディアでさえほとんど触れようとしてこなかった組織に正面から斬り込んだことで、嫌がらせなどはありませんでしたか?

 出版元の扶桑社には「日本会議事務総長・椛島有三」名義で、出版の差し止めを求める申し入れ書が届きました。個人的にもウェブ連載中は何度か嫌な思いはありましたが、出版後はピタッとやみました。

▽すがの・たもつ 1974年、奈良県生まれ。一般企業のサラリーマンとして勤務するかたわら執筆活動を開始。退職後の2015年から主に政治分野の記事を雑誌やオンラインメディアに提供する活動を本格化させる。扶桑社ウェブ系メディア「ハーバー・ビジネス・オンライン」の連載「草の根保守の蠢動」が大反響を呼び、今回書籍化された。

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http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/1
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/2
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/3
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/4
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/5
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/6
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/7
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670/8
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