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2016年05月27日09:33

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マスターができるまで ナツコの恋 43

しばらくしてナツコは俺の方を振り向いて
『ヨシヒロちゃんがおえんのんよ。
つまらん事ばぁいうから。』
となじり
『せっかくシノハラ先生から戴いた湯のみじゃから大切に使おうと思うたんよ。
これが最後の一個じゃって、あんとき、おっしゃっとってじゃったでしょう。
そがな大切なものを、家にでも置いといて、シゲイチの暴れモンにでも割られてしもうてごらん。
目もあてられんでしょう。
へじゃけん、ここでの休憩用の時んでも使おう思うて、こうやって大切にハンカチにつつんで持って来たんよ。
それを、、、
もっとで,割ってしまうとこじゃったが。
こがな事じゃったら、最初から、家に置いといた方がまだなんぼかよかったわぁ』
と言った。
俺は
『そりゃすまんこって』
と大げさにお辞儀をした。
ナツコはもう一度、確認すると
『まぁええわ。
割れとるようじゃぁねえけん』
と言い、
『そがん事より早よ、下におりなさい、
先生が歯科医師会から戻って来られんうちに、
見つかったら叱られるよ。
私も、早よ、ここの掃除をせんと』
と言った。
そういうと、ナツコは、湯のみを丁寧に机の真ん中に置き、いっさい俺なんか相手にせず、真剣に、診療所の掃除を開始した。
俺はそんなナツコの後を執拗についてまわり
『ほじぇけんど、ほじゃけんど』
と言い、
『ヤマナカ君、怪しいと思わんか?
あんだけ、時給のええ、バイト、なんで辞めんとおえん?
せぃにテングの文句じゃってそうじゃ。
あれはヤマナカ君の毎度の口癖じゃ。
それをノグチらぁがまねて使ったんじゃ。
ヤマナカ君はあいつらぁを庇っとんじゃ。
じゃからいつでもあのモンらぁはレモンの店で、ヒソヒソ、打ち合わせのようなはなしをしとんじゃ。
マナブ君の言うとおりじゃ。
あいつらぁ、あやし過ぎじゃ』
と言った。
ナツコは
『マナブ』
という言葉だけには反応をしめし
『オカザキ君、レモンの店の事、あいつらの打ち合わせ場所になっとる言うとったん?』
と聞いて来た。
俺はようやくナツコが食いついて来たので、もう少しだと思い
『言うとった言うとった』
と、煽るような返事をした。
ナツコは掃除の手をとめて
『ふーん』
と返事をし、
『そうじゃなぁ、、』
と言ってみたり
『でも、、、
私はシノハラ先生の嫌疑さえはれたらそれでええんじゃけん
今となってはもう、関係ねぇわ』
と言ったりした。
その物言いに引っかかった俺は
『関係ねぇって、なんで、シノハラ先生の嫌疑が晴れたん?
ナッちゃん、アンタ、ハルキちゃんにでも会ったん?
会って確認したん?』
と詰問した。
ナツコは余計な事を言ったな、といった顔をしたが、一度俺が言い出すと、そう容易く引き下がる性格でない事はよく知っていると見え
『ハルキ刑事さんにやこ会っとらんよ。
会う必要ないもん。
ただ、私の中で、シノハラさんの嫌疑が晴れたの。
じゃからもうええの。
探偵ごっこやこ辞めたの』
と言った。
俺は
『なんで、なんで』
と言募った。
こうなったらテコでも聞いてやろうと思った。
その決意がナツコにも通じたのか、ナツコはあきらめたような、その癖どこか誇らしげなような顔になり
『それはね、』
と言い、
『このお湯飲みが教えてくれたのよ』
と、机の上の一点を指差した。
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