夏が来るのが怖くて。

夏が近づいている。
通勤の間に見かける女性の服装は知らない間に
眩しくなっていて
今日も胸の谷間を惜しげもなく強調した服装の
それでいて何だか真面目そうな女性が
吊り革を持っている僕のすぐ目の前の席で
座っている。
見下ろすと更にセクシーな光景になるので
目を合わせられない。

若々しい女性がそういうのであると
何となく残念な気分になるが
それがそこそこ年嵩の感じられる一人前の女性なら
尚更ドキドキするのであるが
そこは本題ではない。

「なぁ、最近イライラしてるんじゃないのか？」
部下であり、先輩でもある同い年の同僚が
中途半端に話かけてくる。
「別に」
以前なら、丁寧に答えていたかもしれないが
ほんの少しでも話をしたくなくて素っ気無く答えた。

「例の○○の件だけど」
またその同僚。
「例の？なんの例のやねん」
僕は、また素っ気ない。
「そんなことより。○○までに○○しといてな。
同じことは二度はこちらからは言わない。以上、ね。」

どうして僕はそんなに素っ気ないんだろうか。
理由は簡単である。
昼時が近づいているからである。
夏が近づくと、彼の体からは僕しか感じていないのかもしれないが
食欲が減退するほどの汚臭が漂ってくるのである。
本人に確認はしていないが、おそらくワキガである。

彼は僕と同じく、喫煙者であるが
彼が吐く息は少し離れたところからでも感じ取ることができるほど、臭いのだ。
ワイシャツの脇のあたりは
いつも午後になると茶色いシミが広がっていて
それはニオイの原因であるとは限らないのだが
彼が放つ汚臭は気分を悪くさせるのだ。

「何か、気に入らないところがあったら言うてな」
と彼は言うが
「アンタの体臭が死ぬ程嫌いだ」
とは口が裂けても言えない(笑)

ある雨の朝、小さなアーケードに入ろうとしたとき
彼の異臭と同じ匂いを感じた。
（一般的なワキガもこんな風に臭うのだろうか。
だが、彼が僕の席の隣に来るまでは感じたことない匂いだが）
そう思って、ふと前方を見ると
そのアーケードの出口あたりに彼が居たのである。
１００メートルほど先にいる彼の匂いが届くのか

それってフェロモン的なもんなんだろうか

いや、最初に夏の女性の服装が眩しく。。。と述べたのもそれである。
夏になると、女性が僕の前を横切るたびに
その女性特有の「女の匂い」が僕の鼻をかすめるのである。
だが、それは嫌いな匂いではない。
僕は女性の身体の色々な部分を舐めたり嗅いだりしたことがあるが
ダメな人の体臭は局部のものでなくても
尽くダメであるし、
大丈夫の人の体臭は、かなり際どい部分のそれでも平気である。
否、平気というより興奮するほどである。

同僚の男の体臭は、見た目と性格のマズさに加えて
仕事に対する誠実さとその能力の低さも不器用で
付き合っていて辛く
出来れば同じ物差しで計られないような職場に居たら良い関係だったのになぁ
と
つくづく思っていたのであるが
真夏の彼の異臭汚臭で、生理的に苦手になってしまったのである。

彼に直接伝えずに、臭いを防ぐことができるのでしょうか

探偵局の皆さん、どうかこんな私を助けてください。。。