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2016年05月03日09:52

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マスターができるまで ナツコの恋 37

ナツコの声が大きかったものだから店中の人が俺達の方を見た。
中でもすぐとなりにすわっているお爺さんのような人が好奇心丸出しの目線で俺達の方を見つめて来た。
その目線を感じたのかシノハラさんが居心地わるそうに、背中を丸めるような仕草をした。
すると、はずみに、床上に置かれている紙袋に靴先が当たったのか、それが、渇いた音をたてた。
その音で、俺は、シノハラさんが手ぶらではなく、手提げのような紙袋を持ってやってきている事にきがついた。
『それ何?』
と聞こうとしたが、少し早く、ナツコが
『じつは、そこで、おかしい事を発見したんです』
と言い出した。
今度は声をひそめたヒソヒソ声だった。
シノハラさんが
『なんですね?
そのおかし気な事て』
と聞いた。
『ええ加減にしてくれ』
と言いたそうな物言いだった。
ナツコは手元のメモを取り上げ
『ええですか。
十一月九日。
十一月十六日。
十二月十四日。
そして十二月二十一日。』
と読み上げ、
『これは決まって木曜なんです。
十一月二十日と十二月十九日言うのもありますが、これはそろって火曜です。
じゃから、十二月二十日は水曜ですよね。』
と言った。
それがどうした、といいたそうなシノハラさんの顔だった。
ナツコはジレジレした感じで
『という事は、じゃから、ヤマナカ君の「かもめ塾」の出勤日は火曜か水曜か木曜という事になりますよね。
それなのに、この全ての日にヤマナカ君は「かもめ塾」を欠勤してるんです。
全てにですよ。
中には、翌日とか、前日とかに振り替えて貰って出勤している時もありますが、本来決まっている日全てに欠勤するなんておかしいと思いませんか?』
と言った。
シノハラさんは
『まぁなぁ、、』
と腕組みした。
それは
『偶然と言えば偶然かもしれんけんど、なんか訳があったんでしょう。
寒いおりじゃけん、風邪をひいて長引いたとか、、』
とでも言いたそうな顔つきだった。
ナツコは
『なんでわかってくれん!』
と言いたそうな顔になり
『ほんなら、、』
と言うと
『もう一つ調べたんですが、今度はこれです、、』
と、もう一枚の紙をポケットの中から取り出して俺達に見せた。
そこにも小さな文字で
『十一月十日。
十一月二十一日。
十二月二十日。』
と日付が認められていた。
シノハラさんが、
『これまた日付じゃけんど、なんですね』
と聞いた。
辟易したもの言いだった。
俺は、自分も、昨夜のお宮での一件を打ち開けたかったのに、一向にナツコのはなしが終わらないものだからイライラし始めていた。
ナツコは
『わかりませんか?
これは全てヤマナカ君が塾をサボった翌日の日付です。』
と言った。
シノハラさんが
『ああ、そうか、そうか
なるほど。そうじゃあぁ』
と言い、二枚のメモを比較した。
そして、
『これもタニヨシ君たら言う子に調べさせたんかいな』
と言った。
ナツコは
『タニヨシ君の事はこのさいええんです』
と言い
『わかりませんか?
覚えてないですか?』
と差し迫った目つきをし
『この全ての日は、この町のアチコチで放火があった日なんですよ』
と言った。
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