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2016年04月08日10:17

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【長文】弱いリベラル、腐った保守

古谷経衡ってぇお人は
リベラルサヨクにもホシュにも容赦がないな。
だが、そこがいい。

意見はまったくおれと合わないのだが。

しかし浅羽道明の「リベラル」理解は
革新派が実際に猛威を振るっていた1970〜80年代頃のそれで
止まってしまっているように見える。

言っちゃあ何だが半世紀ほど古いと思う。
著者(浅羽)曰く、リベラルは敗北を直視せず、
「バーチャルな脳内観念世界」へと逃げ込み、
「デモのある社会になった」ことを勝利と称している、
思想が宗教と化し、
「原発止めろ」「戦争するな」「憲法守れ」といった言葉が
単なる念仏やお題目になっている……。
今やむしろ「原発止めろ」のほうが
現実的な主張だろうに。

むしろ「保守」のほうが「経済至上主義」という名の
「バーチャルな脳内観念世界」とやらに
逃げ込んでいる「セカイ系」だと言わざるを得ない。

彼らは3・11などまるでなかったかの如くだし、
福島県の汚染区域から万をもって数える人々が
退避を余儀なくされ、地域共同体が破壊されたことなど
眼中にもないようだ。

放射性廃棄物の最終処理場も決まらないまま
再稼働するなど狂気の沙汰である。

だがそんなものを喜んで引き受ける自治体や、
それを許す有権者などいようはずもなく、
結局、国会議事堂とか霞が関の真下に深い穴を掘って
最終処分場を造る以外
国民皆が納得する方法はないと思う。

それにもまして問題なのは、
電力会社幹部の自己保身と隠蔽体質である。

原発反対派ではなく、
これこそが
原発再稼働論者の最大の敵である。

人間のやることに完璧などというものはあり得ないが、
ソレが改まらないまま原発を動かしたら、
放射能漏れか何か事故起こった時、
事実隠しや矮小化に汲々として抜本的対策を遅らせ、
被害を拡大すること必定である。

しかも東電の隠蔽体質は
事故前と後で少しも改まっているようにみえない。

そっちがその気なら、
いっそ原発を動かさず
順次廃炉していくのが
結局のところ一番「現実的」であるという結論に達する。


また、安倍政権のやり方を見ていると、
たとえ政府の決定を阻止はできなくとも、
「戦争するな」「憲法守れ」という声を上げ続けて
政権にプレッシャーをかけ続けることが
ぜひとも必要だと思う。

安倍政権のパターンというのは決まっていて、
まず閣議決定などで強引に押し通して既成事実を作り、
それから理屈にもならない理屈で
「国民の理解を求める」というやり方である。

たぶん外祖父の岸伸介から
「日本人というのは愚かだから、
いくら反対反対と騒いでても、
ゴリ押しで通しさえすれば
そのうち黙って受け入れる」という
一種の「帝王学」を受け継いだのだろう。

それにしても、
安倍晋三氏には
原則と変則とか、
段取りという考え方がないらしい。

特定秘密保護法もそうだった。

安保法制もそうだった。

2020年東京オリンピックもそう。

マイナンバーもそう。

まず間違いなく、憲法改正に着手する時も
同じパターンを踏むことだろう。

そして決定してから
致命的な問題が発覚して
大騒ぎになるのである。

指導者に「原則と変則」という考えがなければ、
自由民主主義国家の政治においては
万事憲法にもとづく立憲主義が原則であって、
緊急避難的・超法規的な措置として
指導者に指揮権を集中させることを認めても、
「非常時」が緩和されたら
すぐ法治主義の原則に戻る、ということができない。
そうして古代のローマ、近代のドイツのように
恒久的な独裁に転じることになる。

また「段取り」という考えがなければ、
仮に戦争するにしても、
戦争目的を明確にして、
現実的にどのような形で終戦に持ち込むかという
落としどころを考えることができない。
これはつまり
「戦略」が立てられないということである。

現在のリベラル派は
確かに「現代の戦争」を知らないかもしれない。

しかし、
安倍政権およびそれを支える政財界の勢力は
政略には長けていても
根本的には現実感覚がなく
「カネとチカラ」という、リアルなようで実は
バーチャルなセカイに閉じこもっていること、

そして、保守自体が
思想的な生命力と保守すべき「伝統」の内実を喪失して、
ネトウヨ(排外・国粋主義)とネオリベ(経済自由原理主義)という
二つの悪霊に憑依されたゾンビと化していることなら
よく分かっている。

それゆえ、
非力であり無力であることは重々承知していても
声を挙げざるをえないのである。

「かくすれば かくなることと知りながら やむにやまれぬ大和魂」

――――――――――

「現代の戦争」を知らずに
反戦を唱えるリベラルの弱さ


 2012年夏には20万人の脱原発デモが、去年夏には12万人の反安保法案デモが国会前で起こった。だが、その盛り上がりにもかかわらず原発は再稼働し、法案は通り、しかも安倍政権の支持率は高い。これはリベラルの敗北である。

『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』(浅羽通明著・ちくま新書)はリベラル系知識人の言動から敗北の理由を考察した論考である。著者曰く、リベラルは敗北を直視せず、「バーチャルな脳内観念世界」へと逃げ込み、「デモのある社会になった」ことを勝利と称している、思想が宗教と化し、「原発止めろ」「戦争するな」「憲法守れ」といった言葉が単なる念仏やお題目になっている……。

 著者は挑発的で辛辣、ときに冷笑的な言葉でリベラルの抱える矛盾、欺瞞、劣化を炙り出す。気鋭の若手保守論客・古谷経衡氏はこれをどう読んだか。(インタビュー・文/鈴木洋史)

──著者はリベラルでもなく保守でもない「封建主義者」を自称し、通常の「右」とは異なる立場でリベラルを批判しています。

古谷:僕は安保法案に賛成で、微温的な安倍政権支持者です。だからというわけではありませんが、「我が意を得たり」です。その一方、著者の姿勢に共感できず、SEALDsの奥田愛基さんらを擁護したい気持ちも起こりました。

──賛同するのはどの部分ですか。

古谷:まず「リベラル系知識人はセカイ系だ」と看破した点ですね。日常を生きる普通の主人公がある日突然、危機に立たされた世界を救う救世主となるのが「セカイ系」と言われる物語の系譜で、アニメだと『新世紀エヴァンゲリオン』や『コードギアス』『交響詩篇エウレカセブン』が典型。それに倣えば、デモ参加者たちは戦争の危機から日本を救う主人公のつもりなんですかね。

「セカイ系」の特徴は、平穏な日常と「最終戦争」との間に中間過程がないことです。現実世界では、唐突にヒトラー政権が誕生するのではなく、画家志望だった青年の挫折からはじまり、一次大戦とミュンヘン一揆、ナチ党内部の抗争などといった中間過程がある。

 でも、リベラルは法案ひとつ通っただけで、すぐにでも安倍さんがヒトラーのような独裁者になり、どこかに戦争を仕掛け、徴兵制を復活させる、などと話を進めるわけです。中間過程を無視した荒唐無稽な言説です。

──確かに「セカイ系」じゃない人にはピンときませんね。

古谷:ただ「セカイ系」は右にもいるのです。ある自衛隊関係者から聞いた話ですが、3.11のとき右系の知人が彼に電話をかけてきて「自分に一個大隊を任せて欲しい。東北を救うために俺が出る」と言ったそうです。「ただの市民が日本を救う」。これは右版のセカイ系ですね。

──著者は、朝日新聞などのリベラル系メディアは何十年も前から、ことあるごとに「この法案が通ったら日本の民主主義は死に、戦争が始まる」と煽ってきた「オオカミ少年だ」と批判していますね。

古谷:それに関連して、著者が触れていないことを指摘すれば、リベラルは「安倍は戦争をやりたがっている」と批判する割には自衛隊の装備など軍事知識に疎すぎです。例えば1998年に「おおすみ型」輸送艦が就役したとき、見た目が全通甲板(甲板が艦首から艦尾まで平らであること)だから、すわ「空母だ」と言い立て、「侵略の準備だ」などと騒ぎました。

 しかし、甲板に耐熱処理を施しておらず固定翼機の離着陸は不可能です。格納できるLCAC(エアクッション艇)も2隻だけで、その定員は五十人程度。一個小隊程度の人数でどうやって他国を侵略するのか。日本は戦略爆撃機も原潜も中距離弾道弾も保有していません。F−35の調達も予定通り行くかどうか……。装備を仔細に検討すれば、専守防衛すら危ういというのが僕の考えです。

 また、社民党は一昨年、「あの日から、パパは帰ってこなかった」という赤紙を連想させるポスターを作って集団的自衛権に反対しましたが、先進国の潮流は徴兵廃止です。リベラルはいまだに70年前に終わった日米戦争を想定しているようですが、今後あんな総力戦を日本が戦うことはあり得ません。現代戦の主役はドローン(無人機)とサイバー空間です。反戦を唱えるなら、もっと現代戦を研究し、それを抑止するためにはどうするかを考えるべきでしょう。

──著者は本書の最後のほうで〈リベラル派が「言葉への信頼」を腐らせている現状〉を指摘したい、と述べています。

古谷:リベラルはよく「安倍はヒトラーだ」と言いますが、成蹊学園から内部進学した温和な安倍さんは、良くも悪くもヒトラーほどの大物ではない。僕からするとヘスやボルマンですらない。そうやってすぐ「ヒトラー」を多用し、言葉をインフレさせるので、言葉の信頼性がなくなるのです。

──著者の姿勢に共感できなかった部分とは?

古谷:著者は最初のほうで「楽しさを強調し、敷居を低くしないと人が集まらないデモではダメだ」と批判していますが、奥田さんたちはそんなことを言われなくても承知のはずです。また、奥田さんたちのデモには勝つための戦略がないと批判していますが、負けると分かりつつも気持ちを抑えきれないという……まあパッションとでも言いましょうか。それが周囲に伝わり、あそこまでの広がりを持ったと思います。「勝つための最強メソッドを俺は知っている」と言われても虚しいです。

 僕は自分の著書の中で奥田さんと対談したことがあるので余計に思いますが、彼は中学で不登校になり、全寮制のキリスト教系高校に進み、震災のときには被災者を支援し、映画を制作するなど「才能豊かな変人」です。僕と政治的立場は違いますが、彼のように既存の常識の枠外にいる人を僕は評価します。著者はそうした人を突き放していますが、それは寛容さに欠けるのではないかと感じました。

※SAPIO2016年5月号

http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=125&from=diary&id=3936793

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ネット右翼の終わりが鮮明に。
田母神事務所強制捜査の衝撃


古谷経衡 | 評論家/著述家 2016年3月7日 22時17分配信


・共闘から埋めがたい亀裂へ

「―やっぱり(捜査が)入ると思っていた。特段の驚きはない」

3月7日昼過ぎ、元航空幕僚長の田母神俊雄氏の事務所や自宅を、東京地検特捜部が強制捜査(業務上横領容疑)したという衝撃的なニュースが入った直後、筆者の電話取材に対し、田母神選対に深く関わった元関係者のA氏は冷静にこう答えた。

2014年2月、猪瀬都知事(当時)の辞任に伴う東京都知事選挙で、独自候補として擁立された田母神俊雄氏は、主要四候補のうち最下位の4位に終わったものの、約61万票の得票を受けておおむね健闘した。その際、最大の支持母体は衛星放送番組制作会社・日本文化チャンネル桜(以下チャンネル桜)と、同局と一体となっている傘下の政治団体などであった。

非自民で強固な保守層(自民党より右)に訴えた田母神氏は、当時チャンネル桜やそれを包摂した保守界隈が一丸となった応援によって、インターネット上で保守的、右派的な言説を採る「ネット右翼層(ネット保守とも)」から絶大な人気を集めた。ネット上のアンケートやハッシュタグで、「田母神旋風」が吹き荒れた。

選挙結果は既に述べたとおりだったが、選挙後しばらくして、かつて「同じ釜の飯を食った」同志であるチャンネル桜と田母神氏との間に埋めがたい亀裂が表面化した。田母神氏が選挙時に集めた(寄付)約1億3200万円の内、5000万円にも及ぶ巨額の使途不明金疑惑が浮かび上がったのだった(この上で、昨年、田母神氏は秘書による私的流用を一部認めている)。

田母神氏を「東京だけではなく日本の救世主」として候補に祭り上げたチャンネル桜自体が、一転して田母神氏の資金疑惑を追求する、という展開になった。今回の強制捜査は、こうした一連の使途不明金疑惑を受け、地検が本格的に動いたものだ。無論、田母神氏は起訴されたわけでもなく、よって裁判になっているわけでもない。現時点(本稿執筆の2016年3月7日現在)では無罪だ。が、地検による強制捜査という今回の報道は、疑惑に蓋然性があるのではないかという憶測に火が付き、各方面に衝撃が走っている。

・ネット右翼の象徴としての田母神氏

田母神氏が表舞台に立ったのは2008年。ホテルグループ「APA」が主催する懸賞論文『真の近現代史観 懸賞論文(第一回)』に、田母神氏の論考が採用され、大賞を受賞したのだ。この「論文」の内容は一言で言えば「日中戦争はコミンテルンが仕掛けた謀略であり、日本は中国を侵略していない(むしろ防衛戦争であった)」という歴史根拠の一切無いトンデモ・陰謀論を彷彿とさせるものだった。が、当時定年間近とはいえ現役の航空幕僚長が政府見解と真逆のオピニオンを展開したことで、氏は一躍時の人となった。

思えば、田母神氏はネット右翼にとって象徴的存在であった。前記「田母神論文」が世を賑わせるやいなや、一躍スターとして保守界隈に踊りでた田母神氏は、著作・番組出演・講演会などと八面六臂の活躍を見せた。それまで雑誌『正論』と産経新聞という、貴族的な言論空間に自閉し、突飛な物言いを謹んできた旧来型の保守(凛として美しく路線)と、田母神氏は何から何まで異なっていた。

田母神氏いわく、

「(世田ヶ谷で検出された2.7マイクロシーベルトの)1万倍の放射線でも24時間、365日浴びても健康上有益」

「(福島第一原発から)発生する高濃度汚染水は、欧州ではコーヒーを飲むときの水」

「(イスラム国に拉致・殺害されたジャーナリストの)後藤健二さんが在日かどうか調べて欲しい」

「左翼は見ればわかります、体が左に傾いているから」

などと、到底事実とは異なるトンデモで過激な物言いが氏のツイッターやブログから飛び出すことになった。それまで穏健・温和を旨としていた保守系言論人には無い過激な物言いに、ネット右翼は一斉に喝采を送った(これは、現在のトランプ旋風にも似ている現象である)。

・権威としての「田母神」

現在では、保守系言論人の少なくない部分の人々が田母神氏と同様の発言を行っている嫌いがあるが、ブロガーやユーチューバーなどではなく「元航空幕僚長」という立派な社会的肩書でこのような言説を展開する人物がほぼ皆無だっただけに、これまで既存の大手メディアから黙殺・蔑視され、それゆえに権威からの承認に飢えていたネット右翼は「元航空幕僚長・田母神俊雄」を熱狂的に支持した。

そしてなにより、田母神氏の持つあらゆる世界観こそ、根拠なき陰謀論や空想が寡占的であったネット右翼の世界観を忠実にトレースしたものだった。普通、保守系言論人は、自らの下位に位置するネット右翼に知識を与え授ける「上からの教化」を役割としていたが、田母神氏の登場によって粗悪な陰謀論を縄張りとするネット右翼の言説と、保守系言論人が一体化するという皮肉な劣化現象が発生したのである。

ネット右翼が創りだした根拠なきデマを田母神氏が広い上げ、ツイッターで拡散する。すると「権威から承認された」「田母神さんが言っているんだから間違いはない」などとして、ますますそのデマが雪だるま式に拡散されていく、という悪循環を生んだ張本人が田母神氏であった(その典型が、前述後藤さんの例など)。

無論、「私はいいひとです!」などのジョークを旨とする氏の軽快で個性的なキャラクターも人気の原因のひとつであった。まさにこのように、田母神氏は、我が国のネット右翼史を語るにあたって、避けて通れない最大のキーパーソンなのである。

・都知事選立候補

田母神氏の上記のような過激で、時としてトンデモや陰謀論を惹起させる物言いに眉間にしわを寄せる保守系言論人も少なくはなかったのだが、氏が保守界隈の押しも押されぬスターとしてその階段をかけ登っていくうちに、そういった異論は封殺されていった。

2010年2月、チャンネル桜と密接な関係にある政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」が設立されると、その会長として田母神氏が擁立された。同会の実質的な運営は、幹事長に就任したチャンネル桜の創設者で社長でもある水島総(みずしまさとる)氏が指導的であった。この団体の設立こそ、2014年2月の東京都知事選挙に田母神氏を候補として突き進んでいく第一の橋頭堡だったのである。

2013年12月の忘年会で「きたる来年(2014年)の都知事選挙に立候補して欲しい」という水島氏の説得を快諾した田母神氏が、翌2014年の年明け早々、立候補を公式に表明すると、当然、擁立母体のチャンネル桜を中心として、国家総力戦の如き猛烈な「動員」が実施された。「動員」とは、同局に出演しているキャスターや常連コメンテーターらを片っ端から選挙応援演説に繰り出すことであり、それはまるで「根こそぎ動員」の状況であった。

・「田母神を支持せぬ者は保守に非ず」

ここから生まれたのが、「田母神ガールズ」と呼ばれた女性陣であった。彼女たちは街頭で田母神氏の応援カー(街宣車)に乗り、高らかに田母神支持を訴えた。彼女たちは全員チャンネル桜の常連出演者と同一であり、ここからも同局が一丸となって田母神氏を応援したことが分かる。それだけ彼らは真剣で必死だった。その燃える心は、本物だったであろうと現在でも思う。

後援団体「田母神としおの会」には、保守界隈の重鎮から末端に至るまで、続々と賛同人が記載されていった(下記)。何を隠そう、当時、同局のネット番組のいち司会を務めていた私も、この賛同人の末席に登場する。当時の保守界隈の空気感は、「田母神を支持せねば保守に非ず」といった風で、田母神氏への異論は完全に封殺されていた。

私はそもそも「田母神論文」の発表時点で氏の言論人としての性質に疑問を持っていたし、あらゆる著作内容を総合しても、到底都知事の器ではあるまいと考えていたが、それを関係者に吐露すると「古谷(筆者)は反田母神の思想を持っている裏切り者だ!」と選対本部に通報されるという、ゲシュタポか中世末期の魔女狩りの塩梅であった。当時の保守界隈の空気感はこんなかんじだった。

・「あの金はどこへ行った」

選対から何度も何度も「応援演説に来るように」という矢のような催促があったが、私は1回だけ参加した以外は全て断った。そうして選挙が終わり、田母神氏が負けると「敗戦処理」のような状況になり、選挙に貢献しなかった人物が徐々に疎まれるようになった。私は名指しで説教をされ、田母神ガールズの人々からも徹底的に嫌われてしまった。

頑なに田母神氏の応援を拒否した私も人付き合いが下手だったのだろう。もう少し柔軟であれば、現在でも彼らと酒を酌み交わすくらいの仲で在り続けたかもしれない。が、過ぎた日は帰らない。私がこの後、彼らと行動を分かった直接の遠因はこの選挙だった。そして彼らの異論を許さない異様な同調圧力に精神が耐えかねたのもこの選挙だった。その後、チャンネル桜と田母神氏も前述のように離反して、現在に至っている。

冒頭に登場したA氏は、しみじみと言った。


「田母神論文の内容を度外視して、ある種の熱気として、シンボルとして田母神氏を祭りあげてしまった、保守側にも原因はあるのだろう。そのせいで、田母神氏のずさんな部分を知りながら、何も言うことのできない強烈な同調圧力が出来てしまった。いま思えば慙愧に堪えない」

かつて「東京のみならず日本の救世主」として保守界隈、そしてネット右翼からスターに祭り上げられた田母神氏が、地検から強制捜査の咎を受けるとは、よもや都知事選挙の際には万人の頭の中になかったであろう。

無論、繰り返すように、田母神氏は現在、なんら罪が確定したわけではない。が、ネット右翼の象徴として君臨し、そして君臨し続けた田母神氏への疑惑が強制捜査となったのは、単にいち候補の選挙資金の使途不明疑惑という枠を超えた意味合いを見つけることができる。


「年金生活者の老人たちが、苦しい生活の中から一万円、二万円を(田母神氏の政治資金管理団体に)寄付していた事実を知っているだけに、やるせない思い」(前述A氏)

「都知事選挙でボランティア、手弁当で参加、協力したのに、裏切られた思い。事実ならお金を返して欲しい」(匿名のB氏)

「秘書が流用しているだけと信じたいが、本当に本人は知らないのか、ますます不信が高まった」(匿名のC氏)

このようなやるせない人々の声は、果たして晴れる時が来るのであろうか。

・「原罪」を背負った保守

都知事選挙の時、田母神氏の応援賛同人にあらゆる保守界隈の人々がこぞって名を連ねた。或いは田母神氏の理論の誤謬を見つけながらスターとして祭り上げた。分かってはいるが、知ってはいるが、「保守全体の利益」だの云々、或いは「東京のため、国家のため」を大義として、彼をスターに祭り上げたのは他でもない保守自身だった。これは保守にとって「原罪」として記憶されることになるのではないか。
画像
左の写真は2014年2月の東京都知事選挙の時に作られた賛同人一覧を示すポスターである。保守論壇を飾るきらびやかな人々が重鎮から末端に至るまでずらりと名を連ねている(筆者は、上段四段目右側)。少なくとも田母神氏自身が認めているように、本人の関与は分からないが、秘書による私的流用は事実だ。

支援者からの浄罪、つまり寄付金が私的に使われたという大きな疑惑に、いっときでもお墨付きを与えてしまった保守界隈は、果たして無実でいられるのだろうか。あらゆる意味で田母神氏を利用し、祭り上げ、そしてネット右翼に力を与えてきた保守界隈に、罪なき人など居ないのである。今後の状況は捜査の進展次第になろうが、すまし顔で「私は関係ない」としているのならば、それは潜在的共犯であろう。

私は、氏の政治資金団体に1万5千円の寄付(決起集会参加費)をしたのを、今でも後悔している。

ネット右翼の象徴としての田母神氏は、ネット右翼を映す鏡でもある。氏の言動はネット右翼の集合知そのものであり、またそれはネット右翼に転写され影響力を持つ「合わせ鏡」だ。氏の権力の衰微は、そのまま保守界隈とネット右翼の減衰に直するのは言うまでもない。保守政権下、ただでさえ安倍政権から疎んじられている保守界隈とネット右翼の、本格的終焉が近づいている。

そうならないためにも、保守界隈は「私は関係ない」では済まされない。

*参考・出典『ネット右翼の終わり』(晶文社、2015年、拙著)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/furuyatsunehira/20160307-00055147/
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