稔の屋敷/居間/午後/晴れ
?「…完了だ」
稔「それは重畳。過不足はないか確認したかね?」
?「…ああ」
稔「…その割に不満そうだが」
?「……うるせェ。施しは好きじゃねェんだよ」
稔「……そうかね。では施しと思わないでくれ」
?「…あ?」
稔「自然とそうなっただけサ。君が気にする事は何も無いよ鼠君」
?「……ふん。てめェ、詐欺師には気をつけろよ」
稔「よく言われるよ」
?「……っケ」
?「あ、あの、お邪魔しますです〜」
?「…ふん。おら、可愛いねーちゃんとちんまいねーちゃんが来たぞ」
?「ち、ちんまいだと!?」
?「他に何か形容詞があるか?」
?「わっ、わっ、鼠さんも×××さんも喧嘩はダメですよぉ」
稔「おや、どうも、いらっしゃいませ。ご覧の通り鼠は元気ですよ。烏は今日も屋根の上です」
?「…来る時に見た。如何やら無事に収まったようじゃな」
稔「ええ、まぁ、とりあえずは」
?「どうせロクなモンはねェ家だ。ゆっくりするなりさっさと帰るなりしてろ」
稔「…鼠君、少しくらい柔らかい物言いは出来ないのかね?」
?「ふん。言うだけ無駄也。針と糸はあるか? あるならば自分が縫ってやろう」
?「は? おい、稔、このちんまいのを如何にかしろ。五月蝿くて眠れもしねェ」
?「……ちんまいちんまいと五月蝿い奴じゃな、貴様こそ不要に喧しく騒ぐ愚かな虎のよう也」
?「……ちび、虎…さん…ですか?」
稔「…………っく…ふはははっ!! 良いじゃないかちび虎君。よく似合っているよ」
ち「…て、てめェ…」
?「ふん。似合いの名ではないか」
?「ふふっ、可愛らしくて素敵です」
ち「…っケ。わーったよ、畜生め、恩人じゃなければ噛み殺してるトコだ」
稔「ではちび虎君、茶の用意をするから君の家族も呼び給えよ」
ち「あー!? うっせェぞ黙れ黴野郎!!」
?「お手伝いしますです。ちび虎さんはゆっくりなさってくださいねっ♪」
?「姉様、自分がします故」
?「じゃあ三人でですねっ♪」
?「…いや…」
ち「…いーじゃねェか。ちっこいのと可愛いのと黴臭いので仲良くしてろ」
?「ち、ちっこい!?」
ち「事実だろ。俺は家族を呼んでくる」
?「ふん…素直じゃない奴じゃの」
稔「…まぁ…そう云う奴です。どうぞ、お気になさらず」
?「…気にはしておらんが……ふふっ…しかしちび虎は良い名じゃな」
?「あわわ…悪い事をしてしまいましたでしょうか」
稔「…いえ? あれで気に入っているようですよ。鼠と呼ばれる方が厭なようですね」
?「……ふむ。…気を付ける也」
?「…色々あるのですねぇ」
稔「まぁ、そんなところですね。そう言えば一斗缶に入ったかりんとうがですね…」
?「む…何故そんな物に入れたのだ?」
?「わぁ…いっぱいですねぇ」
稔「…これが中々減らないのですよ」
?「…だろうな」
?「…ですよね」
そんな。
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