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2015年12月05日09:53

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マスターができるまで かっさん 17

かっさんはしばらくの間、俺の顔に、覗き込むような視線をあてていた。
それは優しいながらも、どこか怖いようなモノを秘めたかっさんの顔だった。
聞きたくない気もした俺は
『ええわぁ。別に言うてくれんでも』
と答えそうになった。
しかし、いつしか、知らず知らず、その視線の負けたようになった俺は
『うん、
知りたい』
と答えていた。
いちど、そう答えてしまうと、俺の心の中の、知りたいという欲望は、いっきに競り上がるように高まって気、
『なんでなん
なんでわぃ、かっさんから嫌われたん?』
と早口で迫っていっていた。
かっさんは
『ありゃ、、まぁ』
と驚いたような声を出し、
『私は別によっちゃんの事を嫌った訳じゃぁねぇよ。
ただな、、ちいと好かんなぁと思うたんじゃ、、』
と言った。
『好かん?』
俺はそう聞き返すと
『なんが、
わぃのどこが好かんの?
好かん言う事は、嫌い言う事と同じじゃが』
と再度迫って行った。
我がまま放題のいい放題が祟り、近所中の人に嫌われている俺だったが、かっさんにだけは好かれていると思っていたからだった。
かっさんは
『まぁまぁ』
と、熱くなる俺を嗜め、
『好かんいうのも大げさな言い方じゃけんど、、、
なら、言うよ。』
と前置きをし、
『よっちゃんよ、、
あんた今日までなんでお爺ちゃんのお墓に来なんだ。』
と言った。
それは思いもかけなかった問いかけだった。
俺が
『へ?』
と聞き返すと、かっさんは、俺がはぐらかしているとでも思ったのか
『へ?じゃねぇ!』
と大きな声を出し
『トボケなさんな!
アンタをアレだけ可愛がってくれたお爺ちゃんじゃがな。
目ん中に入れても痛とうねえ程可愛がってくれたお爺ちゃんじゃがな。
死んでまだたった、二三年しかたっとらんお爺ちゃんじゃがな。
それじゃのに、もう、忘れてしもうたんかいな?
じゃとしたらとんだ呆れモンじゃ!
アンタとお爺ちゃんの間にあったモンはそがなモンじゃなかろ。
他人の私らぁが見ようたって、そこまでするか言うほどの可愛がりようじゃったがな、、
アンタじゃってお葬式の時、一目も憚らずワンワンいうて泣いとったがな。
それのに、なんでぃ!
アンタ言う子は!
あの涙はウソ涙じゃったんか!
そがん心の冷てぃ子じゃったんか!
なんでお墓参りに来ん!
言うてみられぃ。』
と言った。
俺はまさかとおもうような事をかっさんが言い出したモノだから、半ば、あっけにとられたようになり
『なんで、、そがな事、かっさん知っとん?』
と聞いた。
するとかっさんは
『知らいでか』
という顔をし
『ノブちゃんから聞いた』
と、母の名前を持ち出した。
『ノブちゃん、言うとったぞ。
アンタがちいとも、お爺ちゃんのお墓参りをせん言うて。
なんぼ、行こいや言うて誘っても、
「行かん」
いうばぁじゃ言うてな。
なんで行ってあげん?
へ?
お爺ちゃんの事やこ忘れてしもうたんか?
お爺ちゃんが寂しがっとるとは思わんのんか?
ツレとマンガを書いたり、テンマル(ボールの事)ついて遊びょうる方がええんか?
そうなんか?』
と言った。
俺は、最前とは異なる何かが、またもや、ぐっとせり上がってくるのを感じ
『ちがわぁ、、
そうじゃぁねえわぁ、、』
と言おうとした。
しかし、それは震えた息とだけなり言葉にならなかった。
のどのあたりが、あたかも、フタをされたようになってしまった俺は、それっきり何も言えなくなってしまい、睨むようにかっさんの顔を見ていた。

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