横須賀市さんぽ「三浦アルプス東尾根・鷹取山から田浦梅林」
○「向坂トンネル」(追浜南町1丁目〜鷹取町1丁目)
京急追浜駅の南西にある「向坂トンネル」は、昭和8年竣工の車は通ることのできない小さいトンネルです。平地が少ない追浜・田浦周辺では、戦時色が濃くなるにつれ海軍工廠の工員や軍人の数は激増し、谷戸の奥の奥、山の上の上まで器用に家が建てられていきました。山にはトンネルや防空壕が多数掘削され、トンネルの上には尾根道と住宅、立体交差や細い山道、階段などが複雑に交錯する様子はまるでラビリンスです。
○「良心寺」(追浜南町1-27)
追浜駅の南に「良心寺」があります。本堂はパコダ風のミャンマー様式です。本尊は阿弥陀如来。元々は応永年間（1394〜1428年）に曹洞宗の道場として開かれましたが、その後は無住になっていました。朝倉能登守景高が、天正11年（1583）6月11日に亡くなった夫人の菩提を弔うために、天正3年（1575）に再興しました。そこで、夫人の戒名・良心大姉にちなんで良心寺とつけられました。朝倉氏は戦国時代に小田原北条氏の家臣で、玉縄衆に属し、浦郷村追浜、伊豆、上総などに所領を持っていました。天正18年の豊臣秀吉による小田原城攻めでは、箱根の山中城を守りました。その後、朝倉能登守は後北条氏と共に滅びたのか行方知れずとなり、お墓もこの寺にはありません。江戸時代には格式の高いお寺で当時の駕籠が残されており、また、豊臣秀吉が小田原石橋山で発したという「制札」、朝倉能登守関連の資料などさまざまな寺宝が残されています。昭和61年、スリランカ大統領からいただいたという仏舎利（お釈迦様の骨）が本堂に祀られています。
【朝倉能登守夫人の墓】
境内の梵鐘の近くに一段高くなった場所があり、そこが朝倉能登守夫人の墓になります。高さ2.1mの立派な宝篋印塔です。
【浦郷陣屋跡】
良心寺の周辺が「浦郷陣屋跡」になります。戦国時代、朝倉能登守景高が開いた陣屋があったところで、その後江戸時代になると、追浜を領地とした各大名家の陣屋がありした。特に、江戸湾の防備の任にあった川越藩の時に陣屋の拡張が行われました。良心寺前の京急踏切付近が陣屋のあったところで、今も「大門」と呼ばれています。「御蔵山」、「殿様井戸」などの名もあります。
【良心寺の庚申塔】
お寺に入るとすぐに、2体のお地蔵様にはさまれて2基の庚申塔があります。寛文12年(1672)銘の庚申塔は、すべての特徴が凝縮された素晴らしいものです。
○「首斬観音」(追浜南町1-30)
良心寺前から京急線路沿いの道を南に進みと、十字路の先の右手山裾に「首斬観音」の岩屋があります。ここは陣屋のあったころの処刑場であり、昭和初期、国道16号建設の際に骨が出てきたともいわれ、その霊を慰めるために観音像が祀られました。銘文から天保11年(1840)に建立されたようです。観音像には「首斬観音 昭和3年7月12日梅月書」とあり、松竹庵梅月とは、田浦に住み全国に数千人の弟子を持つ俳人でした。左側の碑は中央に念仏｢南無阿弥陀仏｣、右側には題目「南無妙法連華経」と刻まれています。前を通る山裾の道は「浦賀道」で、古道の面影をいまでも残しています。
○「磨崖仏」(湘南鷹取3-3)
首斬観音から南西に向かい、住宅地のきつい坂を上って行くと、鷹取小学校の東側に「鷹取山公園・磨崖仏入口」の看板があり、長い石段が続いています。道標に従い上っていくと、鷹取公園の一画の岩山には、巨大な弥勒菩薩尊像の「磨崖仏」が彫られていて、名所のひとつとなっています。次の説明があります。
《鷹取の地名の由来については、太田道灌が鷹狩りをしたことによるとか、鷹が多くいて鷹をとったことによるとか、いろいろな言い伝えがあります。また、高い所を示す語に「タカットー」の原意があり、これが「タカトリ」となり、鷹取の文字をあてたものと考えられます。この山の地質は、市内の至る所でみられる第三期層凝灰岩です。柔らかで加工しやすいため、家屋の礎石や塀、護岸などの建築土木用材として鷹取石の名称で広く愛用されてきました。切り立つ岩の様相は明治から昭和の初期にかけて、石材を採取したために生じたものです。この山の容姿が群馬県の妙義山に似ているところから「湘南妙義」の別称で呼ばれるようになりました。また、岩肌にある無数の小さな穴は、登山練習のために打ち込まれたハーケンの跡です。磨崖仏の弥勒菩薩尊像は、逗子市に在住の川口満氏の依頼により、本市在住の彫刻家藤島茂氏が昭和40年頃に制作したものです。》
【鷹取山公園】
鷹取山展望台の下にある広場が「鷹取山公園」です。広場には東屋やベンチが設置されていて、ベンチに腰掛けると、眼下に広がる横須賀の街並みやその向うに広がる東京湾を眺められます。鷹取山公園から神武寺に抜けるハイキングコースは、四季を通じて楽しめます。山頂や公園広場にそびえ立つ岩肌には無数の穴が開いていますが、ロッククライミングの練習で打ち込まれたハーケンの跡です。現在、鷹取山公園での岩登りは禁止になっています。
【鷹取山(標高139ｍ)】
「鷹取山」(標高139ｍ)は垂直に切り立った岩石が特徴で、岩山（親不知）の山頂に展望台があります。山頂の展望台からの眺めは抜群で、晴れた日には富士山から伊豆、箱根、房総半島まで雄大なパノラマを楽しむことができます。
○「三浦アルプス東尾根ハイキングコース」
少し戻り広場にある田浦分岐(浜見台への道標あり)から、田浦梅林へと向かいます。樹林の山道には、京急が設置した番号付案内標があります。��6を左に進み(右は神武寺?)、左下が住宅地の細尾根を通り��7で左へ進む(右は神武寺?)と、その先に「スダジイの大木」があります。
【スダジイの大木】
このスダジイは、「かまくらと三浦半島の古木・名木50選 スダジイ」に選ばれています。さらに送電線鉄塔(貝山線10)の先の��8を通過して、道なりのよく踏まれた道を行くと丁字路となり(左に浜見台への道標)、ここは直進していくと再び左下に住宅地が迫ります。次の丁字路(右に神武寺の道標)も直進すると、送電線鉄塔(東京南線1・2号線No.42)があり、下って行くと住宅地の最上部に出ます。小さな手製の道標に「右 鷹取山」とあります。
【住宅地の最上部】
右に上り最奥の家と家の間、幅50�僂阿蕕い離侫Д鵐垢侶箚屬鯆未衄瓦院∋各擦北瓩譴�5分ほどで送電線鉄塔(東京南線3・4号線No.41)に着きます。一つ目の鉄塔を左に大きく回り込み、送電線巡視路の階段を下っていきます。
【篠山公園】(逗子市沼間6-1092)
沼間と船越を結ぶ舗装路に出て右に少し行くと、小さな「篠山公園」があります。
【沼間坂上バス停】(逗子市沼間6丁目)
篠山公園で一休みしたのち、沼間6丁目の住宅地を下って横浜横須賀道路のガードを潜り、広い道路に出たところが「沼間坂上バス停」です。
【水質試験場】(逗子市沼間6丁目)
ファミリーマートの前で信号を渡り、横須賀線の線路を右下にして再び横浜横須賀道路のガードを潜り、左に沼間ファミリー広場を見て進みます。「水質試験場」の車止めを抜け、水質試験場入口の前を通りそのまま道なりフェンス沿いに歩きます。沼間466電柱の脇の道(見落としやすい)に入り杉植林地を上れば、また尾根歩きになります。ここから「三浦アルプス東尾根」に入ります。ひと上りで着いた尾根を左に行き、送電線鉄塔(��39)を過ぎると右側には逗子インターの有刺鉄線が続きます。次の送電線鉄塔(桜山線��4)を潜り左の道を直進すると、左からの道に合流します。その先、いくつかの送電線鉄塔を過ぎながら、港が丘分岐(左)・白赤稲荷分岐(左) などを次々に見送って、直進の樹林の道を辿ります。
【三浦アルプス北尾根(馬頭観音・東逗子)分岐】
しばらくして、三浦アルプス北尾根(馬頭観音・東逗子)分岐に出ます。右に行く道は、馬頭観音・東逗子・二子山へと向かう道です。ここは直進(右)して上って行きます。また右に森戸川源流への道がありますが、ここも直進します。尾根歩きになると、露岩をひと登りした小ピークがあり、やっと北東方向に横須賀港の見晴しが得られます。
【田浦梅林・畠山分岐】
小ピークから5分で、仙元山・畠山と田浦梅林の分岐になります。左上には、小さなベンチがあり眺望が楽しめます。道標に従って、田浦梅林へは左(北東方向)へ虎ロープのある急坂を下ります。右手に畠山へと続く尾根が見えます。
【横浜横須賀道路の歩道橋(田浦橋)】
横浜横須賀道路の歩道橋(田浦橋)からは、左に尾根の中腹上に白赤稲荷の尾根が見えます。橋を過ぎれば、もう田浦梅の里(田浦梅林)の一角になり、青少年広場に出ます。
○「田浦青少年自然の家」(田浦大作町33−1)
田浦梅の里の山頂付近にあり、キャンプ場があります。昭和61年に設置。近くには展望台や芝生広場もあり、市内のアウトドア派や家族づれに好評です。
【田浦緑地記念碑】
広場にある「田浦緑地記念碑」は、昭和61年に建てられました。
�狹擇慮撞曚鯣�で感じる丘の広場に 私は 翳りなき魂の故里をみる��
この碑のある田浦梅の里（旧田浦緑地）は、昭和51年、碑の表に刻まれた詩の作者・石川宏さんが横須賀市に寄付された山林約36万�屬鮹羶瓦紡だ�・整備されました。石川さんは先祖代々、地元の田浦町に住む大学教授、詩人です。
○「田浦梅林」(田浦泉町92)
「田浦梅林」は、昭和9年皇太子殿下（現在の天皇陛下）のご生誕を記念して、山の所有者である石川金蔵さんを中心とした地元の人たちによって梅林組合がつくられ、700本の梅を植樹したことにはじまります。面積は約6000�屬△蝓∋葦哉湘腓任燭世劼箸弔稜瀘咾箸靴特里蕕譴討い泙后８什澆任浪�須賀市の管理になっていますが、昭和57年ごろからこの梅林に隣接して、田浦緑地（現在は田浦梅の里）に市が梅の植樹を行い、いまでは青軸・白加賀の白梅・養老の紅梅など約2700本の梅の花を楽しむことができる三浦半島随一の梅の名所となっています。美しい花と香りをいっせいにただよわせる2月中旬から3月中旬のころは大変みごとで、例年約4万人もの梅見の客で終日にぎわいます。また12月〜3月にはスイセンの花も楽しめます。
【田浦梅の里】
長浦湾から東京湾まで一望することができる眺めのよい「田浦梅の里」の頂上近くの広場には、梅林のほか展望塔をはじめ、フィールドアスレチックや「青少年自然の家」などの施設があります。昭和51年地元の石川宏氏がこの山一帯の33万7千�屬魏�須賀市へ寄付したことに始まります。市では、昭和57年4月に「田浦緑地」（現在は田浦梅の里）として開園しました。
【大六天神】
田浦梅林のある山の中腹に立っている樫の大木の下に、「大六天神」の祠があります。由緒記によると、鎌倉時代に村人たちが海の幸、山の幸を願うために、大山咋命・萱の姫・山神・水神の４神を合わせて祀ったのが始まりと伝えられています。また、この大六天神の森は、魚見台として海上の船の位置を知る森として大切にされてきたといいます。昭和６年に大六天神の森の下に住む地元の人の「お告げ」を聞き、森の所有者が森の樫の大木付近を掘り起こし調べた結果、地下から数個の礎石を発見し石造りの祠があったことがわかりました。さっそく地元の人に呼びかけ有志とともに、昭和７年白木造りの祠を現在の場所につくりました。
○「長善寺」(田浦町2-42)
京急のガードを潜ると、旧浦賀道ぞいに「長善寺」があります。寺が開かれたのは永禄元年（1558）といわれ、開山は天正4年（1576）に亡くなった嘆蓮社讃誉長善（たんれんしゃさんよちょうぜん）といわれます。本尊は阿弥陀如来像。明治7年長善寺本堂に田浦学舎ができました（後の田浦小学校）。寺には、室町時代前期の地蔵菩薩像や古文書など貴重な文化財があります。また境内にある不動明王像は、三浦道寸の守り本尊で、落ち武者の菩提を弔うために安置したといわれています。ここは、浦賀道の難所・十三峠の山越えに備えるところでした。山門正面に、享保年間（1716〜36年）に祀られたというお地蔵さまがあり、浦賀街道を往来する旅人が「旅の安全」や「家内安全」を願ってお参りしたといいます。
【鈴木明仙句碑】
長善寺境内に、俳人鈴木明仙の次の句碑があります。
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明仙は本名を敬明という。山梨県の人で大正10年田浦町に移り住み、2代松竹庵の本田酔月について俳句をならい、松風軒明仙と号して昭和26年「松の華」という俳誌を創刊している。同じ年に3代松竹庵となり、昭和31年、58歳で亡くなった。次が辞世の句です。
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