横須賀市さんぽ「追浜町・雷神社から観音寺」
○「傍示堂の石塔群」(追浜本町1-1)
京急追浜駅から国道16号(浦賀道)を北に向かうと、右手に「傍示堂」(ほうじどう)があります。昔、地蔵様が祀られていた堂を傍示堂と呼んでいました。現在は、二組の六地蔵が祀られ、他の石仏は和田山が崩された際、山頂の道にあったものを集めて祀られました。
○「雷神社」(追浜本町1-9)
傍示堂から少し戻ると「雷(いかずち)神社」があります。地元では「かみなりさん」と親しまれています。雷神社の起源は自然に対する願い、特に雨乞いの祈りであったとされています。祭神は火雷命（ほのいかづちのみこと）。神体は束帯騎馬の像。社伝によれば、創建は承平元年（931）、鹽濱（しおはま、築島ともいう）に鎮座していました。天正9年（1581）、朝倉能登守が雷神社と改めこの地に移転したといわれています。一の鳥居と、二の鳥居の間を南北に走る道が浦賀道です。
【イチョウ】
ご神木でもあるイチョウの木は、樹齢400年を越す大木で、垂れ下がる乳頭は安産や子育ての信仰対象ともなっています。
○「法福寺」(追浜本町1-19)
雷神社の東南に「法福寺」の入口があります。法福寺の開山は文明11年（1497）4月8日、開基は田中伊豆守成隆です。本尊は日蓮聖人大曼荼羅。室町時代の祖師像や江戸初期の鬼子母神十羅刹女像を安置しています。墓地内には「たて穴やぐら」跡が残されています。
○「築島(雷神社旧跡)」(追浜本町3-26)
追浜駅から東に向かいすぐ右折すると「築島(雷神社旧跡)」があります。雷神社の奥の院でした。関東大震災までは大潮の満ち潮の際には、前を流れる鷹取川まで潮が満ち小島になりました。雷神社は天正9年（1581）、場所を北方に改め再興しました。
【柏槇(ジャビャクシン)の木】
約500年前、女性の生理は不浄とされ、迷信に惑わされてその時期は家族と離れ、島の掘立て小屋で過ごしました。永禄2年（1559）に落雷があり島の柏槇(ジャビャクシン)の木が黒こげになりました。その木は今も腐らずに残っています。その時居合わせた12人の女性たちが無傷で助かったのは奇跡として、雷神社が一時ここに祀られていました。
○「正光寺」(追浜町3-28)
築島(雷神社旧跡)の南に「正光寺」があります。創建は寛文元年（1661）頓誉上人によると伝えられていますが、頓誉上人は寛文9年に亡くなっています。本尊は阿弥陀如来で、像の高さ78�僉∩弩吃�（中国）の特色を表す貴重な仏像です。
○「自得寺」(追浜町3-24)
正光寺の東に「自得寺」があります。開山は応永元年（1394）、聞叟玄令和尚によります。本尊は聖観音。追浜では二番目に古い寺です。境内には、浦郷陣屋で海岸防備の任務に就いていた間に亡くなった、川越藩士のお墓が数基あります。
【十王座像】
本堂須弥壇裏に安置されている10体の「十王坐像」は、横須賀市指定重要文化財となっています。元は雷神社付近の地蔵堂に祭られていたものが、明治時代になってこちらに移転されたものです。像は10体ども寄木造彫眼で、像高約38cmの小像で、中国風の道服を着け憤怒相をとる坐像です。
○「豊海稲荷」(追浜東町3丁目)
自徳寺の東方に北から回り込むと、小さな「豊海稲荷」があります。祭神は倉稲魂神で、五穀豊穣・商売繁盛の神様ですが、かつては海に近かったことから豊漁を祈願していたと思われます。
○「磨崖五輪塔」(追浜東町3丁目)
稲荷社から奥の道を行くと、右側崖面の高さ約3mのところに、やぐらがあります。そこに摩崖五輪塔が3基残されています。南北朝時代〜室町時代に造られたと思われます。
○「鉞切遺跡(追浜運動公園)」(夏島町2)
さらに東へ夏島町に向かうと、追浜運動公園に「鉞切(なたきり)遺跡」があります。この遺跡は再三の発掘調査によって、古墳時代前期から後期にいたる集落跡から遺物が多く出土しました。特に注目すべきは、牛の頭を使った祭祀遺跡が発掘され、雨乞いなどに使われていたのではないかと推測されています。
○「烏帽子岩の碑」(夏島町)
東に向かい京急バス車庫の先を左折して、夏島貝塚通りを少し行くと右手、物流センターの先、日産自動車KK迫浜工場の一角に「烏帽子岩の碑」(昭和2年建立)があります。烏帽子岩は、埋め立て前には海中にありました。源頼朝が瀬戸明神に参拝の折、烏帽子に似ていることから名付けました。この烏帽子岩前の海浜に白砂の浜辺があり、「おっぱま」と称されこれが現在の地名になりました。
○「明治憲法記念碑」(夏島町)
さらに夏島貝塚通りを行くと、夏島貝塚の手前に「明治憲法記念碑」があります。明治憲法（大日本帝国憲法）の起草の中心である、伊藤博文の別荘が横須賀市の夏島にありました。その別荘の跡地にこの記念碑があり、後に別荘は大磯に移されました。
○「夏島貝塚」(夏島町)
「夏島貝塚」は、夏島町に所在する縄文時代早期・初期に属する最古級の貝塚です。第一貝塚と第二貝塚に分かれ、昭和47年1月27日、島全体が国の史跡に指定されました。貝塚のある夏島は、元来東京湾に浮かぶ島でしたが、大正時代に周辺が埋立てられ、三浦半島から突出した半島の一部となっています。「夏島」という名称の由来は、周辺に降雪があっても島に雪が積もらないことからといわれます。
○「貝山緑地」(浦郷町5丁目)
京急バス車庫まで戻り、左折すると「貝山緑地」があります。旧海軍が残した丘陵で、海軍航空隊発祥の地碑、海軍飛行予科練習生発祥の地碑などがあります。
【追浜浄化センター】
下水処理水の再利用施設である「トンボの王国」には、トンボ、メダカ、ザリガニなどが生息し、毎夏トンボフェスティバルが行われます。
○「範頼やぐら跡(岡村製作所)」(浦郷町5-2944)
貝山緑地から少し戻ると、左側に岡村製作所追浜事業所があります。この敷地内に18個の横穴がありました。この横穴群は古墳時代のお墓（墳墓窟）ですが、蒲冠者範頼の伝説があります。建久4年（1193）8月、範頼は兄頼朝に反逆の疑いをかけられて伊豆修善寺に押し込められます。梶原景時の急襲で暗殺されたとされる範頼は、兄の誤解を解こうとひそかに修善寺を逃れて榎戸港（横須賀市）に上陸したのです。付近に住む平兵衛は、落ち武者らしい範頼主従に同情し一行を案内して程近いこのやぐら（岡村製作所の敷地内）にかくまい、何かと世話をしておりました。やがてこのことが、鎌倉の間者に知られることになりついに襲われます。平兵衛は鉈をふるってこれを倒しますが、範頼はもはや逃れぬことを悟り、隣地の金沢室の木（横浜市）にある太寧寺（後に金沢区片吹に移転）に入り主従ともども自害したといわれます。明治30年頃、この伝説を聞いた劇作家竹柴其水は「蒲冠者」の戯曲を作り上げ、明治33、4年ごろ「鎌倉山蒲桜重咲」「蒲冠者後日聞書」「祖先輝光磨鉈切」などの外題で、花形役者であった市川左団次、市川権十郎らによって上演されています。
○「正禅寺」(浦郷町4-5)
岡村製作所の西方、道路を挟んで「正禅寺」があります。本尊は聖観音。室町幕府から戦国期にかけての時代に創設され、周辺にやぐらや五輪塔が散在しています。
【正禅寺の庚申塔】
山門右の通路に1基の庚申塔があります。
○「官修墓地(西南の役勇士墓)」(浦郷町3丁目)
南に向かい追浜トンネルの南口右手、深浦バス停手前に案内石標があります。石段を上ると、深浦湾を見下ろす鉈切山に「官修墓地」(西南の役勇士墓)があります。明治10年西南戦争当時の政府は、慰霊は招魂社(現靖国神社)で行い、その対象者は軍籍を問わず、戦地で銃弾・刀剣による死亡した者に限ったといいます。この追浜の官修墓地は、病死者の墓地です。西南戦争からの帰還船の中でコレラが発生し、故郷を目の前にして、はかなく病没して遺族が不明だった者の52基48名の墓石があります。当初、鉈切海辺の黒崎に埋葬しましたが、大正2年海軍航空隊拡張のため現在地に移葬されました。碑は昭和8年に建立され、「忠斛千秋義烈然萬古」とあります。
○「独園寺」(浦郷町3-42)
追浜トンネルから南に行くと、右手に「独園寺」があります。本尊は宝冠釈迦如来。境内にやぐらや五輪塔が多数祀られています。
【独園寺の庚申塔】
浦郷郵便局の手前、独園寺の入口に江戸中期以前の2基の古い庚申塔があります。
○「大国主社」(浦郷町3-41)
独園寺の西隣に「大国主社」があります。横須賀市追浜本町にある雷神社の兼務社のひとつです。
【深浦トンネル】(浦郷町〜追浜東町)
大国主社の西方に「深浦トンネル」があります。地元の発展の為に明治44年に掘られた由緒正しい明治隧道で、北部地区にある3本の古トンネルのひとつです。延長106m、幅5.8m。
○「榎戸湊(深浦湾)」(浦郷町3丁目)
浦郷町は、以前、榎戸（えのきど）という地名でした。以前は東京湾の３大港といわれたこの深浦港、陸上交通網の発達により現在は静かな港となっています。市のガイドに次のようにあります。
《鎌倉時代には鎌倉の外港として、江戸時代には相模湾側と江戸を結ぶ商港として栄えた。明治以後、横須賀製鉄所、更には軍港の整備拡充に伴い、金沢から横須賀への海上交通の要所として昭和初期に至る。国道31号線（昭和3年）、湘南電車（昭和5年）の開通以後、軍用港の一角を占めるに過ぎない存在になった。》
○「正観寺」(浦郷町2-79)
榎戸湊の近くに「正観寺」があります。天正年間(1573〜91年)の創建と伝えます。
【阿弥陀如来】
薬師如来とともに智証大師の作と伝えられ、開山称誉源公上人夢中感徳の霊仏であるといいます。爾来守護本尊仏として日夜尊崇し、諸国修行中も笈（物をいれ背負う箱）中に奉安して供養しました。ある日、三浦半島を一周された帰途、走水から榎戸港に上陸せられたところ、土地幽静（奥深くて物静か）で風光明媚であったので「之我が有縁の地なり、之我が往生の地なり」と終に笈を下ろして庵を結び、薬師如来を安置して朝夕供養しました。土地の人々もいつしかその徳に化せられ、厄除け、本尊薬師如来として崇拝するようになりました。今では榎戸薬師として親しまれています。
【正観寺の庚申塔】
山門手前の階段の右に2基の庚申塔があります。
【正観寺のやぐら群】
遺跡は深浦湾の西岸に位置し、正観寺がある丘陵の裾部にやぐらが２基開口していました。両やぐらとも後世の改変を受けており、あまり残りはよくありませんでした。１号やぐらの床面からは江戸時代の遺物が出土しており、近世まで床面の岩盤が露出していたと考えられます。
○「能永寺」(浦郷町2-83)
正観寺の西に「能永寺」があります。応永元年(1394)の開山で、一遍上人を宗祖とします。もとは浦の郷道場(現在の追浜本町)にありました。本尊は阿弥陀如来。本堂の裏山は縄文後期の市重要文化財指定の「榎戸貝塚の骨角器」と「十王図」の掛軸十一幅が保存されています。三浦地蔵尊第26番札所。
【しだれ梅】
天保14年(1843)に建てられた本堂の前には、「しだれ梅」の古木があります。
○「榎戸トンネル」(浦郷町3丁目〜浦郷町2丁目)
能永寺の北に「榎戸トンネル」があります。横須賀市北部にある浦郷町周辺のトンネルは古いものが多く、このトンネルは昭和8年に完成。後に軍事色が強くなると、この周辺には軍施設が多く建てられました。全長45.6m、幅8.1m。
○「八王子神社」(浦郷町1-90)
能永寺に戻り南東に向かうと、深浦湾の南に「八王子神社」があります。詳細不明。
○「光龍寺」(浦郷町1-22)
八王子神社の西に「光龍寺」があります。本尊は阿弥陀如来。経堂の建立と共に大蔵経四十巻が寄進されています。
○「観音寺」(追浜東町1-79)
正観寺の西の信号まで戻り、筒井トンネルへの道を左折して狭い坂道を上って行くと、「観音寺」があります。貞享4年(1687)の開創。本尊は十一面観世音。観音様は「坂中の観音」として古くから近隣の方からの信仰を集めています。江戸時代に観音さまを篤く信仰していた日本橋の豪商・鎌倉屋市左衛門が、日向国の山中で野宿をすると、｢有縁の地で多くの悩んでいる人を救うがよい。特に難産に苦しむ女性を救いなさい｣と夢のお告げを受けました。目を覚ますと枕元に観音さまがいらっしゃいました。海路にて江戸へ戻る途中、嵐にあった豪商は、深浦に漂着。この地が有縁の地と思い観音さまを祀り、多くの妊婦を難産から救ったそうです。三浦33観音第22番札所として知られ、四万六千日の開帳日には現在でもにぎわいます。昔は境内に桜の木がたくさん植えてあり、お花見で賑わい、大正の初期までは江戸大相撲もかかったそうです。
【観音寺下の庚申塔】
観音寺手前の三叉路に、鷹取石で造られた案内道標(剥離難読、正面に十一面観世音、左面に金沢道、右面に明治十年)が1基あり、その右上に3基の庚申塔があります。
【見漁台の埋蔵金伝説】
観音寺は、見漁台（きんぎょだい）と呼ばれる台地の南端に位置しており、ここからの風景は「浦郷八景」として、江戸時代に歌に詠まれました。この地には、後北条氏時代の追浜の領主・朝倉氏の城があったといわれており、浦郷一帯に語り継がれた歌「朝日さす 夕日輝く もろの木の下に 漆千杯 銭が十億万両」から、朝倉氏埋蔵金伝説があります。観音寺の丘陵地の、「朝日夕日に輝く場所」に朝倉氏が金銀を埋めたのではないかとされ、昭和初期に発掘したが発見されなかったと『田浦町誌』に記載されています。
【筒井トンネル】(追浜東町1丁目〜浦郷町2丁目)
観音寺下に筒井トンネルがあります。明治38年に完成した素掘のトンネルですが、昭和9年の改造ではトンネルの出入り口が急坂なので、勾配を緩やかにするため底面を掘り下げたそうです
○「平六トンネル」(追浜町2丁目〜追浜東町2丁目)
浦郷小学校裏(西方)に、「平六トンネル」があります。主に浦郷小学校通学用のトンネルで、幅 3m、高さ 2.5m、自転車バイクのみが通れる大きさです。直線で約100ｍ、さすがに照明がしっかりしていて明るいです。
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