横須賀市さんぽ「汐入・諏訪公園から子之神山」
○「徳寿院」(大滝町2-27)
京急横須賀中央駅の北に「徳寿院」があります。若松町交差点から左(西)側の商店街に入ると、左の三笠ビルに徳寿院の入口があります。豊川稲荷と呼んだほうがわかりやすいようで、扉を入ると徳寿院の境内で目の前には長い221段の階段が続きます。明治9年、愛知県の豊川稲荷（円福山妙厳寺）から祭神を分祀して建てられました。境内からは、横須賀の町並みが良く見えます。
【成田不動尊霊所】
徳寿院本堂の右奥に、由緒ある豊川稲荷別院ともいわれる「成田不動尊霊所」があります。三浦不動札所第4番札所。分霊所は、元は平坂途中にある現在の教会付近にありました。しかし、関東大震災の被害に遭い、こちらに祀られることとなりました。
【大勝利山】
徳寿院の左奥(西側)の竹林の山は、「大勝利山」と呼ばれています。現在はなにもありませんが、石段を上りきった左手に案内標柱が一本あるだけです。明治27・28年の日清戦争の勝利を記念して名付けられたといわれ、浦賀から移り住んだ坂東善兵衛が81歳の時、私財を投じて開拓した山です。大勝利山には、かつて茶店などもあり市民の憩いの場所だったといいます。その後、高射砲が置かれ、戦死者を祀る忠魂祀堂や北京籠城軍艦愛宕戦死者碑などがありましたが、現在、忠魂祀堂は光心寺(衣笠)に移され、愛宕戦死者碑は馬門山墓地(北久里浜)に移されました。
○「良長院」(緑が丘2)
大勝利山から北に下って行くと「良長院」があります。元は米軍基地内の泊浦（現在の泊町）にありました。開山堂に本尊の釈迦三尊像があり、横須賀市内唯一の鉄製の鉄仏です。長峰城城主・瀬尾重兵衛良長が創建したことにより、その名前から良長院となりました。境内には、横須賀の発展に努めた坂東善兵衛や、元横須賀市長の三上文太郎、岡本傳之助の墓があります。
【出世閻魔堂】
本堂の左脇に「出世閻魔堂」があり、中には閻魔様が鎮座しています。
【祇園観音 (震災記念観音)】
関東大震災の横死者追善供養のため大正14年建立された「震災記念観音」は、昭和25年に境内入口広場から現在の場所に移され、良長院の縁起にちなんで「祇園観音」と改称されました。
○「諏訪大神社」(緑が丘34)
良長院から西に向かうと、ヨゼフ病院のすぐ西隣に「諏訪大神社」があります。創建は康暦2年（1380）で、三浦氏の三浦貞宗が古谷山横須賀城（長峰城）の城口に当るこの地に、信州の諏訪大社より上下の両諏訪明神を勧請したことに始まります。神社前の坂は横須賀村といわれたころまで、浦賀道に通じる主要道路でした。
○「諏訪公園」(緑が丘)
諏訪大神社の境内右手から上って行くと、「諏訪公園」があります。東宮殿下（大正天皇）の御成婚を記念して、明治45年に住民の寄付によって開園されました。終戦前には高射砲が何基も取り付けられ、立入り禁止地区になっていました。この公園には戦前まで、横須賀製鉄所建造の功労者である小栗上野介とヴェルニーの胸像がありましたが、現在、汐入町のヴェルニー公園（旧臨海公園）に移されました。
【古谷山(八幡山)】
諏訪公園は、かつては「古谷山」（こややま）と呼ばれていました。その後、「八幡山」と呼ばれるようになりました。幕末の頃の安政元年（1854）、大津陣屋に入った熊本藩主細川越中守斉護が祀った八幡神社を、慶応2年（1866）にこの山に移して横須賀製鉄所の鎮護としました。これが八幡山の地名の由来です。のちに八幡神社は龍本寺に移され、現在は境内に肥後藩の名を刻む狛犬の台座が残っています。
【招魂塔】
公園内に、避雷針のような「招魂塔」があります。明治45年5月27日の海軍記念日に、横須賀海軍工廠工員の殉難者の慰霊のために建てられました。招魂塔は銅合金で作られましたが、戦後間もなくGHQの指示によって撤去されてしまい台座のみが残っています。
【頌徳碑】
第二代横須賀町長・江頭(えとう)正五郎の頌徳碑です。江頭正五郎は、明治13年頃から自由民権運動に参加し、相東社の結成に尽力しました。明治22年2月には後藤象二郎を浦賀に招き、乗誓寺で「三浦郡有志懇親会」の発起人ともなっています。
【動物愛護の碑】
公園には戦前、小さな動物園がありました。昔の人の話によると、シベリア出兵の際に持ち帰ってきたヒグマなどが飼われていました。ヒグマは3頭で、当時の子供たちには大人気でした。しかし、ヒグマは第二次世界大戦中の空襲の際に逃げ出しては危険だとの判断から、1944年頃に猟友会の人によって射殺されてしまいました。昭和60年6月、殺されたヒグマ、ペット、交通事故で死亡した動物の供養のために、動物愛護協会などによってこの碑が建てられました。
【明治天皇御駐碑】
公園内(緑ヶ丘中・高校の北側)に、「明治天皇御駐碑」があります。本町にある明治天皇行在所跡の石碑と同じ意味を持って建てられた石碑です。明治天皇は横須賀製鉄所視察のため、たびたび横須賀に訪れていました。それを記念して建てられた石碑です。
○「明治天皇行在所跡(横須賀幼稚園横)」(本町3丁目)
横須賀幼稚園の北、どぶ板通り商店街の北側の道路沿いに「明治天皇行在所跡」の入口を示す石碑があります。横須賀幼稚園に向かって石段を上ると、右手の公園内に「聖蹟」と書かれた石碑があり、これが明治天皇向山行在所跡になります。聖蹟の文字は海軍大将加藤寛治によるもので、石碑は昭和11年4月に建設されました。行幸の際の明治天皇の御料水は、聖ヨゼフ病院裏の井戸を使い、現在は「禁廷水」と刻まれています。この地は明治時代〜大正時代、向山海軍官舎があった場所で、横須賀製鉄所建設に尽力したヴェルニーも宿泊しました。向山という地名の由来は、横須賀製鉄所に向かう山であったことからこう呼ばれるようになりました。当時はもう少し道路側に鼻のように突き出ていました。
○「とぶ板通り商店街」(本町2丁目)
国道16号沿いに、京浜急行の汐入駅から米海軍横須賀基地あたりまで続く商店街一帯は、「どぶ板通り商店街」と呼ばれています。以前、この通りにはどぶ川があり、その上に厚い板を敷いてあったことから、大正時代からこのように呼ばれていたようです。戦後は横須賀に駐留した米軍の歓楽街として栄え、現在もアメリカの雰囲気を味わうことができる通りとして人気を呼んでいます。
○「延命地蔵」(本町3-11)
どぶ板通り商店街の汐入駅側に、「延命地蔵尊」があります。とても小さな地蔵堂ですが、たくさんのお地蔵様が祭られています。『新編相模国風土起稿』には、「良長院の末寺西往寺延命山と号す、本尊地蔵、これも宝永中（1704〜10年）門扇の建てるところなり」と記され、『三浦盛昌記』には、「汐留町に在り。朝夕、線香の煙絶えずここにも茶屋町の女どもが朝に夕に参詣している」と記されています。もとは現在の汐入小学校付近にあり、このあたり一帯は海に突き出した険しい地形で、交通路といえばわずかに山裾をぬって造られた細い道だけだったようです。そのため、この付近に下町と結ぶ素掘りのトンネルが造られました。しかし、トンネルが祖末で不完全なものだったことから、出水や地震などによってたびたび落盤事故を起こし、通行人からも多くの怪我人を出したといいます。そこで周辺の有志の発案によってトンネルの入り口に地蔵を祭り、通行の安全祈念をすることになりました。トンネルのそばに祭られたことから、洞ノ口地蔵（どうのくちじぞう）と呼ばれていました。横須賀市不入斗町に住んでいた直木賞作家・瑞穂驚（みずほみはる）が、この延命地蔵尊をこよなく愛し、�爐劼箸蠕鼎佞燭蠕鼎斑和�尊�瓩箸いΧ腓魃咾澆泙靴拭�
○「長光寺(子育地蔵尊)」(汐入町5-4)
京急汐入駅の南西に、汐入不動尊とも呼ばれる「長光寺」があります。長い階段を上りきると、崖にそびえ立つ本堂に辿り着きます。三浦不動尊札所第5番。
【大根加持】
この寺の一風変わった名物行事が「大根加持」で、ボケ封じや中風封じに御利益があるとのことです。毎年花の日に行われ、ほら貝の合図で始まり護摩を焚きます。本堂にはたくさんの大根が積まれ、大根を食べると厄除けに御利益があるとのことです。
【子育地蔵尊】
この寺は、地域では「子育地蔵尊」または「子授地蔵尊」と呼ばれ親しまれています。10年間も子宝に恵まれなかった人がお参りを重ね、2人の子供を授かったといいます。それを聞いた友人もお参りを重ね、双子が生まれたそうです。他にも子宝に恵まれた人がたくさんいるそうです。
○「子之神社」(汐入町4-54)
長光寺の南東に「子之神社」があります。祭神は大国主命で、承久2年（1220）の勧請といわれています。神社の造営は元和元年（1681）、現在は米軍基地になっている楠ヶ浦の沖にあった波島に建てられました。天正年間に波島にあった長源寺が汐入3丁目の現在地に移転し、子之神社も現在の汐入町2丁目の汐入港町変電所に移転しました。このあたりは、現在でも「子之神山」と呼ばれています。さらに明治31年、海軍施設拡張のため現在地へ移されました。
【八坂道】
子之神社の裏手の道は「八坂道」です。八坂道はかなり旧道の面影を残しており、汐入町２丁目の交番前の大久保モータースの脇（ここに幕末、八坂衛所が設けられていた）から、曲がりながら坂本6丁目を経て池上、衣笠方面に通じ、浦賀道の枝道にあたります。
○「御幸橋の親柱」(汐入町2丁目)
京急汐入駅まで戻ると、駅の北側、汐入郵便局前の交差点にボックス状のものの両側に「御幸橋」と刻まれた親柱が残っています。明治22年の横須賀線開通後、明治天皇が横須賀造船所の進水式に幾度か行幸されたとき、お通りになったので御幸橋の名前が付きました。橋といっても現在面影はまったくなく、親柱には「大正4年、御幸橋」と刻まれておりこの年に改修されたと思われます。それ以前は木製の橋だったようです。
○「ヴェルニー公園」(汐入町1-1)
汐入駅から北に向かうと「ヴェルニー公園」があります。幕末、横須賀製鉄所の建設と運営を手がけ、日本産業の近代化に貢献したフランス人技師フランソワ・レオンス・ヴェルニーの業績をたたえて名付けられた公園です。公園の園路や花壇は、フランス様式の庭園を模して作られています。園内に植えられた約2000本のバラは、フランスで育成された品種を中心に、各国の品種も織り交ぜています。横須賀湾を見れば、正面にはアメリカ海軍の潜水艦やイージス艦、フリゲート艦などの艦船を見ることができ、左側には海上自衛隊の護衛艦を見ることができます。かつてこの地域は水ヶ浦と呼ばれていました。明治時代初期に、横須賀が帝国海軍の本拠地となる海軍衣糧科、海軍需品庫などが次々と建設され、昭和3年に両者が合体して海軍軍需部となり田の浦に移転するまで、ここが海軍の艦船や陸上部隊への軍需品の供給基地となり、通りに面して商店・旅館・料亭などが建ち並びとてもにぎわっていました。
【正岡子規句碑】
公園の南東側に、軍艦○○の碑などと並んで「正岡子規句碑」があります。明治21年8月、正岡子規は夏期休暇を利用して友人と汽船で浦賀に着き、横須賀・鎌倉で遊びました。碑の句は、横須賀港内に連なる帆柱の印象を詠んだもので、句集『寒山落木』に収録されています。
【ヴェルニーと小栗上野介の胸像】
公園の中央に「ヴェルニーと小栗上野介の胸像」があります。フランソワ・レオン・ヴェルニー（1837〜1908年）は、フランス人の造船技師で、海軍の増強を目指した徳川幕府の要請によって、横須賀製鉄所建設の責任者として1865年に来日しました。明治維新後も引き続き、建設と運営の任務に当たり、観音崎灯台、走水の水道、レンガの製造、製鉄所内の技術学校を設け、日本人技術者の養成に努めるなど、造船以外の分野でも広く活躍し、1876年に帰国しました。
小栗上野介忠順（ただまさ、1827〜68年）は、日本初の遣米使節をつとめ、外国奉行、勘定奉行など、徳川幕府末期の要職を歴任し、フランスの支援のもとに横須賀製鉄所（造船所）建設を推進しました。軍政の改革、フランス語学校の設立など、日本の近代化に大きく貢献しましたが、大政奉還後に徹底抗戦を主張したため役職を解か、領地の上野国権田村（ごんだむら、現群馬県倉渕村）で官軍によって斬首されました。
【逸見波止場衛門(旧軍港逸見門)】
公園の北西に「逸見波止場衛門」(旧軍港逸見門)があります。旧横須賀軍港逸見門の衛兵が詰めて番をしていたところで、左右二棟あり、左側には「逸見上陸場」、右側には「軍港逸見門」と書かれた表札がついています。建築年代は、明治時代末〜大正時代初期と考えられています。
○「子之神山(通称軍艦山)」(汐入町2丁目)
京急汐入駅まで戻り、汐入郵便局左手から「浦賀道」を西に階段を上って行くと、左手に「万蔵寺」、東京電力子ノ神開閉所の奥に「子之神山」(通称軍艦山)があります。子ノ神開閉所の手前に、「海軍用地」の標柱があります。
【万蔵寺】(汐入町2-23)
長い階段を上り、崖淵を行くと、「うらが道」の道標の左側に「万蔵寺」の入口があります。万蔵寺の境内は、手前に墓地がありその一番奥に本堂が建っています。境内には地蔵や仏像などが多いです。
【子之神社旧地】
子ノ神山付近に明治17年、子ノ神社が楠ヶ浦から移動してきて、その後に東京電力子ノ神開閉所となります。子ノ神社は、現在の位置(汐入町4-54)に移動しています。
【浦賀道】
浦賀道は、東京電力子ノ神開閉所を右下に見て左へ上って行きます。坂上が子之神山(通称軍艦山)になります。さらに進むと汐入町5丁目に入り「牛ころし谷戸」へ通じる道へ出ます。明治時代に汐入5丁目に牛のと殺場があったようです。
○「桜山(別名見晴山)」(汐入町1丁目)
子之神山から、細い路地の浦賀道を西に向かうと丁字路に出ます。ここを右折して直進するとまた丁字路(うらが道道標あり)になります。ここを右に行くと「桜山」(別名見晴山)があり、横須賀湾岸の施設が一望できます。『吾妻鏡』によると、健保3年(1215)3月源実朝が北条泰時や大江広元を従え、三浦横須賀に桜見物に遊び、三浦義村がその接待役にあたったとありますが、それがこの桜山であろうといわれています。これが史書に横須賀の名が登場した最初で、それ以前は横州と呼んでいました。戦時中、山頂は立入禁止で、軍港を眺めようものならスパイ容疑で逮捕されたといいます。
【吾妻島】
桜山からは「吾妻島」がよく見えます。この島は、自衛艦隊司令部がある長浦港と米海軍第7艦隊基地がある横須賀本港を隔てていて、現在全島が米海軍の吾妻倉庫地区に属しているため一般人は原則立ち入ることができません。元は岬（箱崎半島）でしたが、明治22年に基部に水路が開削されたことで島となりました。
○「逸見子育地蔵尊」(東逸見町1-10)
桜山から丁字路までに戻り、浦賀道をしばらく行って左に下ると、すぐ左崖に「逸見子育地蔵尊」があります。稲荷山の名は、昔、汐入と逸見の境に稲荷が祭られていたことに由来しますが、その稲荷はJR横須賀駅裏の国道沿いのホンダモーターわきの防空壕跡に移っています。子育地蔵の由来は、江戸時代の元禄年間に往来する子供連れの旅人16人が、飢えと疲労のためこの辺りで死亡しました。哀れんだ村人が、めい福を祈って祀ったといいます。江戸時代、山越えの浦賀道はさぞ難所であったことでしょう。
【山王大日神社】(東逸見町1-48)
逸見子育地蔵尊の南に「山王大日神社」があります。祭神は天照大神。
【逸見町のあゆみ】
三浦半島を縦貫する浦賀道の中継地であった逸見は、徳川家康が三浦安針に所領を与えたように、幕府要衝の地でもありました。慶応元年(1865)、横須賀製鉄所建設のため逸見湾3万坪を埋め立てました。当時の逸見村は、戸数80戸で半農半漁の寒村でした。工事の進展とともに人口が集中し、明治9年には水兵屯所ができ、明治22年には大船までの鉄道も開通し、製鉄所は東洋一の造船所に躍進していきました。それとともに、逸見町は明治41年には戸数1871戸となり、軍港の玄関の町として発展していきました。
【逸見旅館跡】(東逸見町1-27)
汀橋交差点近く、稲荷山への道(浦賀道)の入口に「逸見旅館」がありました。明治初期に開業し、昭和初期からは官納業の許可を得て、大晦日には餅や松飾りを横須賀港に停泊中の軍艦に納めました。太平洋戦争時には、海兵団入隊の親子が最後の一夜を過ごし大変賑わったといいます。旅館は平成22年に取り壊されました。
○「鹿島神社」(西逸見町2-70)
京急逸見駅の西方に「鹿島神社」があります。応永17年（1410）4月、三浦遠江守が勧請しました。常陸国官弊大社鹿島神宮の分霊を奉斎しています。もともと、JR横須賀駅の裏手の海上自衛隊の横須賀総監部あたり(鹿島崎)にありました。しかし、明治24年に火事で焼失し、明治29年に海軍用地となってしまったため、現在地に移転しました。寛永13年(1636)に三浦安針が社殿を建てたということですが、元和6年(1620)に亡くなっているので子供の二代目安針が建てたのだろうといわれています。神社周辺が、安針の逸見屋敷跡という説がありますが定かではありません。右手社務所の裏山に、横須賀市の二代目市長鈴木福松の家があり、俗称「お山の大将」と呼ばれていたそうです。また、近くに初代の海軍軍楽隊長であり、「君が代」の制定にも貢献した中村祐庸（すけつね）が住んでいました。
【社殿の彫刻】
社殿の彫刻は、西叶神社の社殿を彫刻した後藤利兵衛の門人・後藤喜三郎の作品です。
○「浄土寺」(西逸見町1-11)
鹿島神社の北に「浄土寺」があります。本尊は阿弥陀如来。三浦33観音20番札所。創建は鎌倉時代初期、武将の畠山重忠と伝えられています。もとは、浄善寺と称していましたが、文明年間(1469〜87年)11世文覚の時、蓮如上人に帰依し浄土真宗に改めました。唐金製の観音菩薩があり、三浦安針の守護物であったといわれており、安針が寄進したものだそうです。また、安針ゆかりの品として什宝の貝多羅葉１枚が伝えられています。ともに、シャム(現タイ)の国から渡来した物だそうです。安針の菩提寺になっていました。この寺西方に、通称「ブドウ畑」と呼ばれる場所があり、そこに安針の屋敷があったと伝えられていますが定かではありません。明治6年に逸見小学校はこの本堂で誕生し、作家中里介山が在学していました。
【梵鐘】
第二次大戦中供出されていて、戦後はアメリカに持ち出されてしまいました。その後、アトランタの公園にあることがわかり、昭和36年に返還され元のお寺に戻ってきました。三浦半島では数少ない、江戸時代の貴重な梵鐘の１つです。
○「浄栄寺」(吉倉町1-30)
京急安針塚駅の東方に「浄栄寺」があります。鎌倉時代初頭、源範頼（源頼朝の弟で義経の兄＝蒲三河守）の一族によって創建されました。
【わがままなお地蔵さん】
次の伝説があります。
《昔、田浦（横須賀市）に住んでいた農夫が或る日、畑を耕しているとクワの先に何かが当った。掘り出してみると地蔵だった。農夫は自分の家の菩提寺である吉倉（横須賀市）の浄栄寺に運んでおいてもらった。ところがその夜、寺僧の夢に地蔵が現れて、この寺ではなく隣の寺に祀ってくれるようにとお告げがあった。目覚めた寺僧は暗い夜道を、地蔵を抱えて隣の田浦へ向かった。同じ夜、田浦の常光寺の寺僧の夢にも地蔵が現れて、地蔵をこの寺に祀るようにとお告げがあった。寺僧は暗い夜道をさっそく迎えるために隣の吉倉へと向かった。二人の寺僧は吉倉と田浦の境でちょうど出会ったので、夢の話を語り合い霊夢の不思議さに驚いた。それからずっと地蔵は田浦の常光寺に祀られ、村人から尊ばれたという。》
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