横須賀市さんぽ「衣笠町・衣笠城跡から満願寺」
○「大松寺」(小矢部3-13)
JR衣笠駅の南東に「大松寺」があります。参道入口には六地蔵がならび、その隣には「三浦地蔵札所第1番」の石柱があります。寺伝によれば源頼朝の家臣・稲毛重政が開基で、天文2年（1533）古敷谷豊前種次が中興し、その後、金沢釜利谷（横浜）禅林寺八世無禅師を開山に迎えたと伝えられます。堂内正面には本尊釈迦如来を安置し、左脇間には道元禅師一代記を画いた八双屏風があります。
【洛中洛外図】
「洛中洛外図」六曲一双の屏風絵は、およそ250年以前の元禄時代から徳川初期頃の作品といわれています。これは京都の風俗と四季の景観を通じて、左京と右京に分け土佐絵風に画いたもので格中格外と呼ばれる一連の屏風絵です。
【龍崎ヒサ先生の墓】
墓地に「龍崎ヒサ先生の墓」があります。昭和17年11月19日、横須賀市立田戸国民学校訓導(教師のこと)の龍崎ヒサ先生は、教え子を救うために身代わりになりました。横須賀中央公園に近い田戸小学校に、「龍崎訓導顕彰之碑」があります。
【大松寺林】
寺域の斜面に「大松寺林」が残されており、三浦半島の潜在自然植生の構成種群からなる郷土林の姿を示しています。
【大松寺の庚申塔】
本堂の左側の崖上「永代供養 萬年の里」の裏の木の下に、14基の庚申塔があります。
○「衣笠神社」(小矢部4-1202)
バス道路に出て西に上って行くと、衣笠山公園入口に「衣笠神社」があります。旧衣笠村にあった各字にあった鎮守が、1村1社の政府命令により大正2年合併されたもので、社殿は明治26年造営の小矢部にあった熊野社のものが移され、境内の鳥居なども他の神社から移されたといいます。
○「衣笠山公園」(小矢部4-922)
「衣笠山公園」は、桜の名所としてサクラ日本100選に選ばれています。明治40年に、日露戦争の戦死者を慰霊するために記念碑が建てられ、桜が植えられました。今では約2000本になり、春の「衣笠さくら祭」は大勢の人でにぎわいます。また、秋にはハギが見ごろになります。展望台の屋上には衣笠聖観世音の祠があり、周りには金網が張り巡らされていて赴きは今ひとつですが、横須賀の街や東京湾を一望できます。この公園は、三浦半島の最高峰大楠山（242ｍ）に至るハイキングコースの、東側玄関口になっています。
【芭蕉句碑】
桜の名所衣笠山公園に萩の名所を新たに加えるべく、「芭蕉句碑」が建てられました。
�爐靴蚣�も こぼさぬ萩の うねり哉 はせを(芭蕉)��
【忠犬タマ公の碑】
広場に「忠犬タマ公の碑」があり、次の説明があります。
《忠犬タマ公は、新潟県中蒲原郡村松町（旧川内村）に住む刈田吉太郎氏の飼犬であるが、昭和9年2月5日と同11年1月10日の二度にわたり、狩猟にでた主人達が雪崩により遭難した際、必死に雪を堀おこし主人達を救出した。この二度にわたるタマの功績は、当時の新潟新聞に掲載され礼賛されたほか、「忠犬タマ公を語る座談会」としてラジオにより全国放送された。この忠犬タマ公の美談は横須賀市に在住する新潟県出身の退役海軍将兵で組織している互立会の知るところとなり、また郷里における美談に感激した互立会の一員が、新潟県村松町に住む刈田吉太郎氏宅に赴き、タマ公が寝起きしている場所の土を貰い受けてきたのを契機に、この土をゆかりとし、横須賀市に在住する新潟県出身の将兵達に末永くタマ公の美談を伝え残すため、互立会の手によって建立されたものと推測される。この碑は、昭和11年9月23日衣笠山公園裏道入口付近、現在の枡沢磋氏宅地内に建立され、 枡沢貞子氏が今日まで長い間管理していたものを移したものである。また、この碑の忠犬タマ公の碑の文字は、逓信大臣第13代横須賀市長を歴任された小泉又次郎先生の筆によるものである。》
○「衣笠城跡」(衣笠町1153)
衣笠山公園の展望台の横から「衣笠城跡」への道を下って行き、道路を横切り三浦縦貫道路入口の右横の階段を上ります。かつてここに、平安時代から鎌倉時代にかけて三浦半島に勢力を張った三浦一族の本城がありました。城といっても石垣もなければ堀もない中世の山城で、自然を上手に利用し、深山川・大谷戸川が堀の役目をしていたと考えられています。三浦一族は、桓武平氏の子孫・村岡為通が源頼義に従い前九年合戦（1051〜62年）に参戦し、その恩賞として与えられた所領の地名を氏とし、三浦為通を名乗ったのが始まりと伝えられています。為通は所領の中心・衣笠に城を築きました。これが衣笠城です。衣笠城を有名にしたのは、治承4年（1180）の衣笠合戦です。その後、宝治元年（1247）に三浦氏は鎌倉で滅ぼされてしまいます。
【物見岩】
尾根道を上って行くと、第一の平場と呼ばれる開けた場所「本丸跡」に出ます。かつてここには金峯蔵王権現堂がありましたが、現在は碑のみが残されています。平場の奥に進むと「物見岩」と呼ばれる巨岩があります。残念ですが、展望は期待できません。衣笠合戦の時、城主義明はこの岩の上から戦闘状態を確認し指揮をとったといわれています。大正8年に行われた史跡整備の際、磁器の水差しや刀剣・経筒などが物見岩の下から発見されました。
【大善寺】
階段を下ると、左手に「大善寺」があります。説明板によると、天平元年（728）諸国行脚中の行基が、この山に金峯蔵王権現と自ら彫刻した不動明王を祀り、その別当として建てたのが大善寺の起源といいます。本尊は室町時代作と伝える箭取(やとり)不動。ここには重要文化財の阿弥陀三尊像が安置されています。
【大善寺の庚申塔】
大善寺の石段を下ると右手高台に、14基の庚申塔が並んでいます。
【不動の滝(井)】
大善寺の下に「不動の滝(井)」といわれる水場があります。説明板によると、「天平のころ、行基がおはらいの水に困り杖で大地をたたいたところ、こんこんと水が湧き出した」という伝説が伝えられています。この水は、衣笠城の生活用水や戦闘用水として用いられたと考えられ、関東大震災までは泉の水は坂の下まであふれ出ていたといわれています。
【搦手口】
不動の滝から、大善寺への階段を通り越して大楠ハイキングコースを進むと、切り通しの道になります。この周辺は衣笠城の西木戸裏口にあたり、馬一頭がやっと通ったであろう小道が続きます。衣笠合戦の折に和田義盛・金田頼次（義明の娘婿）ら150騎が守り、攻めたのは平氏方副将畠山重忠等1,000余騎と伝えられています。搦手口から南の平地は兵の訓練を行った練武場跡、周辺には土塁跡が残り、急坂を下った処に水喰い井戸（馬喰い井戸）や堀口が残っています。上手の平地には馬屋があったといわれています。
【馬返しの坂】
不動の滝まで戻り大手口へと下ると、追手口より本城に向かう急な坂道を「馬返しの坂」といいます。急坂に馬も引き返したくなるという意味でしょうか。急坂の左手には、比較的新しい石垣が数段あります。衣笠城は全体をひな壇式に切り開いたといわれ、この石垣がかつての切り岸（山裾を切り急な崖にする）の名残と思われます。
【咳地蔵】
大きな道路に出る手前、大手口に「咳地蔵」があります。衣笠合戦のさなか、平家方の武将金子家忠を和田義盛が弓で射倒しました。三浦与一は、その首を取ろうと駆け出しますが、それを阻もうとする金子与一（曽我十郎の弟、諸説あり）と、二人「与一」の一騎打ちとなりました。強力で知られた三浦与一が金子与一を組み伏せた時、三浦方の味方が手助けをしようと「三浦与一殿は上か下か」と呼びかけました。応じようとする三浦与一ですが、風邪のために即座に声が出ず「おっおっおっ」と咳き込んだその隙に、あえなく最期を遂げたといわれています。三浦与一が風邪を引いていなければ命を落とすことはなかったと、その後、ここにお地蔵さんが祭られました。このお地蔵さんは咳に効くといわれ咳地蔵と呼ばれるようになりました。
【衣笠城追手口遺址の石柱】
横浜横須賀道路の衣笠インター入口付近に、歩道と石垣に挟まれて「衣笠城追手口遺址」と書かれた小さな石柱があります。気を付けないと見過ごしてしまいそうな小さな石柱です。
【姓名塚(太刀塚)】
衣笠城跡バス停に出る手前に「姓名塚」があります。道路脇に見落としてしまいそうな小さい碑があり、碑の横を上ると塚があります。ここは慈眼寺跡で、治承4年（1180）畠山次郎重忠が、衣笠合戦で討ち死にした敵味方の遺骨を納め、武具とともに埋葬したと伝えられています。また、このあたりから刀剣等が発掘されたことで別名「太刀塚」とも呼ばれています。
【矢竹】
衣笠城跡バス停付近に竹藪があります。節間が長く茎の断面が真円に近い竹で、和弓の矢の材料に使われることから「矢竹」と呼ばれています。このあたりの地名を「大矢部」といいますが、矢部という地名は九州など方々にあり、いずれも矢を作る職業人が住んでいたことから地名が付いたとされています。横須賀市内の矢部（大矢部・小矢部）の地名も、「昔、矢竹を貢物にしたのに由る」と伝えられています。
○「磨崖仏」(大矢部1-2)
衣笠城跡バス停から東に向かい、満昌寺の手前の坂を左折して上っていくと、ゴルフ練習場の手前にあるのが「磨崖仏」です。この磨崖仏は、満昌寺北側の丘陵山腹に彫られたもので、西向きの岩肌に合計三面あります。そのうち二面に仏像が、他の一面に直線的な溝が掘られています。左側の面には、直径20cmの円内に蓮華座に坐した7隊の仏像が並んでいます。中央の面には、高さ40cmの阿弥陀尿来立像一体が線刻されています。
○「満昌寺」(大矢部1-5)
バス道路を進むと左側に「満昌寺」があります。満昌寺は、衣笠城で討死にした三浦大介義明の追善のために、建久5年（1194）に源頼朝が創建したといいます。神社には、木造の三浦義明坐像が祀られており、鎌倉時代末期の制作と推定されています。
【御霊神社】
境内左奥には、建暦2年（1212）和田義盛が建立したと伝える「御霊神社」があります。
【三浦義明の廟所】
御霊神社には三浦義明の廟所があり、次の説明があります。
《三浦義明は、治承4年（1180）源頼朝の旗揚げに呼応し平氏と合戦し、 8月27日に衣笠城で討死したといわれています。 満昌寺境内、御霊神社裏手の瓦塀で囲まれているところが、三浦義明の廟所と伝えられています。 廟所には宝筺印塔を中心に、右側に五輪塔、左側に板碑（観音種子）の三基が並び置かれています。 廟所内手前の石灯籠は、江戸時代に義明の子孫が奉献したものです。 三浦氏の墓城は五輪塔を中心としたものが多いのですが、伝三浦義明廟所では宝筺印塔が義明、 五輪塔が義明の妻の供養塔と考えられています。》
【満昌寺の庚申塔】
満昌寺の山門の左側に15基の庚申塔があります。
○「近殿神社」(大矢部1-9)
満昌寺の東方の丘の裾に「近殿(ちかた)神社」があります。説明板によると、ここ大矢部には数々の神社がありましたが、大正２年の一村一社という国の指令により衣笠神社に合祀され、第二次大戦後この神社をふくめ元の境内地に遷宮されたものといいます。
【三浦義澄の墓(薬王寺旧跡)】
近殿神社の外側に、薬王寺旧跡へ140ｍという道標があります。その先のコンクリート崖下に説明版と石塔が並んでいる一画があります。ここが「薬王寺旧跡」で三浦義澄の墓があります。薬王寺は、建暦２年（1212）鎌倉幕府の別当であった和田義盛が父・三浦義宗や叔父・義澄の菩提を弔うために創建したものといいます。明治9年ごろ廃寺となり、本堂は大正初めに消失、ここより東南の位置にあったといいます。中央の方形の石が３つ重なっている石塔が三浦義澄の墓と伝えられています。
【駒繋石】
南東に進むと薬王寺旧跡の入口に、「駒繋(こまつなぎ)石」があります。手綱をつないだところに磨り減った跡の見え、小さな碑には「薬王寺山門駒繋石」の文字が刻まれています。
○「清雲寺」(大矢部5-9)
近殿神社の南方に「清雲寺」があります。清雲寺は、三浦義継が父・為継の供養のために長治元年（1104）に建立しました。木造観世音菩薩坐像、地蔵菩薩坐像、木造毘沙門天立像などがあります。また、本堂裏手の墓地に三浦氏三代の墓もあります。
【三浦氏三代の墓】
現在、三浦氏三代の墓が祀られていますが、清雲寺にはもともと第二代為継と伝える五輪塔が存在しました。付近の「円通寺跡やぐら群」から一代目為通、三代目義継の墓と伝えられる五輪塔が移転されました。円通寺は、第一代為通が開基とされ、清雲寺北東数百ｍの付近にあったと思われ、江戸時代に廃寺となりました。昭和14年旧海軍弾薬庫設置のため、付近のやぐら群（深谷やぐら群）から板碑や石塔類が移転されました。廟所は本堂の後ろ側の一画にありますが、中央の五輪塔が為継（二代）のもので、左右の五輪塔は、どちらが為通、義継のものかは不明です。
【芥川龍之介と清雲寺】
芥川龍之介がこの地の景観を好み、亡くなる前に一人で境内を訪れていたといいます。
【清雲寺の庚申塔】
清雲寺山門へ登る階段の右の傾斜地に、地蔵尊と並んで庚申塔が1基あります。
○「腹切松公園」(大矢部5-19)
清雲寺から西に200ｍほどのところ（バス道路の南100ｍほど）に、「腹切松公園」という小さな公園があります。公園の一角に、新しく植えられた若い松の木と「三浦大介討死之処」の石碑が立ち、説明版があります。説明版によれば、衣笠城合戦で89歳の義明は、一族を房総に逃がしたあと衣笠城の落城とともに討死しましたが、他の言い伝えによれば、祖先の霊の眠る円通寺(大矢部2丁目の海上自衛隊大矢部倉庫構内にあった)を望むこのあたりの松の木の下で自害したといいます。
○「満願寺」(岩戸1-4)
腹切松公園から東方の道路を右折しすぐ左折して道なりに進み、横浜横須賀道路を潜って石段を上って行くと大矢部4丁目公園の前に出ます。公園先の大矢部4丁目町内会館横の石段のある細い山道を下って行くと、左側に「佐原十郎義連廟所」と刻まれた石柱が建つ「満願寺」があります。開山は大達明岩正因、開基は三浦義明の末子・佐原十郎義連（よしつら）が建立したといわれます。十郎義連は『平家物語』に登場し、義経に従い一ノ谷のひよどり越えで手柄を立てた勇者です。文治5年（1189）奥州遠征に従い、建久3年（1192）源頼朝上洛に従い左衛門尉に任ぜられ、頼朝や北条家からの信頼が厚かったといいます。
【木造地蔵菩薩立像】
本堂左の石段の先に観音堂があり観音菩薩や地蔵菩薩、不動明王などが安置されていましたが、今は収蔵庫に移設されたといいます。そのうち観音像といわれる木造地蔵菩薩立像は、義連が平家追討に赴くときに、自分の姿を、仏師運慶に彫らせたと伝えられますが、実際には運慶の流れをくむ鎌倉仏師の作といわれます。
【佐原義連の墓】
観音堂の右手には、「佐原義連の墓」と伝えられる五輪塔があります。義連は、衣笠城の東南の佐原を領したことから佐原姓を名乗りました。その後の宝治合戦で三浦氏は滅びますが、佐原義連の孫である盛時などの兄弟は北条氏に味方したため、三浦介を名乗ることが許されました。鎌倉幕府滅亡時の中先代の乱では北条時行に属しましたが、その後足利尊氏に従って勲功があり、以後相模守護として勢力をのばしました。しかし、永正13年（1516）新井城の合戦で、三浦義同（よしあつ=道寸）、義意（よしおき）の父子が、北条早雲に滅ぼされ、三浦一族は滅亡しました。
【芭蕉句碑】
観音堂下に「芭蕉句碑」があります。
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慶応2年（1866）に建立。江戸幕府末期の幕末時に浦賀奉行所与力で俳人でもあった、中島三郎助の筆による句碑です。中島三郎助は、黒船来航時には与力として活躍し、その後、榎本武揚らと行動をともにし、函館の五稜郭で討ち死にしました。
○「熊野神社」(岩戸1-4)
満願寺の東方に「熊野神社」があります。宝永元年（1704）のころに、熊野三社権現が勧請され創建されたと言われています。水運、漁業に関連があるらしいので、この近くまで海が迫っていたということのようです。平作川の河口だったのかもしれません。
【熊野神社の庚申塔】
熊野神社境内の社殿の裏の急斜面に1基の庚申塔があります。
【伝巴御前の墓】
熊野神社の東方、民家(山崎良雄宅)の敷地を通って畑の上に五輪塔「伝巴御前の墓」があります。現在、民家では迷惑とのことで立入禁止にしています。巴御前は源義仲（木曽義仲）の妾で義仲の平氏討伐に従軍し、源平合戦で戦う大力と強弓の女武者なのです。宇治川の戦いで敗れ、落ち延びる義仲に従い最後の七騎、五騎になっても討たれなかったといいます。落ち延びた後に、源頼朝から鎌倉へ、和田義盛の妻となって朝比奈義秀を生んでいます。五輪塔は2基あり、もう1基は夫義盛のものでしょうか。和田の乱で義盛が滅びると、巴御前は尼となりこの近くで庵を結んだとも、また越湖に下り91歳で長寿を全うしたともいわれています。伝えられる墓は、佐原1丁目の荻原宅裏にもあるといいます。
【満願寺入口の庚申塔】
満願寺入口信号の近くで、野比方面に上がる坂の手前左に1基の庚申塔があります。
【岩戸1-14の庚申塔】
県道27号線（横須賀葉山線）を佐原から野比方面に行くと、岩戸１丁目のスタンド脇の道路左側に8基の庚申塔があります。
○「正覚寺」(佐原3-17)
佐原インターの出口に「正覚寺」があります。創建は1446年。
○「聖徳院」(佐原3-7)
正覚寺の北東に「聖徳院」があります。詳細不明。
【佐原城跡】
聖徳院から南東に上って行くと「佐原城跡」があります。比較的大きな自然石の石碑と説明版が立っており、石碑には「佐原十郎義連城跡」「明治26年9月8日 佐原里民建之」と刻まれています。佐原城は、三浦氏の庶流佐原十郎義連の居城です。義連は三浦義明の末子で、19歳で源平合戦に参加し、一ノ谷の鵯越では一番乗りの手柄を立てた勇者で、弓の名手でもありました。義連の子・盛時は、宝治合戦の際に北条方に付いたため三浦氏滅亡後にその名跡を継ぐこととなりました。しかし、三浦氏の広大な領地は削られて三浦半島南部に限られてしまい、佐原城は廃城となりました。佐原城は、南から北に突き出た半島状台地の上に築かれた城で、かつては入江が深く入り込み台地の麓まで海原が広がっていました。入江の対岸にあった怒田城と共に、三浦氏の本城衣笠城の東面を防衛していたと考えられます。現在佐原城のあった台地上は、畑や駐車場となっており明確な遺構は残っていません。
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