横須賀市さんぽ「大津・天神坂から安房口神社(古東海道を歩く)」
○「馬門山墓地」(根岸町1-27)
京急北久里浜駅から北に向かうと、根岸町の丘の上に公営墓地「馬門山(まもんざん)墓地」があります。明治15年に海軍省により戦死もしくは殉死した軍人のために設けられ、279柱の個人墓のほか軍艦「愛宕」戦死者や上海事変戦死者などの慰霊碑が建立されています。戦後市営墓地となり、毎年5月には墓前祭が行われています。一部を市民墓地として分譲し、管理されています。
【馬門山墓地下の庚申塔】(根岸町1-1)
馬門山墓地の北西下、コンビニの裏手に15基の庚申塔があります。享保9年(1724)から昭和47年までに建てられた塔があります。
○「新大津駅第2踏切の庚申塔」(大津町4-1)
新大津駅第2踏切の近くに19基の庚申塔があります。天和元年（1681）の風化したものから大正元年(1912)の青面金剛の刻像塔があります。
○「市営岩瀬アパート前の庚申塔」(根岸町5-25)
根岸小学校の西、市営岩瀬アパートの前に17基の庚申塔があります。
○「天神坂の庚申塔」(大津町5-9)
根岸小学校の北、大津5丁目町内会館の裏に天神社がありましたが、関東大震災後、大正13年に諏訪神社に合祀され、会館前に境内にあった狛犬、手洗い鉢、笠付型庚申塔、地蔵が残されています。その中に庚申塔は2 基あり、延宝6年（1678）と元文5年（1740）年の銘があります。この天神坂は相当に古い道(古東海道)のようで、行き倒れた人のお墓ではないかといわれています。
【天神坂(古東海道)】
大津町5丁目から三春町5丁目へ抜ける坂は「天神坂」と呼ばれ、この坂道は「古東海道」になります。坂の途中にあった天神社からその名がつけられました。日本武尊の東征伝説にかかわる道は古東海道と呼ばれ、三浦半島を横切り、走水から舟で上総（千葉）に渡り北上するルートと推定されています。横須賀市内では衣笠の曹源寺、大津の天神坂を越えて安房口神社、浦賀、小原台、走水という道順であると考えられています。
【愛染稲荷神社】(根岸町5-27)
大津5丁目町内会館の前の道を、道標に従って上って行くと「愛染稲荷神社」があります。眺めのいい場所にあります。天神坂付近に住んでいた七兵衛という人が、稲の豊作を願って、江戸加賀町愛染寺の許し状を受け、文化14年(1817)に建立しました。祠の裏にはクロガネモチの巨木がそびえています。
○「泉福寺」(三春町5-13)
堀之内駅の南に「泉福寺」があります。開山は応永6年（1399）、成光坊日進上人によります。大正2年の関東大震災によって寺は全壊し、伝えられていた縁起にかんするもの、古文書、寺宝など一切が火災で灰になってしまいました。
【毘沙門堂】
境内にある毘沙門堂は、昭和29年に馬堀の白山神社の社殿を移築したものです。堂宇の龍の彫刻は後藤喜三郎の作と伝えられ、後藤喜三郎は西浦賀にある西の叶神社の彫刻を手がけた後藤利兵衛の弟子で房総の人です。堂内に安置されている毘沙門天像は、大津陣屋にいた熊本藩士の守護仏だったのをここに納めたものといわれています。
【泉福寺の庚申塔】
本堂の真裏、高台墓地の奥隅に2基の庚申塔があります。
【金堀トンネル上の庚申塔】(三春町５丁目)
泉福寺の南にある金堀トンネルの真上、京急堀の内駅の方へ下る階段上に石像が３基あり、真ん中の１基だけが庚申塔と確認できます。
○「春日神社」(三春町3-33)
堀之内駅の北に「春日神社」があります。元は猿島にありましたが、軍用地になったために明治17年に拝殿を現在地に移転し、本殿は猿島になります。かつては猿島のことを十嶋（としま）と呼んでいたので、神社の名前も十嶋大明神と呼ばれ公郷地区の総鎮守となっていました。18世紀始めごろから、春日神社と呼ばれるようになりました。
○「了正寺」(三春町3-28)
春日神社の東に「了正寺」があります。寺の名前が、海潮寺→了照寺→了正寺と変更されていますが経緯は明らかになっていません。寛永3年（1626）登道上人により開山されました本尊は阿弥陀如来で、脇士は観世音菩薩、勢至菩薩、高祖善導大師座像があります。創建以来、度々の火災や震災によって、貴重な仏像、仏具、宝物、古文書などが失われてしまい、過去帳の一部が残るのみとなってしまいました。
○「原稲荷社」(大津町3-1)
国道134号と京急浦賀線の交わるガード下に「原稲荷社」があります。原と呼ばれていた頃の集落の稲荷です。創設は不明で、現在の社殿は明治34年頃のものと推定されています。祭礼は2月と10月に行われ、大釜に湯を沸かしながら舞を奉納し参会者に湯花をふりかけて無病息災を祈る「湯立て神楽」と、釜の湯をかき回し沸騰する状態で農作物の豊凶を占う「掻き湯の神事」が行われています。今でもこのお祭りには、昔からの習わしで粳米（うるちまい）に小豆を炊き込んだ赤飯が参列者に配られています。
【原稲荷社の庚申塔】
境内に石塔が5基ありますが、明らかに庚申塔と思われるのは3基です。
○「大津陣屋跡(大津中学校)」(大津町5-2)
「大津陣屋」は、現在の県立大津高校から大津3丁目にかかる一帯にありましたが、今は大津中学校正門脇に移設された石橋を残すのみです。陣屋は天保14年(1843)に幕命により江戸湾沿岸防備を目的として、川越藩主松平大和守によって建設されました。面積は9,800坪あり、御殿・稽古場・事務所・馬場などが壮観に立ち並び、八幡様も祀られていました。陣屋には多い時で村の人口にちかい1500人が詰めていました。その後、沿岸防備の担当は肥後藩、佐倉藩にかわり、浦賀奉行所の所管となり、明治元年新政府によって大津陣屋は取り壊され、僅か26年間の歴史が閉じられました。
【大津陣屋石橋】
大津中学校正門脇に移設された石橋は、もと横須賀刑務所正門前官舎の傍らにあったもので、旧大津陣屋構内に掛けられていた遺構のひとつです。
○「大津諏訪神社」(大津町4-22)
大津高等学校の裏手に「大津諏訪神社」があります。地元では「大津のお諏訪さま」と呼ばれ親しまれています。最近では、「すわじん」と略されることが多いようです。創建は平安時代初期の天長元年（824）。信濃の諏訪大神を勧請しこの土地の守護神としました。かつては、境内で三浦相撲が行われ人気がありました。大津の相撲、三浦市初声下宮田の相撲、葉山の森戸の相撲の３つで「三浦の三大相撲」として、古くから有名でした。現在では奉納相撲は行われておりません。衣笠城の三浦大介義明が勅命によって那須の原野へ狐退治に行く際に、祈願をして出かけると、首尾よく金毛九尾の狐を射落とすことができたという伝説もあります。
【狛犬】
神社の狛犬は、左右の狛犬で夫婦のようです。どちらの狛犬にも、下に子狛犬がおり、親狛犬が見守っている形になっています。その姿には、ほのぼのとする雰囲気があります。
【菅原道真一千年記念歌碑】
菅原道真千年祭を記念して、大津保込（ほごめ・現在の大津町5丁目町内会館）23人の有志によって、明治35年保込天神社に建立しました。その後、大正13年に諏訪神社に合祀されました。
【蛇沼山】
境内後方の神岳は「蛇沼山」といい、空海が巡礼のおり、山頂から雄大な景色を見渡し「是正東海一之密行之境也」といっています。
○「信誠寺」(大津町4-20)
大津諏訪神社の北側に「信誠(しんじょう)寺」があります。寺伝によれば、開山は了海上人と伝えられています。古くは真言宗でしたが、建久8年（1197）、江戸麻布の善福寺了海上人が親鸞上人の関東布教の折に浄土真宗に帰依し、このお寺に来て改宗しました。
【逆さ銀杏と連如上人の碑】
境内には「逆さ銀杏」の木と、「連如上人の碑」があります。宝徳2年（1450）、蓮如上人が手にしていたイチョウの木の杖を逆さまに刺したところ、枝葉が繁茂したといわれています。祈願をすると乳の出が良くなると伝えられています。連如上人の碑は天明元年（1785）の年号が刻まれています。
【龍灯木古跡】
境内に「竜灯木古跡」があります。海中から火の玉が飛んできて、木の梢で燃え続けたのを人々は「竜灯」と呼び、大津の港の目印になったという伝説があります。
【小川茂周の墓】
山門下に、初代三浦郡長を務めた小川茂周のお墓があります。小川家は、江戸時代から長く大津村名主を務めた旧家です。衣笠公園に、茂周の誠実な人柄を讃えた伊藤博文の次の歌碑があります。
�狢�る世をさけてすむらん君こそは 清き小川の流れなりせば��
【川越藩士の墓】
山門下に小川茂周の墓に並んで、江戸湾（現在の東京湾）沿岸を防備した川越藩士・大石仙助の墓があります。その他にも墓らしきものが多くあり、大津陣屋には、川越藩、熊本藩、佐倉藩の藩士が勤めていたことから、その時の藩士のお墓かもしれません。
○「信楽寺(坂本龍馬の妻龍子の墓)」(大津町3-73)
京急大津駅の南に「信楽寺」(しんぎょうじ)があります。開山は永正元年（1504）、証誉上人によると伝えられています。本尊は運慶作と伝えられている阿弥陀如来です。脇侍の観音菩薩、勢至菩薩は久比里の宗円寺の本尊を譲り受けたものだそうです。もし本当に運慶の作だったら国宝級なので、実際には運慶の作ではないと思われます。三浦33地蔵27番札所。
【聖観音像(熊谷次郎直実の守り本尊)】
本尊の阿弥陀如来のそばには、行基の作の聖観音像があります。熊谷次郎直実は一の谷の合戦で、我が子の年齢と変わらない若武者、平敦盛を討ち取った武将です。後に出家して蓮生坊という僧になりました。そして行基が作った聖観音像を守り本尊として大切にし、熊谷寺（埼玉県熊谷市）に安置していました。これを近江国の大津（滋賀県の大津）の信楽寺に送ろうとしたところ、使者が間違えて相模国の大津の信楽寺に納められたとのことです。
【坂本龍子(坂本龍馬の妻) の墓】
墓地の山側には、幕末の志士・坂本龍馬の妻であった龍子のお墓があります。未亡人となった龍子は、坂本龍馬の実家がある土佐（現在の高知県）に移り住みましたが長続きしませんでした。その後、京都、大阪、東京と、明治初年まで流浪の生活が続きました。はっきりとわかっているのは明治8年7月2日、三浦郡豊島村深田222番地（現在の米が浜通り）の西村松兵衛の家に「西村ツル」として入籍しています。そして、明治39年1月15日の午後11時に亡くなっています。遺骨は、当時の信楽寺住職の新原了雄師の好意によって信楽寺に葬られました。お墓は、実の妹の君枝や、鎮守府長官井上海軍大将、住職などの援助を受けて大正3年に建立されました。毎年、秋の墓前祭に合わせて、龍子を偲び「おりょうさんまつり」が行われます。
【保久利(ぽっくり)地蔵】
かつて、99歳で亡くなったおばあさんがいました。最後まで、病気をすることなく、天気が良ければ田畑で野良仕事をし、雨の日には家内で縫い物に励むなど、とても丈夫な人でした。信心深い人柄で、いつも仏を念じて、粗衣粗食に甘んじて周囲の人たちに尽くした姿は、まるで生きる地蔵菩薩のようだったそうです。そこで、一周忌にあたって建立されました。
信楽寺から南の丘に至る道は「古東海道」だと思われます。おそらく古代には、安房口神社や大塚古墳へと尾根伝いに通じていたと思われます。
○「貞昌寺」(大津町3-18)
信楽寺の東に「貞昌寺」があります。三浦33地蔵28番札所。
【向井将監正方夫妻の墓】
貞昌寺裏の高台の新興住宅地の中に、高さ2ｍ余の笠塔婆型の2基の墓石が「向井将監正方夫妻の墓」です。右が正方で、左がその妻のもの。向井将監正方は、南朝水軍の将を祖とし、徳川家の直臣として御船手奉行や三浦、伊豆の海防の任にあたり、延宝2年(1674)55歳で没しました。正方の所領は2000石で、三浦郡のうち、大津、森崎、小矢部、金谷、池上、不入斗の諸村でした。
【貞昌寺の庚申塔群】
山門脇に数段に並んで52基の庚申塔群があり、造塔の由来を記した貴重な文字塔もあります。
○「貞昌寺別院」(桜が丘1-10)
貞昌寺から南に向かってしばらく歩くと、突き当りの石段がありこれを上り、すぐ左の林の中の石段を上ると桜が丘の住宅街に出ます。北東に向かうと「貞昌寺別院」があります。ご本尊は阿弥陀三尊で、むかしは横浜根岸の南光山明動院の本尊であり、鎌倉時代の作といわれています。貞昌寺は大津村を知行し、幕府の船手奉行であった向井将監の母の菩提を弔うために再建した寺で、古くは吸江庵といい、当別院の敷地内にありました。
○「安房口神社」(吉井3-11)
貞昌寺別院から南に桜が丘の住宅街を行くと、正面の明神山(標高75m)の頂上に吉井の鎮守である「安房口(あわぐち)神社」があります。両側はマテバシイ（馬刀葉椎）の並木が続き、古代聖域の感触を肌で感じられます。日本原初の信仰は、山、石や樹木などを、神が降臨する御神体として崇めましたが、この神社も社殿がなく、御神体である大きな「安房石」（霊石）が一つ鎮座しており、古代の磐座信仰を残す神社です。祭神は天太玉命で、安房大神太玉命の御霊代として東国鎮護のためにこの場所に 飛んできたという伝説があります。また、直径40mほどの穴が安房の方角を向いているので安房口大神と尊称されるともいわれます。日本武尊(古事記では倭建命。12代景行天皇の皇子といわれる）が東征のとき、勝利を祈願したといわれますから、まさに古代の遺物といえます。北条政子が懐妊のおり、代表者が安産祈願に参拝した記録もあります。なお、安房口神社の前の道は「古東海道」にあたります。
【安房口神社下の庚申塔】
安房口神社の東下、神社の参道入口の鳥居の右奥の住宅地の向かいに6基の庚申塔があります。
○「大塚台古墳公園」(池田町)
大塚台古墳公園内のあずま屋に、詳細の解説が掲載されています。１号墳は復元された古墳で、大塚古墳と呼ばれています。２号古墳は全長17.1m以上、後円部径12.8mの前方後円墳で、周溝のみが残されています。３号墳は径約15mの円墳で、周溝のみが残されています。４号墳は全長19m、前方部長5.2m、後円部径約14.7mの帆立貝式前方後円墳で、墳丘の一部と周溝が残されています。
○「池田踏切の庚申塔」(池田町5-12)
京浜急行の池田踏切を大津方面に行き、しばらく行った吉井方面へ行く道との分岐点左側に庚申塔があります。庚申塔は11基ですが殆どが刻字塔で、彫像塔と思われる庚申塔は１基だけです。
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