横須賀市さんぽ「鴨居・走水から観音崎公園」
○「馬堀海岸遊歩道(うみかぜの路)」(走水)
馬堀海岸駅から北の海岸に向かうと「馬堀海岸」があります。馬堀海岸公園は『うみかぜの路』のコースになっています。うみかぜの路は、JR横須賀駅から平成町、馬堀海岸を経て観音崎までの約10キロメートルの海沿いを、ヴェルニー公園、三笠公園、うみかぜ公園、海辺つり公園、県立観音崎公園の5つの公園を結んだ遊歩道です。全体を横須賀駅寄りから、「歴史とショッピングの道」、「緑とスポーツの道」、「海辺の散歩道」、「海とあそぶ道」の4つのブロックにわけ、地域ごとの特色を生かしながら、憩いの空間を創出しようとするものです。
○「ヴェルニーの水(走水水源地)」(走水1-2)
東京湾に面した「走水水源地」は、横須賀造船所を建設したフランス人技師「ヴェルニー」により明治9年に造られた横須賀の水道発祥の地であり、横須賀市唯一の水源です。その敷地内に植えられた約130本の桜は、花見シーズンになると「桜のトンネル」と呼べるくらい見事に花を咲かせます。桜の開花時期にあわせて、走水水源地の一部開放を行っています。
○「伊勢町観音(伊勢町町内会館)」(走水)
伊勢町観音は、かつては走水小学校の建つ破崎に祀られていました。しかし明治30年頃、軍の都合によって走水口付近へ移されてしまいました。その後、伊勢町町内会館に安置されています。地元ではポックリ観音として信仰されており、像高は61cm、漆箔玉眼入りの寄木造で、宝冠を戴く立像です。なお、拝観には予約が必要とのことです。
○「御所ヶ崎 (走水番所跡)」(走水)
「御所ヶ崎」は、日本武尊と弟橘媛命の伝説の地です。現在は「旗山崎公園」となっています。地元に伝わる伝説によれば、日本武尊が上総に渡る時に海が荒れていて進むことができなかったので、この場所に臨時の御所を設けたことから「御所ヶ崎」と呼ばれるようになりました。御所の背後の山に軍旗を立てたことから、「旗山崎」とも呼ばれるようになりました。古事記や日本書紀によると、日本武尊が東国征伐の際、走水から上総（現在の千葉県）へ船で渡ろうとした時、海が荒れて進めなくなってしまいました。そこで弟橘媛命は海神の怒りを鎮めるために、身を投じて荒れ狂う海を鎮めました。
【旗山崎砲台跡】
御所ヶ崎には砲台跡がありますが、フェンスがあってその奥に入ることはできません。
【寺島(御座島)】
走水港には、日本武尊が海を渡る時に乗船したといわれる「寺島」(御座島)があります。
【古東海道】
日本武尊が東征に利用した道が、「古東海道」といわれています。足柄峠を越えて相模国に入り、三浦半島を横切って衣笠の宗源寺の天神坂あたりから、安房口神社、小原台、走水を経て、上総（現在の千葉県）に渡る道順と考えられています。
【走水番所跡】
走水小学校バス停から5分足らずの御所ヶ崎に、「走水番所跡」があります。寛永元年（1624）、徳川三代将軍徳川家光の命令により三崎とこの走水に海関が置かれました。走水では下り船を、三崎では上り船を改め警備しました。寛永18年（1641）、向井将監忠勝（向井正方の父）を兼務の奉行として、三崎奉行所の元に走水番所が置かれました。正保2年（1645）走水奉行所に昇格し、江戸湾の防備と船舶の往来の関所になりました。元禄9年（1696）、走水奉行所は伊豆下田の奉行所に統合され廃止されました。翌年には、建物はことごとく取り壊されてしまいました。向井一族の墓は、すぐ近くの覚栄寺にあります。
○「覚栄寺」(走水2-8)
御所ヶ崎の先に「覚栄寺」があります。本尊は阿弥陀三尊像。日本武尊の東征の際に尽忠者を弔った十王洞堂跡地で、十王の木造が祭られています。永正10年（1513）、屋道上人が念仏を広めるための道場として開いたといわれています。屋道上人の奉持する三尊仏は、天照春日の作と伝えられ、奥の院として祀られています。
【向井一族の墓】
大きな宝篋印塔で目立つのですが、これといった説明看板などもないため、見逃してしまうかもしれません。江戸時代、代々の船奉行を務めた向井家の政勝系統のお墓です。俗名向井伊兵衛とあるのが政勝の供養塔で、古くから長墓様と呼ぶ263cmの花崗岩の逆修塔が政良のものといわれています。一族の政直、正道、半十郎のものといわれている宝篋印塔、五輪塔、石地蔵浮彫りの碑、石灯篭などがあります。
【海軍貯水池】
明治9年、横須賀造船所の所長だったフランス人技師フランソワ・レオンス・ヴェルニーの手によって、横須賀軍港へ入出港する艦船への飲料水供給、造船所内の使用水量の増加に対応するため、海軍が覚栄寺裏山に新たな水源を求め貯水池を作りました。カマボコ型のユニークな形状で、覚栄寺裏山にひっそりと残されています。
【滝の井戸】
境内に縦４ｍ×横２ｍと特に大きい「滝の井戸」があります。走水の水は腐らないといわれ、明治時代の初めには船を相手に四斗樽で水を売る商売も出現し、この水屋の商売は横須賀町に水道施設が作られる明治41年頃までありました。現在でも東京方面から、茶道用に貰い水に来る人もいます。
【覚栄寺の庚申塔】
覚栄寺滝の井戸に隣接する柏木氏宅の脇に、14基の庚申塔があります。庚申塔の中で一番古いのは中央部に据えた背の高い庚申塔で、造立年は寛文13年（1673）とあり鴨居・走水地域では最古のものになります。
○「円照寺」(走水2-9)
覚栄寺の隣に「円照寺」があります。室町時代初期の応永5年（1398）、日海上人によって創建されました。本尊は仏、法、僧の三宝です。
【銅鐘】
幕末の文政5年（1822）春、走水沖で漁師利兵衛によって引き揚げられた銅鐘(市指定重要文化財)と写経が祀ってあります。鐘は病気平癒の本尊として、「おかね様」と呼ばれていましたが、現在ではお金が戻る鐘として信仰されています。総高は48.2cm、口径は29.0cmで、全面緑青に被われ、側面には大きな穴があき腐蝕がかなり進んでいます。鐘には、「竜神」、「元□□年八月」、「檀那沙耶□性」などの文字が確認されていますが判読は困難な状態です。引き上げられたとき鐘内は檜の木蓋で封じられ、斧で破ってみると経文2巻が封入されていました。こちらも痛みが激しいですが、「元徳弐年(1330)八月七日彼岸中日供養□□龍宮城□願主沙弥了性・・・」と書かれてあります。竜神に奉じたもので、紙は深緑色になっていますが、数百年間も海水に浸かったものとは思えないほど痛みは少ないものでした。『吾妻鏡』では、源実朝がみずから書き写した円覚経を三浦義村に命じて三浦の海に沈めたと記されているように、鎌倉時代には経文を海中に沈める習慣があったようです。法華経の巻末には「龍宮城」と奥書があることから、この銅鐘と経文は海神の怒りを鎮めるために海中に投じられたと考えられます。
【会津藩士の墓】
本堂の右奥に墓地には、会津藩士と家族の墓6基と川越藩士の墓１基があります。墓地の片隅に無縁仏のように並べられています。会津藩は江戸幕府の命を受け、ある者は単身で、またある者は家族も連れ、三浦半島の海岸警備と台場構築のために派遣されました。走水、浦賀、城ヶ島の3ヶ所に砲台場を造り、浦賀の平根山、観音崎、三崎の北条山に陣屋を設けて外国船に備えました。病没した藩士やその家族48名は、走水の円照寺、鴨居地区腰越の山腹、能満寺、西徳寺の墓地に葬られました。
○「大泉寺」(走水2-11)
円照寺の隣に「大泉寺」があります。天正18年（1590）、徳川家康が関東に入国した際、三浦郡代官頭の長谷川七左衛門長綱が逗子市沼間にある海宝院の伝英和尚を招き開山したお寺です。本尊は延命地蔵で、室町時代初期の作と伝えられ宋風彫刻木造地蔵菩薩坐像です。三浦地蔵尊三十番札所。漁業の村でもある走水の寺にふさわしく、漁篭に魚を入れた魚籃観音も祀られています。幕末になると、大津陣屋が造営された時に江戸湾沿岸の海防に従事していた川越藩の止宿となりました。以後、外国船出没などの非常時の際には、定宿にもなりました。
【一字一石法華塔】
天保8年（1837）9月吉日に建てられました。経石（きょういし）といって、仏教経典の文章の1文字を書き写した小石を甕の中に収め、その上に石塔を建てるのが一般的です。
【湧水】
大泉寺の境内には、富士山から永い歳月をかけて湧き出ている湧水を入口の道路に面して「うるおしの水琴窟」が設置されている他、境内のあちらこちらに湧水を使った水場が沢山あります。また、走水に伝わる「カッパ伝説」に因んで可愛いカッパの水場もあります。
【大泉寺の庚申塔】
大泉寺の庚申塔は6基あり、寛政9年（1797）、安永2年（1773）と享保13年（1728）に建てられたものなどです。
○「走水神社」(走水2-12)
大泉寺の隣に「走水神社」があります。走水の地名は、712年の古事記、720年の日本書紀の中にすでに記されています。村民が日本武尊より賜った「冠」を石櫃に納め、その上に社殿を建て日本武尊を祀ったことが走水神社の始まりだと伝えられています。景行天皇即位40年（110）、東国の蝦夷が叛くためその鎮定を日本武尊に命じました。日本武尊は、勅命を奉じて伊勢神宮に参拝し戦勝祈願をし、神宮の斎宮である叔母の倭姫命（わのひめみこ）から神宝の天叢雲之剣（あめのむらくものつるぎ）と火打袋を授けられ、東国征討の軍を起こしました。日本武尊一行は、焼津、厚木、鎌倉、逗子、葉山を通り、走水の地に到着し、御所（御座所）を建てました。このことから、御所を建てた場所は御所ヶ崎と呼ばれています。日本武尊は、軍船で一気に上総国（現在の千葉県）に渡ろうと船出しましたが、海上で突然強い風が吹き海は荒れ狂い、軍船は波にもまれて進むことも戻ることもできなくなってしまいました。あわや転覆するかという危機に、日本武尊に付き添って来た弟橘媛命は、「こうも海が荒れ狂うのは、海神の荒ぶる心のなせること。私が海に入り荒ぶる神の御霊を鎮めますほどに、尊様は心置きなく勅命を奉じて、その任を完遂して欲しい。」と告げます。
�爐気佑気靴気�むのおぬにもゆるひの ほなかにたちてとひしきみはも��
と、辞詠を残し、菅畳8重、皮畳8重、あしぎぬ畳8重を波の上に敷いて激浪に身を投げたところ、風は止み波は静まり、日本武尊一行の軍船は水上を走るかのように上総の国に到着しました。このことから地名の由来を、水走る、走水といわれています。
【弟橘媛命の碑】
弟橘媛が海に身を投げた際に詠んだ歌は、明治43年に歌碑として走水神社の境内に建碑され、除幕式には東郷平八郎、乃木希典も列席しています。碑文は次のとおりです。
�狡鏥棉果拭崗�は皇子の御為によろこびて今こそ此の浦に身を捧げなむ はようつとめ果し大君の御心安んじさせ給え」
日本武尊「弟橘媛よ 汝の願い心し吾が胸にのこりなん 永久に安かれとただおろがまむ」��
【弟橘媛命舵の碑】
船の舵をイメージして作られています。この大舵は、習帆船「進徳丸」の救命艇の大舵です。弟橘媛命のレリーフは、海洋画家の飯塚羚児氏によるものです。
【針の碑】
針の碑は昭和58年2月8日に建立されました。2月8日の「針の日」に、針に対して心を込めて感謝を捧げて建立されました。碑文は次のとおりです。
�狒靄蹇［垢隆歐欧痢”垣笋┐弌，△�手とつけろ これの針持ち��
(お父さん旅に出たら、野宿続きで着物の紐も切れるでしょう。そんなときは、自分でつけてください。この針を持って。=万葉集巻20・4420めくらはしべのおとめ)
○「観音崎公園」(鴨居4-1120)
「観音崎公園」は東京湾に突き出た岬に位置し、変化に富んだ自然美あふれる岩場と砂浜での磯遊び・海水浴・釣りが楽しめます。また、日本最初の洋式燈台である観音埼灯台をはじめ、各種園地や自然博物館、美術館、レストランなどが点在する魅力あふれるエリアです。この公園一帯は、明治時代から砲台が築かれたり、軍の要塞になっていたため、戦争が終わるまで一般の人は立入禁止でした。そのため自然が良く残されています。
【横須賀美術館】
観音崎公園内に「横須賀美術館」があります。横須賀市の市制100周年を記念して建設され、2007年4月28日に開館しました。本館の隣には、挿絵画家・谷内六郎の作品を展示する別館も建っています。地元在住だった洋画家・朝井閑右衛門の作品約1000点を始め、日本近現代美術を中心とする多くのコレクションを所蔵しています。
【権現洞(海蝕洞窟)】
波の浸食によってできた洞窟。説明板によると、鵜羽山権現や十一面観音として祀られてきた洞窟なのだそうです。
《聖武天皇の御代、天平13年(741)の春、行基善薩は諸国修行の途中ここに来られ、 この洞窟に住んでいる大蛇が、漁民や運漕の人々を苦しめているのを聞かれ、 大蛇を退治してその霊を、鵜羽山権現として祀られました。 この近くの走水神社に日本武尊とその妃弟橘媛命がお祀りしてありますが、 この洞窟の沖で入水して海を鎮められた弟橘媛命を、十一面観音として刻まれ、 側に安置されまして以来、海上安全、人命守護の霊地として信仰されてまいりました。 時代の変転により荒廃に帰しましたが、時来って今日は観光の地として復興されて、 再び海上安穏、人命守護、世界平和の祈りがなされています。》
【観音寺跡】
山側にはコンクリート製のしっかりとした東屋があります。 説明板によると、観音寺があったところなのだそうですが、砲台築造のために移転して、今ではその面影は残っていません。
《観音崎の地名は、奈良時代の僧行基が船の安全のため 十一面観音（船守観音）を海蝕洞穴に納めたことに由来すると伝えられています。 このあたりに観音堂が創建され、江戸時代には本殿・般若堂などが建ち並び、 村民や漁民・船乗りたちの信仰は大変厚いものでした。天正19年（1591）仏崎山観音堂料三石の御朱印をいただいております。明治13年陸軍砲台が築造され、翌年、観音寺は鴨居の亀崎に移されました。 鴨居観音寺は昭和61年の火災により焼失したため、 三浦三十三観音としての札所は吉井の真福寺が代行しています。》
【西脇順三郎の詩碑「燈台へ行く道」】
東屋の前に、西脇順三郎の詩碑「燈台へ行く道」があります。
《まだ夏が終わらない燈台へ行く道 岩の上に椎の木の黒ずんだ枝や いろいろの人間や小鳥の国を考えたり 「海の老人」が人の肩車にのって木の実の酒を飲んでいる話や キリストの伝記を書いたルナンという学者が少年の時みた「麻たたき」の話など いろいろな人間がいったことを考えながら歩いた》
西脇順三郎は昭和24年ご子息順一氏の遠足に同行して以来、当地を幾度か訪れており、ここ観音崎をモチーフにした「燈台へ行く道」は詩集「近代の寓話」に収められています。
【観音崎灯台】
海岸園地から階段を上って行くと「観音崎灯台」があります。次の説明があります。
《この灯台は、慶応2年(1866)の江戸条約に基づき、明治政府の依頼により、明治元年(1868)にフランス人ヴェルニーの手により起工されたもので、 三浦半島の東端に位置しています。 当時の建物は、フランス風の四角い洋館建て（レンガ造）の優雅なもので、開国後、日本で一番最初に建設された洋式灯台であり、我が国の近代灯台事業はここにはじまったとされています。現在の灯台は、大正14年に建て替えられ（コンクリート造）、三代目に当たります。》
【北門第二砲台跡】
次に「北門第二砲台跡」に寄ってみました。次の説明があります。
《ここ観音崎は東京湾側に突出した岬であるため、古くから東京湾防備の要塞地帯として使用されてきました。この砲台は、明治13年5月26日着工、明治17年6月27日完成しました。 24加砲6門と弾薬庫がつくられましたが、現在は4砲座と弾薬庫が残っています。》
【戦没船員の碑】
次に「戦没船員の碑」のある広場に行ってみました。次の説明があります。
《第二次世界大戦や海難事故の犠牲となって海洋で失われた、6万余人の船員の霊を慰め、かつ永遠の平和への願いを込めて設けられました。高さ24ｍの白磁の大碑壁を中心に、天皇陛下御製碑、皇后陛下御歌碑のほか、かってのれん終戦の錨などを配し、太平洋を望む恰好のモニュメントとなっています。》
【多々羅浜】
多々羅(たたら)浜の名の由来は2説あり、この付近で砂鉄を原料とした「たたら製法」による製鉄が行われたとか、三浦氏の支配時代、三浦義明の四男、多々良四郎義春が館を構えていたからだとかいわれています。また、多々羅浜は初代ゴジラ上陸地点とされる海岸だといわれ、ゴジラの足跡が残されています。かつてゴジラの滑り台がありましたが、自然環境とは調和しないとの理由で「くりはま花の国」に場所を移され人気になっています。
【多々羅浜横穴群】
多々羅浜の反対側の山際に、「多々羅浜横穴群」と呼ばれる横穴が17基確認されています。内部から、土師器、須恵器などが多数発見されています。これらのものから、この横穴は7世紀後半から8世紀後半の飛鳥時代から奈良時代にかけて造られ、上の台遺跡で発掘された住居の人々と関係がある墳墓ではないかと推測されます。
【観音崎自然博物館】
多々羅浜の右手の白亜の建物が「観音崎自然博物館」です。三浦半島の動植物を生きている状態で展示してあり、生物の飼育展示などを通して三浦半島の自然への理解を深めることができます。
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