mixiユーザー(id:62249729)

2015年11月13日23:30

254 view

己の欲せざるところ、ひとに施せ?

自分がやられて嫌なことを他人にするな、というのは、多くの人にとって説得力のある人生指針だと思われる。私自身も少なくともそのように心掛けてきたし、世の中の大部分の人もそうだろうから、これは古今東西に普遍的な常識、不文律であろうと、永いこと思っていた。

ところが、もうかれこれ10年近く前にいた会社で、そうでない人を見たのである。その会社のSという社長だ。仕事の発注側受注側両方になる機会がある会社だったが、受注側になった時、発注者が大幅な値引きを要求して、この仕事で赤字になったって他の仕事で儲ければいいだろう、と言われたと聞いて、S社長は烈火のごとく怒った。ところが数日後発注者の立場となった時、受注者に全く同じことを言ったのである。いわゆる、舌の根も乾かぬうちに、である。

この時私は、あんなことがどうして言えるのだろう?と不思議でならなかった。その後も時々そのことを思い返しては、世の中には何としても理解不能な人もいるものだ、という感じを強くしていた。ところが、ほんの数ヶ月前になって、突然思い当たることがあった。そうか!戦争だ!戦争なら、己の欲せざるところを敵に施すのは当然でもあり、最も有効なのだ。あの社長は、ビジネスでの渡り合いは闘いであると考えていたのであろう。

そうなると、自分がこれまで余りにも己の欲せざるところをひとに施すことをしなかったのは、反省するべきなのでは?という気がしてきた。さらにあの戦争のことを考えると、日本人全般にその傾向があるようにも思われるのだ。

戦争は惨劇であることは論を待たない。あってはならないことである。しかし、過去の戦争から学ぶべきところは少なくない。あの戦争で日本がどう戦ったところで、結局は負けたであろう。だが、同じ負けるにしても、もう少しうまく戦うことで、犠牲者を少なくすることはいくらでもできたはずである。

その一例に、己の欲せざるところをひとに施すことが不得意な日本人と、それが得意な西欧人の特質が具現化されているように思う。すなわち、潜水艦によるシーレーン封鎖である。

イギリスは島国であるから、潜水艦によってシーレーンを攻撃すれば、息の根を止めることができる、と敵国ドイツは考えた。そこで、第一次第二次の両大戦とも、この戦略を徹底的に採用し、実際にイギリスは息の根を止められる寸前まで追い込まれた。

これを見て、同じ島国である日本に対して同じことをやったのがアメリカである。盟邦イギリスの欲せざるところを、敵国日本に対して施したのだ。戦前世界有数の規模を誇っていた日本の商船隊は、壊滅してしまった。

イギリスはどうしたか。さすが老いたりと言えども世界を制覇した国、さまざまな戦術や技術開発を地道に続け、ついにドイツの潜水艦を追い詰めてしまった。

ここで思い付くのが、同盟国ドイツが潜水艦戦が思うに任せなくなってきた時、日本はその情報を活かすべきだった、ということだ。ドイツの潜水艦がどんなことで困っているのか、どういう状況で撃沈されているのか、まさに彼等の欲せざるところを、アメリカの潜水艦にやってやれば良かったのだ。実際は日本海軍の対潜水艦戦は、第一次大戦のレベルから大きく進歩せず、アメリカの潜水艦の跳梁を許してしまった。

もう日本があんな戦争をすることはないだろうし、してはならないが、外国と渡り合うに際しては、たまには己の欲せざるところをひとに施すことも思い出したほうが良いのではないか。

そうは申すものの、やはり私にはとてもあのS社長のようなことは言えないが。
6 8

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する