横須賀市さんぽ「芦名・大楠山ハイキング」
◎『大楠山』
「大楠山」(242m)は、三浦半島の最高峰です。山頂からは三浦半島を見渡せるのはもちろん、伊豆半島、富士山、箱根連山、大島、房総半島と、山頂展望台からは360度の一大パノラマがひろがります。この山を頂点として、東西に延びる丘陵は風致地区として保護され自然が豊かに残っています。
○「前田橋バス停」(秋谷)
逗子(新逗子)駅前から、長井・市民病院・大楠芦名口行きバスに乗り、約20分の前田橋で下車します。バス停から東に向かうと「お国橋」があります。最初に前田川遊歩道に入り、せせらぎに沿って歩きます。
【前田川遊歩道】
前田川に沿って、お国橋から尾形瀬橋まで全長1.4�劼陵景眛擦�整備されています。飛び石づたいに、沢歩きが楽しめます。
○「正行院」(秋谷2-16)
前田川遊歩道のトイレのあるところから道に上がると、「正行院」(しょうぎょういん)があります。三浦不動尊28ヵ所の20番札所。
○「大楠山ハイキングコース入口」
正行院から前田川の沢沿いに歩いていくと、「大楠山ハイキングコース入口」があります。最初は急坂が続きますが、やがて尾根道に出ます。樹林の中の歩きなので、涼しく楽しい登山道です。
○「大楠平(大楠山レーダ雨量観測所)」
山頂直下の秋谷側に、大楠山レーダ雨量観測所（国土交通省）があります。この付近は「大楠平」と呼ばれ、展望所、菜の花・コスモス畑があります。展望台からは、通信総合研究所、油壺、ゴルフ場が見え、天気の良いときには富士山や江ノ島が見えます。コスモスの見ごろは9月上旬から10月上旬、菜の花の見ごろは3月中旬から4月下旬です。
○「大楠山(242m)」
大楠平で休憩したら山頂まであとわずかですが、最後に急な登りが待っています。山頂には広場、展望台、売店があります。展望台に登れば、ここは三浦半島で一番高い場所。伊豆半島、富士山、箱根連山、大島、房総半島と360度の一大パノラマが広がります。
○「大楠芦名口コース」
大楠芦名口コースを下ります。このコースは平たんな車道が多く、他のコースから比較すると本当に楽です。途中で顔を出す景観もなかなか美しいものがあります。途中で振り返ると、大楠山の目印の白い鉄塔が見えます。
【へっぴり坂】
下って行くと、途中に「へっぴり坂」という標柱があります。芦名口コースで最も傾斜のある坂で、一番きつくへっぴり腰になるからみの名がつきました。
【芦名の堰】
やがて民家が見えてくると、「芦名の堰(せき)」というため池があります。説明板によると、400年から500年前にはすでに存在し、最近まで農業用水として芦名地域の稲作に役立ってきたといいます。近づくと、水辺から水鳥が羽音をたてて飛び立っていきました。アオサギのようです。堰の浮島あたりには、カルガモもいるようです。
○「安隠寺」(芦名2-13)
西海岸通りが近くなると、大きな車道にでます。ここを左折してしばらく行くと「安隠寺」があります。
【安隠寺の庚申塔】
安隠寺参道入口に6基の石塔があり、その中に4基の庚申塔があります。また、境内に2基の庚申塔があります。一方が「帝釈天王」、他方が「南無妙法蓮華経」の刻字ですが、建立年月は一緒です。
○「芦名城跡」(芦名)
西海岸通りに出て北に向かうと、芦名バス停のある大楠小学校入口交差点があります。この交差点から西に坂を下った大楠小学校の南側の向かいに、かつては「芦名城山」と呼ばれる比高20m程の緩やかな丘陵が城跡になります。現在では、保養施設やマンションが建ち並び一部は石切り場と化しているため遺構は消滅しています。小学校のある場所は居館が置かれた場所らしく、御館(みたち)と呼ばれていたといいます。芦名城は明確ではありませんが、三浦義明の弟・芦名三郎為清の居城と考えられています。芦名氏については、南北朝時代の中先代の乱の折に、北条時行に従って鎌倉に攻め込んだ軍勢の中に芦名判官入道の名が見え、南北朝期には芦名判官入道が芦名城にいたと思われます。芦名城は、三浦氏の本城衣笠城をめぐる馬蹄形連丘の南側を固める支城として、太田和城と共に機能したと考えられます。戦国時代には芦名城は歴史に登場して来ないことから、三浦氏宗家の没落と共に廃城となったと思われます。
【ごへん坂】
大楠小学校の南側を北東に上る坂は、「ごへん坂」と呼ばれています。坂上は西海岸通りの大楠小入口交差点です。この坂は地図にも坂名が載っていますが、坂名の由来が分かりません。たぶん、この付近に芦名城がありましたから、それに何か関連がある坂名なのでしょうか。
【芦名城跡の庚申塔】
大楠小学校から(東に)少し戻り、右手の民家の間の石段を南に下って行くと崖下に「芦名城跡の庚申塔」があります。石塔が８基ありますが、４基が庚申塔、３基が馬頭観音、１基が不明です。なお、説明柱には「宝篋印塔形のものは市内で他にないかつては小丘上にあったが明治末に現在地に移設」とあります。
○「南光院」(芦名1-16)
ごへん坂を西に向かうと、海岸に出て左折して少し行くと「南光院」があります。三浦半島観音札所9番。
【馬頭観音】
文字碑馬頭観音ですが、下部に線彫りで躍動的な馬が描かれています。弘化2己年10月11日銘。
○「淡島神社」(芦名1-18)
南光院の北の丘の途中に「淡島神社」があります。この神社は芦名海岸に参道入口があり、参道入口には一の明神鳥居が立ち、石段を上がると二の鳥居、右手には境内社の龍宮社が祀られ、そこから芦名海岸が眼下に望めます。境内入口の鳥居を潜ると正面に入母屋造りの紅い社殿があり、社殿内には淡島様らしく、男性器、女性器が飾られています。木立に囲まれひんやりとした境内は、俗世から隔離された別世界を感じさせます。説明板に次の説明があります。
《この神社の創建年代は不明ですが、恐らく隣接する十二所神社と同じころの平安後期ではないかといわれています。祭神は少彦名命で、体は小さく敏しょうで忍耐力に優れ、大国主命と協力して国土の経営にあたり、人々や家畜のために医薬やまじないを行った神としてあがめられています。当社の淡島明神は、和歌山市の加太神社のみ霊をここに迎えて祭ったものです。淡島明神は天照大神の妹で、住吉明神のきさきとなった神でしたが、「こしけ」の病気があるために離縁となり、綾の巻物と神楽の太鼓を天の岩船に積み込んで、紀州の淡島（粟島）に流されました。その地で女であるがために腰の痛みの苦悩から、人々を救うことを誓って神になりました。「あわせてください淡島様よ、お礼参りは二人づれ」と底抜け柄杓に麻を結んで、奉納する祭礼は、桃の節句の三月三日に行われます。この地方の祭の始まりです。現在、市内で行われている祭りのうちでも、最も古くからの民間信仰を、よく伝えている行事の一つで、民俗資料としても貴重な存在です。底抜け柄杓に麻を結んで、奉納するしきたりは、病の救済信仰によるもので、それが、安産、縁結び信仰に結びついたものといえます。》
【淡島神社の庚申塔】
本殿前の芦名海岸が見えるところに、自然石に猿田彦大神の刻字がありますが、建立年は不明です。石碑の頂きが欠けています。
○「十二所神社」(芦名1-21)
淡島神社の右手、龍宮社の前から東へと向かうと帯解子安地蔵の先に「十二所神社」があります。社号標の立つのは芦名海水浴場に近い海岸道路で、人家を抜けて森が見える頃、参道入口に石製両部鳥居が立っています。真っ直ぐ続く参道は突き当たりで石段となり、直登の石段上には文政元年生まれの出来の良い狛犬がいます。緑に覆われた境内奥に入母屋造りの拝殿と流造りの本殿が建立され、拝殿には「十二天神社」の額が掛かっています。境内は老銀杏が陽光をさえぎり、古社らしい森厳さを漂わせています。説明板に次の説明があります。
《明治初期の頃までは、三浦十二天または十二天明神と呼ばれていました。祭神は、天地創造の神話に登場する天の神国常立尊から七世代、地の神天照大神から五世代の神々です。神社の確実な創建年代については不明です。現在の大楠小学校門前に城山と言われている台地があり、そこに三浦大介義明の弟三郎為清の館があったと伝えられ、その鎮守として祭られたのがこの神社であると言われています。また一説には、この神社の裏山から、平安時代末期の布目瓦が出土しており、すでに相当規模の集落をなしていたことが明らかになっております。当神社のいわれに「平安時代には十二天といわれ」とあることがうなずけます。いずれにしても、古い歴史を持った神社であることがうかがえます。寿永元年(1182)8月、源頼朝は妻政子の安産祈願のため、箱根権現や伊豆山権現など近国の十二社に特使を派遣しました。この神社もその一社に選ばれました。源平合戦一の谷で勇名をとどろかせた三浦大介義明の子佐原十郎義連が、頼朝に代わって参詣をしています。天正19年(1591)11月には、徳川家康から社領として朱印二石の寄進を受けています。さらに、文政2年(1819)3月13日には、会津藩主松平容衆の代理として郡奉行石沢義則が、盛大に祭りを行ったことが記録として残っています。》
【帯解子安地蔵】
「帯解子安地蔵」は、安産祈願に効果があるそうです。この地蔵は、弘法大師が焚いた護摩の灰から作ったと伝えられています。
【庚申塔】
神社参道の入口右手に3基の庚申塔があります。その中の一つに、立派な笠を付けた角柱の文字碑で「猿田彦□□ 天鈿女□□」と刻まれています。道祖神として両神を刻むものですが、これは三猿を伴っているので庚申塔と思われます。
○「浄楽寺」(芦名2-30)
大楠小学校入口バス停まで戻り西海岸通りを北に向かうと、浄楽寺バス停の東に「浄楽寺」があります。文治5年（1189）、鎌倉幕府創設初期の有力者である侍所の別当和田義盛が創設しました。和田義盛は頼朝の挙兵に応援し、鎌倉入りを成功させた武将です。しかし、健保元年(1213)和田の乱で一族は滅亡しました。
【釈迦三尊像】
本堂の裏手にある阿弥陀堂に釈迦三尊像、それを守護するように左に毘沙門天像、そして右奥に不動明王像があります。この釈迦三尊像は、鎌倉大御堂ヶ谷の勝長寿院(文治元年=1185、源頼朝が建立)にありましたが、承久元年(1207)北条政子と和田義盛が浄楽寺に移したと伝えられています。とりわけ阿弥陀如来は想像よりも格段に大きく迫力があり、鎌倉のどの仏像と比べても見劣りするものではありません。本尊「木造阿弥陀如来及両脇侍像」、「木造不動明王・毘沙門天立像」は運慶の真作といいますが、運慶作と確認されたのは比較的最近です。
【前島密の墓】
境内には、一円切手のデザインにもなっている近代郵便の創始者である「前島密の墓」もあります。墓所の一番高いところに、銅像付きのお墓と記念碑が立っています。前島密のパンフレットも用意されています。前島密は、明治44年浄楽寺境内の一隅を借り別荘(如々山荘)を建て、大正8年に85歳でこの地で没しました。
【浄楽寺の庚申塔】
浄楽寺の本堂前の無縁塔の中に、庚申塔が2基混ざっています。また、境内稲荷社脇に1基の庚申塔があります。
【浄楽寺上の三叉路の庚申塔】
浄楽寺の右脇の旧前島別邸の脇の土手と畑に挟まれた山道を上り、しばらく行くと多少広い道に突き当たります。その三叉路の右手土手際に4基の庚申塔があります。
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