三浦市さんぽ「南下浦町金田・岩堂山から福寿寺」
○「心光寺(諸磯観音堂)」(三崎町諸磯234)
京急三崎口駅前から三崎方面行きのバスに乗り、油壷入口で降ります。バス停の先の信号から西に入って行くと「心光寺」があります。長善寺の末寺で、俗に「諸磯観音堂」と呼ばれています。本尊は聖観音菩薩像で、像高71�儖賁畋い蠶Υ磴領�像で、生地を生かした真っ黒な尊像です。三浦観音霊場第33番札所。
【庚申塔群】
心光寺の境内に上る階段左手に、前列左から宝永年間の青面金剛、元文5年（1740）の庚申供養塔、寛政5年（1793）の庚申供養塔、元禄11年（1698）の合掌六手青面金剛、明治24年の剣持六手青面金剛、明治41年の剣持六手青面金剛が並んでいます。後ろには馬頭観音2基、豚頭観音1基、牛頭観音1基などが置かれています。そのうち明治24年の青面金剛には、巨大な竜が絡み付いている珍しい庚申塔です。
○「蓮乗寺(原の観音さま)」(原町13)
もとの信号まで戻り、東に下って行くと「蓮乗寺」(蓮乗軒、原の観音さま)があります。室町時代、三浦一族最後の将・三浦義同（三浦道寸）は、北条早雲の追撃にあい油壺にて討ち死にします。その時、道寸の奥方は髪を落として仏門に入り隠れ住みました。それがここ蓮乗寺の始まりです。恵心僧都(えしんそうず)が一刀三礼して彫ったとされる本尊の如意輪観世音菩薩は、道寸の奥方の守り本尊としていたものだそうです。三浦観音霊場第3番札所。
○「原稲荷神社」(原町606)
蓮乗寺の南に上って行くと「原稲荷神社」があります。原区の氏神様として古くから信仰されています。説明板によると創立年代は不詳ですが、海南神社の御祭神の藤原資盈(すけみつ)一行が三崎に漂着したとき、原集落の者が彼らを助けて案内したという故事が残っています。明治42年になると海南神社に合祀されましたが、ある日、稲荷大明神が原区の古老の夢枕で「原のお社に帰りたい」とのお告げがあったことから、昭和27年に村人の総意によってもとの境内地に再建されたそうです。
○「神明社」(宮川町17)
原稲荷神社から南に向かうと、宮川町に「神明社」があります。詳細不明。
○「宮川円覚寺」(宮川町14)
神明社のさらに南に「宮川円覚寺」があります。詳細不明。
○「海応寺」(南下浦町毘沙門1936)
宮川円覚寺から東に向かうと、南下浦町毘沙門に「海応寺」があります。開山は勅諡仏真禅師。その昔、青苔の海岸に一躰の観音様が流れ着きました。その観音様を見つけた村人たちが、お堂を建て海上安全を祈願したことが始まりだそうです。現在はここ海応寺に移されて祀られ、観音講を中心として今も広く信仰を集めています。三浦観音霊場第5番札所。
【庚申塔】
入口右手に石塔が7基あり、庚申塔3基、牛・馬頭観音4基です。
○「八雲神社」(南下浦町毘沙門53)
海応寺の北方、岩堂山の中腹に「八雲神社」があります。最近の地図では「神明神社」と記載されています。
【八雲神社下の庚申塔】
八雲神社下の道路脇の崖中腹に「庚申塔」があります。少し離れて2ヶ所に分かれて石塔が12基あり、庚申塔2基、馬頭観音2基、他は損壊が著しくてなんだか分かりません。
○「岩堂山(標高82.2ｍ)」(南下浦町毘沙門)
八雲神社の西に「岩堂山」があります。岩堂山の北、環境センター入口から山頂まで林道があります。岩堂山神奈川県で一番低い山(標高82.2ｍ)であり、山頂南下のキャベツ畑の中に測量基点の二等三角点があり、山頂にあるのは低いコンクリ壁と、草木に囲まれた電波アンテナだけです。このコンクリ壁は、「三崎砲台観測所跡」だそうです。眺めは最高で、海まで広がる畑や風力発電の巨大プロペラ、彼方の城ヶ島に、天気が良ければ大島も望めます。
○「三崎砲台跡」(南下浦町金田)
岩堂山の北、環境センターを回り込んで北東に向かい、左のたに沿いの農道を上って行くと、三浦霊園の南側、南下浦町金田に「三崎砲台」があったようです。古い航空地図によれば4基の砲座が確認できます。一面のキャベツ畑の中を上って行くと右手に煉瓦造りの遺構が残っており、ひょっとすると指揮所施設であったとも思われます。上ったところに車道がありここが入口のようで、かすかにそれらしい古いコンクリート製の門柱があります。しかし、砲台跡は完全に取り壊されてしまったようです。
○「岩浦のお稲荷さんの庚申塔」(南下浦町金田)
三浦霊園を下に見ながら、霊園の東側の道を金田湾へと下って行くと「岩浦のお稲荷さん」があります。お稲荷さん境内に「庚申塔」が3基あります。
【お稲荷さん下の庚申塔】
このお稲荷さんへ上がる階段左上り口にも、庚申塔が3基あります。
○「金田やぐら群」(南下浦町金田)
なおも下って行くと、岩浦バス停の北側道路沿いに「金田やぐら群」があります。海岸の岩礁地帯には、波の浸食と地震による地盤の隆起によって作られた海食洞窟がそのまま古墳として使われました。鎌倉特有の埋葬方式である「やぐら」の代わりとして、古墳時代に掘られた横穴が使われました。それからは、五輪塔などが横穴の中に納められるようになります。史跡として整備されてはいませんが、三浦市内ではこのような横穴古墳がたくさん作られ現在でも数多くが残っています。
【三浦義村の墓】
バス停まで戻り、石段を上って行くと金田やぐら群の崖上には「三浦義村の墓」があります。福寿寺の南向院跡になります。現在の義村の墓は、関東大震災の際に海中に落ちたものを組み立て直したものに加え、近年建立した新しい墓碑の2基があります。頼朝の死後、北条氏が有力御家人を次々と排除し、幕府内での覇権を確立していく中で、三浦義村は常に北条氏と行動を共にしたため、幕府内における権勢は北条氏に次ぐものとなりました。延応元年（1239）12月5日、三浦氏の棟梁として一族を束ねて来た三浦義村が亡くなり、その家督を次男・泰村が継ぐことになりました。義村の死因は中風だったといわれ、60代だったそうです。しかし、三浦氏は北条氏による執権体制確立の最後の障害となり、義村の死後、北条氏に滅ぼされてしまいました。
【八坂神社】
三浦義村の墓の奥に「八坂神社」があります。
○「福寿寺」(南下浦町金田2062)
岩浦バス停の少し東の先の道を入ると「福寿寺」があります。鬱蒼とした緑に包まれた高台にある寺で、正治２年(1200)頃に三浦一族の義村が創建、慶叔大考禅師により開山といわれ、義村愛用といわれる鞍と鎧が納められています。
【長屋門】
福寿寺へと上る途中に長屋門があります。
【庚申塔群】
山門を入った右側に庚申塔6基と回国供養塔が並んでいます。嘉永9年の青面金剛の姿が取り上げられることが多いですが、ここは右から4番目の宝暦4年造立の庚申塔です。主役は青面金剛と脇役の邪鬼や三猿が各々役者揃いでありどれも飽きさせませんが、踏まれた邪鬼は乳房を大胆に見せ腰巻のようなものを付けた「女性」、吊り下げられたショケラはお尻が小さい「男性」となっており、普通の組み合わせと男女が逆です。
【大乗妙典六十六部供養塔】
庚申塔群の先にある「大乗妙典六十六部供養塔」は、デザインがユニークで彫りも変わっています。笠部正面に桃のような花模様が彫られ、地蔵の刻像は角柱から深く前に浮き出て蓮弁台に舟型光背まで付けられています。これも庚申塔と同じ宝暦4年の建立です。
【松塚】
寺の裏山にやぐらが残り、和田の乱で戦死した和田一族のものと思われる「松塚」という円墳が二つ残っています。住職の話では、十三塚といって沢山ありましたが、農業のためつぶされてしまったそうです。
○「鋒坂途中の庚申塔群」(南下浦町金田)
福寿寺の山門手前を左に上り、一旦上がり切った分岐路を左に下りて行くのが「鋒坂（とがりさか）」です。坂の途中、すぐ右手崖際に庚申塔が4基あります。
【庚申塔と猿田彦大神】
鋒坂の庚申塔群から少し下ると、高台の道端スペースに庚申塔と猿田彦大神があります。
【鋒神社】(南下浦町金田2285)
なおも鋒坂を下って行くと、鋒バス停の手前に「鋒（とがり）神社」があります。神社の由来は、浜田勘太氏の『南下浦の歴史探訪記』によりますと、祭神は「伊弉諾尊・伊弉冊尊（いざなぎのみこと・いざなみのみこと）」で、創建年月は寛政7年（1795）9月23日とあり、祭日は旧9月23日で氏子60名といいます。なお、これは明治20年の金田村の日誌の一部としています。なかに、「創建年月恐ラク八再建ナラン乎」とも記しています。また、浜田氏は同書の中で、次のようなことも述べています。「これは一説には弟橘姫の槍を守った人を祀ってあるともいわれている。これは、槍と鋒（とがり）と混同した俗説かもしれないが、それなりにうなずけることかもしれない」として、走水から房州に渡る時、龍神の怒りを鎮めるために、海に身を投じた姫を祀り、この半島に吾妻神社や走水神社があることをあげています。
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