三浦市さんぽ「三崎・三崎城跡から海南神社」
○「屁っぷり坂」(三崎町諸磯)
京急三崎口駅前から三崎方面行きのバスに乗り、天神町で降ります。西に向かうと、三崎町諸磯に「屁っぷり坂」があります。坂の途中にある、三浦市白秋文学コースの説明版に次の説明があります。
《�狒衞呂里� 三浦三崎は 屁の神を 赤き旗立て 祭れるところ��
�爐海害瓩�て 幾たび涙 落としけむ 一尺の赤き 鳥居の光��
この坂は急勾配の上、以前は赤土でありました。 そのため雨の後などは滑らないようにと、這うようにして 登り、腹に力が入り思わず放屁してしまったのかもしれません。正しい名な尾上(拝み)坂と言い、かつて源頼朝が歌舞島に遊覧した際、 三崎の人達はこの坂の上から拝んだのだともいわれています。 この歌は、坂の上り口左側にある屋敷稲荷や、坂の上の小さな天満宮 （現在の天神町の名はこれからついたといわれています）に里人が 奉納する赤い旗を面白く詠んだものといわれています。 また、この坂は、白秋が歌集「雲母(きらら)集」の姉妹編となる 詩集「畑の祭」の散策に、登らなければならない難儀な道でもあったのです。》
○「会津藩士城山墓地」(城山町15)
天神町バス停の南東に「会津藩士城山墓地」があります。文化7年（1810）国交を求めて来る外国船を警戒するため幕府は、会津藩に江戸湾相州警備（三浦半島の湾岸警備）を命じました。会津藩では砲台を観音崎に、鴨居・平根山（西浦賀）・三崎に陣屋を築き、文化8年に完成させました。三崎陣屋は昔、相模三浦氏の本拠地で後に後北条氏が領した城跡で今は城山と呼ばれています。この城山の南側崖上の大椿寺飛び地に、この地で亡くなった会津藩士と幼子のほかに年老いた親たちの家族の墓26基と供養塔が集められました。墓碑には、「會津之士」「會津臣」「會津士」「會藩士」など「會」の文字が刻まれています。会津人としての誇りのためだけでなく、望郷の念もあったのでしょう。
【墓地入口の歌碑】
墓地入口にある歌碑（詠み人知らず）は、諏訪地区から城山に上る途中で会津藩士の墓碑と一緒にみつけられたものです。
�爐⇔い契で機＼里荊�かはる三崎地に 吾妻濃人裳恋しかる羅舞��
(ありし世の 昔にかはる三崎地に 吾妻の人も恋しかるらむ)
○「三崎城跡」(城山町)
会津藩士城山墓地の南、三浦市役所の近くに「三崎城跡」があります。三崎城の築城年月は不祥です。戦国初期、伊勢新九郎（北条早雲）が小田原城を奪取し、永正9年（1512）相模の最大勢力・三浦義同の岡崎城を急襲しこれも奪取しました。さらに義同は岡崎城から住吉城に逃れ立て籠もりますがこれも陥とされ、最後は新井城・三崎城に篭城しました。義同は要害を頼りに3年間にわたって新井城に籠城を続けますが、永正13年（1516）7月11日最後は兵糧も尽き果て城兵悉くが玉砕しました。この時に三崎城もまた落城しました。その際、囲みを破った城兵は城ヶ島に逃れなお抵抗を続けたといわれます。三崎城は、三浦一族累代の居城新井城の背後を守る重要な支城であるとともに、水軍の根拠地でもあったといわれています。三崎城落城後、北条早雲は三浦氏に従っていた三崎10人衆を水軍として三崎城を根拠地として、三浦半島の海岸の防衛を命じました。しかし、天正18年（1590）豊臣秀吉に攻められ、後北条氏の滅亡にともない三崎城も廃城となりました。三崎城跡は、市役所・体育館・中学校等の公共施設の中に埋もれてしまっていますが、三崎中学校の体育館の辺りが本丸でした。中学校道路側には、説明板（縄張図も）と石碑が建っています。東奥の慰霊堂への参道入口には、結構明確に土塁跡が残り、慰霊堂への手前には堀切と土橋跡が残っています。
○「大椿寺(椿の御所)」(向ヶ崎町11)
北条湾を東に回り込むと「大椿寺」があります。城ケ島大橋料金所下の台向ヶ崎と呼ばれる崖下にあります。説明板によると、源頼朝が三崎に建てた三御所の一つで、「椿の御所」跡に建つお寺です。ちなみに、本端寺が「桜の御所」、見桃寺が「桃の御所」といわれています。頼朝はここにあった山荘に、寵愛した側室(後の妙悟尼)を住まわせました。庭内は椿の花に埋もれる程であったそうです。頼朝の死後、妙悟尼は旭永に大椿寺を開かせ、自身は尼となり頼朝の菩提を弔い、30余年の余生を送りました。
【唐獅子の杉戸】
本堂右側の客間には、 日本画家・漆工芸家の柴田是心の「唐獅子の杉戸」があります。
【女人埴輪など】
昭和33年の城ヶ島大橋の工事の際に大椿寺裏山の古墳より、「女人埴輪」「馬型埴輪」といった多くの埴輪のかけらが発見されました。入口を入ると、それらの埴輪が並べられています。
【会津藩士の墓】
大椿寺の墓域にも会津藩士とその家族の墓碑があります。
○「本端寺(桜の御所)」(三崎1-19)
北条湾を西に戻ると、三崎城跡の南の長い石段を上ると「本端寺」あります。室町時代の応永元年（1394)の創建。平安以来の武家の名門・三浦一族の菩提寺であり、源頼朝が三崎に建てた三御所の一つ「桜の御所」跡といわれています。海に囲まれ温暖な三崎の小高い丘の上にあり、冬でも陽が射していれば暖かく感じるのどかな場所です。
【岩村透の墓と胸像】
境内には、明治のわが国の近代美術の先覚者・岩村透の墓及び胸像（朝倉文夫作）があります。
【北村四海の墓と桜子像】
彫塑家北村四海の墓と作品である四海の愛児「桜子」の大理石の彫刻があります。
○「光念寺」(三崎1-18)
本端寺の南隣に「光念寺」があります。鎌倉時代初期の三浦一族の名将・和田義盛が48歳の時に建てた寺です。また一夜、筌が龍と化した夢枕をみて、一念発起し、堂宇を建てて筌龍（ せんりゅう）弁財天（八面六臂の戦いの神様）を祀ったと伝えられています。黒顔の弁財天で、山門を入ると右側の小堂に安置されています。海南神社の弁天様とは姉妹だそうです。
○「海南神社」(三崎4-12)
光念寺の西方に「海南神社」があります。三崎港の北側の山手に鎮座する三浦の総鎮守で、祭神は藤原資盈（すけみつ）・盈渡姫（資盈の妃）・地主大神。藤原資盈は、清和天皇の後継者争いで讒訴され、貞観6年（864）筑紫国へ赴く途中に暴風に遭遇し三浦半島に漂着しました。その後、土地の長に推戴され房総の海賊を平定するなどして地元民から尊崇されました。貞観8年（866）に資盈が没すると地元民は祠を建てて祀り、天元5年（982）には社殿が建立され、三浦郡の総社となりました。治承4年（1180）源頼朝の挙兵の折、三浦大介義明がこの神社で占った際、白と赤の狐が現れて戦い白の狐が勝ったので源氏についたと伝えられています。享保4年（1719）には三浦半島の総鎮守となっています。社名の海南には何か意味がありそうですが、社殿が海に向かって南面しているためとか、海難に由来するとかいった説があるものの、いずれも論拠に乏しくはっきりしたことはわかっていません。
【三浦七福神・筌籠弁財天】
治承4年（1180）、源頼朝の挙兵に呼応した和田義盛は衣笠城で畠山・江戸の諸軍と戦ったものの落城、海路房州に逃れました。折悪しく大暴風雨に遭遇し、流されて兵糧が尽きたとき、龍神に加護を祈ったところ｢筌｣（ せん）という竹製の漁具が流されてきました。辛うじてこれを用いて魚をとり、主従飢えをしのぐことができました。この地に筌を祀り、弁財天堂を建立したのが始まりです。
【源頼朝手植えの銀杏】
建久3年（1192）、源頼朝が祈願成就の記念に植えた銀杏と伝えられています。樹齢800年といわれ、雄雌の老樹2本が並んでいます。
【龍神社の銀杏】
龍神社の上にかかる銀杏は、龍神の姿に見えるといわれています。
【芭蕉の句碑】
�狆梢�を 誉めてや風の かをる音��
三崎の地にも、俳句をたしなむ風流人がいたことがしのばれます。
【チャッキラコ】
チャッキラコとは、毎年1月15日の小正月に三浦市三崎の仲崎・花暮地区や海南神社で、豊漁・豊作や商売繁盛などの祝福芸として、女性のみで踊られる民俗芸能の一つです。その起源は江戸時代まで遡り、『三崎志』（宝暦6年（1756）刊行）の年中行事の項に「〇初瀬踊 一名日ヤリ 十五日女児集リ踊ル」とあるので約250年前から伝承されてきたことが伺えます。また、踊りには2つの伝説が伝えられています。1つは、海南神社の祭神藤原資盈の奥方盈渡姫が、庶民の娘に教えたというもの。もう1つは、源頼朝が三崎来遊の際、磯取りしていた親子に舞を所望し、母親が唄い、娘が舞ったというものです。古代・中世まで遡るかは不明ですが、少なくとも江戸時代中期までは文献で確認されています。
○「三崎水産物卸売市場」(三崎5-245)
三崎港からバス道路を海沿いに進んでいくと、すぐに「三崎水産物卸売市場」があります。年間を通じて新鮮な魚の大量な水揚風景が見られ、中でもマグロは有名で、市場の2階ではマグロの入札風景などを見学することができます。市場の中の食堂では、新鮮な魚料理が楽しめます。
○「最福寺」(白石町6)
卸売市場の北に「最福寺」があります。寛喜2年（1230）創建で、享禄年間に鎌倉から三崎西の浜、さらに元禄十年に伊勢海賊衆の後裔である船奉行・向井政綱の屋敷跡を賜わります。三崎西ヶ浜は、昔、向井兵庫頭政綱の知行地であり、向井政綱所管の幕府軍船「泰平丸」の名をとり泰平山の山号となります。
【会津藩士高津氏妻の墓】
入口の脇に会津藩士高津氏妻の墓があります。
○「歌舞島公園」(白石町21)
卸売市場からバス道路を西へしばらく進むと、道路の北側に小さな「歌舞島公園」があります。ここはかつて、源頼朝将軍が歌舞宴楽を催したことからこの名がつけられたと伝えられています。公園からは、海に向かって伸びている諸磯の岬が眼下に見え、天候条件がいい日には丹沢はもちろん遠く富士山までも見えます。「三浦一族歴史めぐり」の説明板に、次の説明があります。
《鎌倉時代、すでに三崎は、鎌倉幕府の行楽の地として、源頼朝をはじめとして 多くの幕官が来遊しておりました。ここ歌舞島も頼朝公が歌舞宴楽を催したところから この名がのこされています。また三浦義村の招きで当地を訪れた将軍藤原頼経が来遊 （極楽からホトケを迎える）の儀を行い、読経歌舞を催したことろからその名が伝えられたともいわれています。 このあたり一帯の磯は、岩礁の変化と男性的な海岸美で知られ、 荒天どき千様万態の磯岩に挑んで白く砕ける黒潮の雄大さは、 水煙千丈とでも形容すべきでしょう。 また、頂上から眺める富士山や相模湾の夕映えは天下の絶景です。》
また、「白秋文学コース」の説明板に次の説明があります。
《�爐い弔靴�に 春の名残と なりにけり 昆布干場の たんぽぽの花��
白秋三崎初遊（明治43年晩春）の一首で、 白秋歌碑建設の構想が企画されたとき、白秋自身が最初に希望したのはこの歌だった。 しかし三崎の海には昆布は生育しない。 搗布を誤認したということで建碑は実現しなかったが、 三崎における最初の会心の作として大事にした歌でした。 白秋が人生の岐路に立ち、自らの青春にも名残りを留めようとする、 郷愁と愛着がこの歌に秘められているからです。 大正2年、三崎に新居を求めた白秋は、十ヶ月余り三崎の風土を歩きつづけ、�狒衞呂里� 三浦三崎は ありがたく 一年あまり 吾が居しところ�瓩函⊃肝遒鯀匹蕕賛契犬里茲蹐海咾鮖弔靴鴇�笠原へと渡ったのでした。》
【歌の町の石碑】
歌舞島公園の上には、「歌の町の石碑」があります。
♪よい子が住んでるよい町は たのしいたのしい歌の町・・・・
○「漣痕」(海外町)
歌舞島公園から海岸沿いに北に向かうと、海外町の海岸に「漣痕」（れんこん、波調層）があり、次の説明があります。
《この海岸一帯はスコリア質れき岩、砂岩シルト岩などの第三紀層からできている。漣痕は砂岩やシルト岩によく保存されている。特に正面のがけや、この先の離れ岩に模式的なものがみられる。 多くは断面のあらわれているものに左右対称の波模様が岩の表面に、みごとに画きだされている。第三紀の中ごろ、 海底に堆積した泥や砂が一定方向の底流で転動していた時、 転動部分の表面に生じた小さなろすによって生成されたものである。これがそのまま地層の中に残され、その後の変動によって海面上に露出し、侵食された結果、現在のような形になったもので波動漣痕といわれている。よく保存されたみごとな形状は、当時における地層の堆積環境を知る上に貴重な資料といえる。》
また、「白秋文学コース」の説明板に次の説明があります。
《�犲笋靴気� 秋成が書 読みさして 庭に出でたり 白菊の花��
�犖�桃寺 冬さりくれば あかあかと 日にけに寂し 夕焼けにつつ��
白秋は大正2年10月、向ヶ崎異人館からここ二町谷（ふたまちや）見桃寺の 一室を借り、妻と二人だけのわび住まいを始めました。 この「秋成が書読みさして」の歌は、晩秋のある昼下がり、白秋は 上田秋成の雨月物語「菊花の駒」のくだりを読みふけっていたということで、 このことは白秋碑の第一号として昭和16年11月2日この歌碑の除幕式に 出席した白秋が、初めて明らかにしました。そして、翌17年の同じ日に、 白秋はこの世を去ったのです》
○「見桃寺(桃の御所)」(白石町19)
少し戻り東に少し入ると判りづらいですが、モダンな鉄筋建ての「見桃寺」があります。開基は建長18年（1613）三崎船奉行の向井兵庫頭政綱が、駿河の国興津の清見寺の僧・白室玄虎和尚を迎えて開山したと伝えられています。かつてここに「桃の御所」がありました。「三浦一族歴史めぐり」の説明板に次の説明があります。
《建久の昔（1190年代）、時の将軍源頼朝は風光のすぐれた三浦の地に三つの御所を設けました。ここ見桃寺は「桃の御所」のあった所で、 鎌倉将軍がしばしば来遊したと言われています。 また、寺の墓地には江戸初期、お船奉行として東京湾の守備にあった向井将監一族の墓碑があります。》
【三浦七福神・桃林布袋尊】
三浦七福神の桃林布袋尊は、当寺七代の住職桃林和尚の信仰したもので、 大きな袋を背負った肥満鼓腹の温顔は、古くから近郷近在の人々に親しまれかつ敬われてきました。そして、不老長寿・無病息災の守護神とされています。
【向井将監一族の石塔群】
道を隔てた墓地に、向井将監一族の石塔群があります。供養塔碑６基（宝塔型５基・櫛型１基）と宝篋印塔２基。水軍(いい意味での海賊)の将で三崎船奉行だった向井政綱と忠勝の墓です。
○「真福寺」(白石町13)
見桃寺を出て北東方向、路地を道なりに少し進んでいくと「真福寺」があります。「白秋文学コース」の説明板に次の説明があります。
《�狷�だまりに 光ゆらめく 黄薔薇 ゆり動かして 友呼びにけり��
大正2年1月2日、白秋はこの寺に寄寓中の漢学者・公田達太郎を尋ね、 この歌のほか一首を作っています。白秋がなぜ三崎を志したのでしょう。 この三崎行について白秋は、「死のうと思ったが、死ぬにはあまりに空が温く日光があまりに又眩しかった」と書いています。三崎と白秋の地縁を結ぶことになった公田の存在、 白秋文学に及ぼした公田の影響、白秋の三崎時代はこの寺を訪れたことからはじまります。ここに来て「梁慶秘抄 読むときは 金色光の さす心地する」白秋文学を法悦境に導く先達は、公田達太郎であったのです。》
○「長善寺」(白石町4)
真福寺から南に上がったところに「長善寺」があります。なお、長善寺飛地墓地(諸磯963)に会津藩士のお墓があります。
○「大乗寺」(三崎4-3)
長善寺から南に下ると「大乗寺」があります。
○「浄称寺」(三崎4-11)
バス道路に出ると「浄称寺」があります。
○「円照寺」(三崎4-1)
浄称寺の北に「円照寺」があります。
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