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2015年06月18日09:54

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職人の仕事

最近はテレビで、和紙とか刃物などを作る伝統工芸の職人さんの仕事ぶりが放映されることが多くなりました。

私は幼少時から、このような伝統工芸ではなくて、もっと身近な職人さんの仕事に惹かれることがしばしばありました。

その一つは、看板屋さんです。幼稚園の帰り道などに、看板屋さんがペンキでブリキ板の上に文字を書いているのを、一所懸命に見ていました。当時は、商店などにはそんな看板が多かったのです。見ていると、その仕事ぶりは実に見事なものでした。漢字などは、筆順に関係なく縦の線を全部書いてから、横の線を書きます。おそらくそのほうが形を整えやすいのでしょう。

看板屋さんに似ているのが、葬儀の時生花に立てる木札にお供えした人の組織や氏名を書く職人さんです。これは幼稚園の頃は見る機会はなく、もっとずっと大きくなってからでしたが、全く感心しました。当然組織の名前も氏名も、短いものは3字程度、長いものは15字以上と、さまざまな文字列を同じ大きさの札にバランス良く書き込むのは、大層な技術力です。

最近は天井にペンキを塗っている家など見掛けなくなりましたが、これもなかなか鮮やかな技です。何しろペンキを付けたい方向と、物理現象でペンキが離れようとする方向が真逆なのですから。

これも幼稚園時代の思い出なのですが、姉は小さい頃からピアノを習っており、家にピアノがありました。その調律に時々専門の職人さんがやって来るのですが、鍵を一つひとつ指で叩き、音を聴きながらピアノの裏のボルトを少しづつ締めたり緩めたりする調律師さんからは、仕事をいい加減で済ませることを断固拒否するという、決意が滲み出ていました。機械を使わず、自分の音感だけが頼りという、集中力を要する上に、たくさんの鍵全部についてそれをしなければならないので、大変な根気も必要な仕事です。

このような職人仕事が、ちょっとやそっとの修行でメシのタネにはならないことは、自分がやってみて初めて実感されるものです。ピアノの調律はやったことはありませんが、天井にペンキを塗ってみると、まず塗れるより垂れるペンキのほうが多くなります。ペンキで書いた文字も、わずかの形の崩れや文字の間隔の乱れが、とても目立つのです。

職人仕事においてプロとアマチュアのもう一つ大きく違う点は、仕事の速さです。看板や生花の木札の文字も、きちんと寸法を測ってていねいに書けば、あるいは本職と同じくらいきれいに書けるかも知れません。しかし、それでは本職にはなれないのです。生花の木札は、式が始まる前に書き上げてしまわなければなりません。何をどう書くか、直前まで決まらない場合もあるでしょう。それでもあんなにきれいに書き上げるというところに、私は感心してしまうのです。

他人をそんなふうに感心させられることって、自分には何ができるだろう、と思うと、歳を重ねるにつれちょっと恥ずかしくなってしまう私なのです。
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