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2015年03月05日09:17

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いつかある日

山の好きな方は「いつかある日」という歌をご存知でしょう。ロジェ・デュプラが書いて、あの「日本百名山」の深田久弥が翻訳した歌詞が付いています。私もかつて山でよく歌いました。でも今はこの歌はあまり好きではありません。

10年ほど前、当時勤めていた会社の山の先輩が、一度海外の山へ行ってみたいと言うので、スイスのメンヒという4,100メートルほどの山に登りに行くことにしました。二人とも海外の山は初めてなので、現地でガイドを手配しました。

先輩が先頭、私が真ん中、ガイドがしんがりでザイルを結び合い(「アンザイレン」と言います)、登っていきました。ザイルの真ん中は、最も経験の少ない者の位置です。

7月中旬だというのに、雪が多いことには驚きました。八ヶ岳あたりなら、真冬並みです。それに苦しいこと!でもガイドはプロだから当然として、先輩も平気な顔をしていました。

それでもどうにか頂上に達しました。4千メートル超え初体験です。

さて、下山の途中で事故が起きました。ナイフエッジになったところを通過しようとした時、私がバランスを崩してしまったのです。さすがベテランだけあって、二人がすばやく確保してくれたので大事には至らなかったものの、ザイルに逆さまにぶら下がった私が下を見ると、垂直の岩壁がどこまで落ち込んでいるかもわかりませんでした。

登山電車の駅に戻り、食事をしようということになったのですが、お腹は空いているのに、全く食べることができません。「メシが喉を通らない」というのは、本当にあることだと知りました。あの時、もし二人のうちの一方でも確保に失敗していたら、三人とも助からなかったことでしょう。

やはり山は危険なのです。それ以来私は、低山にしか登らなくなりました。「いつかある日」も歌わなくなりました。
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