瑞穂町さんぽ「狭山池公園・残堀川橋から江戸街道」
○「鎌倉街道」(箱根ヶ崎)
箱根ヶ崎駅から駐輪場の横を北に向かう細い道が「鎌倉街道」です。道端の民家生垣に、鎌倉街道の標柱が立っています。そのまま進むと青梅街道に出ます。瑞穂町は鎌倉街道が南北に縦断し、青梅街道を横切り北側の加治丘陵を越えて飯能市阿須へと向かっており、鎌倉時代に多摩地域から鎌倉へ「人・もの」が行き交う道として利用されていました。
○「円福寺」(箱根ヶ崎132)
青梅街道沿いに「円福寺」があります。一説では戦国時代に福正寺から分かれたともいわれますが、創建などは明らかではありません。瑞穂町は東京のだるまの産地としても知られており、毎年1月には「だるま市」が開催されてにぎわいを見せます。また、6月の「ほおずき市」もよく知られています。
【庚申塔】
本堂左手前、六地蔵の後ろに「庚申塔」があります。寛政2年（1790）造立の道標を兼ねるこの庚申塔は、台座に「左りみたけ道」と記されています。
【紙本着色観心十界図】
室町時代末期作の「紙本着色観心十界図」を所蔵しており、毎年2月15日の涅槃会で展観しています。この図は仏教の世界を一般の人にも分かりやすく説明したもので、日本では13点残されている貴重なものの一つとして、東京都の有形民俗文化財に指定されています。
http://homepage2.nifty.com/hokosugi/nishitama/br2002.7houzuki.html
【振武隊の駐屯地】
円福寺は幕末の動乱時、振武隊の一時駐屯地となりました。振武隊は彰義隊からわかれた幕府軍の一派で、上野を離れた後、隊長の渋沢成一郎に率いられ､田無をへてこの地にきます。軍資金集めなど少々不可解な行動をとりながら、三日ほど円福寺に滞在し、上野の戦い勃発の報に接し、この地をはなれて上野に赴きました。進軍途中、上野での彰義隊敗走の報を受け転進し、田無を経て飯能へ下り、その地での飯能戦争で壊滅しています。
http://blog.livedoor.jp/ayabeda/archives/51718145.html
○「狭山池公園」(箱根ヶ崎712)
円福寺の北を残堀川が流れていて、西に向かうと「狭山池公園」があります。昭和58年、都立自然公園だったところを瑞穂町が譲り受け、公園として整備してオープンしました。鎌倉時代の歌集にも載る古くから知られていた場所で、江戸時代には玉川上水の助水として水を流した歴史があります。面積は約1.5haでそれほどの広さはありませんが、3つの池を中心にした趣のある親水公園です。庭園風鑑賞池の「筥(はこ)の池」、自然観察池の「あめんぼうの池」、つり池の「ふなっこの池」とそれぞれに個性があります。
http://www.town.mizuho.tokyo.jp/midokoro/sayamaike.html
【箱根ヶ崎の地名由来】
狭山池は、鎌倉時代の歌集『八雲御抄』に�狹濘爾焙┐涼喨佞鯆�行けば 氷の鏡見ぬ人ぞなき�瓩氾埒佑鵬里錣譴討い襪茲Δ法∪里蓮帚┐涼咫廚噺討个譴新幣｜呂任靴拭ｄ┐涼咾慮佝覆鵬糧蠅�あります。「箱根ケ崎」という地名は、源義家が奥州征伐のとき、この地で箱根権現の夢を見、この地に箱根（筥根）大神を勧請したことに由来します。箱根（筥根）大神は、現在の狭山神社だと伝わっています。また、この地の地形が箱根に似ており、また箱根より先（都より遠くはなれた）であるので、「はこねがさき」となったとの説もあります。説明板に次の説明があります。
《この辺一帯は、古多摩川が流れていた頃、深くえぐられ窪地となった所である。大雨が降ると周辺の水が集まり、丸池を中心とした約18 haは水びたしになり、粘土質のため水はけが悪く耕作できず、芝池になっていた。》
http://www.geocities.jp/ikoi98/photo/oume/424.html
【常夜燈】
筥の池の厳島神社入口には大きな「常夜燈」があり、これは慶応元年(1865）日光街道と残堀川が交わるあたり(大橋付近)に建てられていたものを移築しました。
【蛇喰次石衛門の像】
筥の池の湖畔南側に「蛇喰次石衛門（じゃっくいじえもん）の像」があります。説明板にある蛇喰次右衛門の伝説は次のとおりです。
《昔、蛇喰次右衛門という男がいた。ある日、池の水際の若草を刈っているうちにあまりの暑さにひと汗流そうと池に飛び込み泳いでいると、一匹の小さな蛇が次右衛門の腕にかみついた。気丈な次右衛門は口で噛み殺してしまった。その小さな蛇は実は大きな蛇で、三日三晩血潮が流れて川となったので、蛇掘川と呼ぶようになった。》
http://homepage3.nifty.com/k_harada/ohanashi/jyiemon/jyiemon.htm
【残堀川】
残堀川の名前は、この蛇喰次右衛門の狭山ヶ池伝説に由来します。大蛇の大量の血が流れ「じゃぼり(蛇掘)」から「ざんぼり(残堀)」に。また、大雨の度に流路定まることなく、蛇の如くうねったが故に「じゃぼり」となったともいいます。狭山池は残堀川の水源で、ここからはじまり武蔵村山市西部・立川市北西部・昭島市東部・立川市南西部を経て、日野橋上流で多摩川へと合流します。流路延長12.7km の一級河川です。
http://tokyo-gasuki.com/31river/zanbori/zanbori01.htm
【調練橋】
狭山池公園の北西に「調練橋」があります。慶応元年(1865)から翌年にかけて、この辺りの芝原で農兵に鉄砲などの調練を行ったために、「調練橋」と名づけられました。説明板に次の説明があります。
《箱根ヶ崎村、石畑村、殿ヶ谷村は天領で、西洋式戦術の研究家として有名な江川太郎左衛門が代官として支配していた。そのような関係でこの地が調練場として選ばれたのかもしれない。参加者は、近隣周辺村々の役人層の子弟が大部分で総勢79人、そのうち箱根ヶ崎村4人、石畑村4人、殿ヶ谷村2名であった。この訓練は、武士階級の崩壊や徴兵制につながる我が国の近代化への第一歩を示すものとして意義深いもの。》
http://blog.goo.ne.jp/y-k9359/e/cd7f263e92d4fbe83c009a80b940293a
○「大橋の常夜燈レリーフ(残堀川)」(箱根ヶ崎122)
残堀川に沿って遊歩道を歩くと、源流の狭山橋、狭山下橋、宿西(しゅくにし)橋、次が日光街道に架かる「大橋」があります。欄干に「常夜燈レリーフ」があり、次の説明があります。
《日光街道大橋場脇に常夜燈が建てられたのは、慶応元年（1865）でした。近年でも珍しい高さ約5mの大燈籠で、通行人への道標となっていました。大正12年関東大震災のときに倒壊し、現在は狭山池公園に再建されています。平成16年に常夜燈のレリーフが、欄干の親柱に飾られました。》
http://blog.goo.ne.jp/home-goo/e/1e7e2e7b2b61403a6f2f804d7abd80d5
○「箱根ヶ崎宿 (日光街道、千人同心街道)」(箱根ヶ崎)
大橋から日光街道を南に向かうと青梅街道にぶつかります。この日光街道交差点を中心に「箱根ヶ崎宿」がありました。箱根ヶ崎宿は、石灰を継ぎ立てる義務を負っていたため、必要な馬を飼育していました。またここは、八王子千人同心が通う日光街道(千人同心街道)と交差する宿場町でもあり、天保12年（1841）には9軒の旅籠がありました。江戸後期の御嶽神社への参詣案内書『御嶽菅笠』には、「関屋」(日光街道と江戸街道の交差点角)と「嶋屋」(現在の激安倶楽部)が描かれています。また、イギリスの外交官アーネストサトウは、明治14年に嶋屋に泊まり、部屋数は多いが設備が悪く一番良好な部屋は養蚕に使われていたと記しています。
【千人同心街道】
青梅街道箱根ヶ崎宿を通る日光街道は、「八王子千人同心」が日光東照宮火番のため日光へ赴く街道として整備されました。八王子千人同心は、江戸幕府の職制のひとつで、武蔵国多摩郡八王子に配置された郷士身分の幕臣集団のことです。その任務は甲州口（武蔵・甲斐国境）の警備と治安維持でした。徳川家康の江戸入府に伴い、慶長５年（1600）に発足しました。千人同心は、甲斐武田家の滅亡後に徳川氏によって庇護された武田遺臣を中心に、近在の地侍・豪農などで組織されました。甲斐が天領に編入され、太平が続いて国境警備としての役割が薄れると、1652年からは交代で家康を祀る日光東照宮を警備する日光勤番が主な仕事となりました。毎年旧暦5月25日と11月25日に八王子を出発し、拝島・箱根ヶ崎・二本木・扇町屋（入間）・鶴ヶ島・坂戸・松山・行田・館林・佐野から、鹿沼を経て日光まで22宿、40里、3泊4日の行程でした。
http://www.buyo-gas.co.jp/exchange/public/kaidou/kaidou01.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E4%BA%BA%E5%90%8C%E5%BF%83%E8%A1%97%E9%81%93
○「時計台のモニュメント(青梅街道)」(箱根ヶ崎)
青梅街道を東に行くと、三差路に新しい「時計台のモニュメント」があります。この場所には、もともと昭和6年に建造された木造の時計台があったといいますが、老朽化のため昭和30年代後半に解体撤去され、それを平成15年に復元したものが現在の時計台です。時計台の左手を青梅街道から南西方向に分岐していく通りは、近世の頃に整備された「旧青梅街道」にあたるといい、時計台は新旧街道筋の追分地点に位置していました。
http://city.tachikawaonline.jp/view.php?area=27&id=962&mode=details
○「地蔵橋の吉野岳地蔵堂(残堀川)」(石畑1805)
残堀川の大橋に戻り、中宿橋、新宿東橋、新東橋、役場通りに架かる中央橋、一本橋と歩いていくと、「吉野橋」と青梅街道が横切る「地蔵橋」があります。この地蔵橋の青梅街道沿いに「吉野岳地蔵堂」があり、説明板に次の説明があります。
《屋根は、方形造り・銅板葺（昭和49年に鉄板葺が銅板葺となる）総欅造り。地蔵堂は江戸時代（文久3年、1863）の建造、棟札によると、当時、石畑村の名主（戸長）であった吉岡助右衛門が、子女の病気平癒を祈願し大方の寄進をなし、この堂を再建したという。小堂ながら正格な唐様建築で、地蔵堂としては他に見られぬ建物である。殿ヶ谷福正寺観音堂と同形式の仏寺建築で、同じ棟梁門下の作といわれている。堂内には石像地蔵尊（享保4年、1719）が安置され、書川縁峰の筆になる竜の絵がえがかれている。》
地蔵堂の左に祠がありますが、神社、祭神名は不明。祠の右には三つの石像が立ち、左から「馬頭観音」、「庚申塔」、「石橋供養塔」が並んでいます。
http://www.ittenbee-tokyomizuho.jp/entry-info.html?id=27487
http://www.geocities.jp/ikoi98/photo/oume/378.html
○「二本榎橋(残堀川)」(石畑225)
地蔵橋から少し下ると「二本榎橋」があります。二本榎橋の橋中央に「石橋供養塔」があります。かりんが一個、供えられていました。ここ二本榎橋の南、江戸街道沿いに二本榎がありましたが、現在何も残されていません(後述)。
【石橋供養塔】
江戸時代の農村では、耕作用の用水、飲み水とし水路が引かれており、橋も多くかけられていました。そのほとんどは簡単な木橋でしたが、往来の激しい道には費用を出し合って石橋をかけ、石のもつ永久性のようなものを供養し安全を願ったようです。今では当時の石橋がどの程度のものかわかりませんが、供養塔の近くの橋は当時少ない石橋であったことがわかります。
○「仲町橋(残堀川)」(殿ヶ谷835)
さらに下ると、砂前橋、境橋、次に「仲町橋」があります。仲町橋の北側にも「石橋供養塔」があります。
○「麦橋(残堀川)」(殿ヶ谷802)
次に仲橋、そして「麦橋」があります。この麦橋にも、北川橋詰に小さな「石橋供養塔」があります。ここから北に向かえば、旧青梅街道との交差点角に「殿ヶ谷地蔵尊」、「力石」、「火の見櫓」があります。残堀川沿いの遊歩道歩きはここまでとして、次は南の江戸街道に向かいます。
○「江戸街道の一本榎(庚申塔)」(殿ヶ谷768)
麦橋から南に向かい新青梅街道に出て、左の瑞穂殿ヶ谷交差点を右折して南約100mの十字路に「一本榎」があります。
【庚申塔】
一里塚のようにこんもりした塚になっており、一本榎の根元に文化10年（1813）造立の「庚申塔」が祀られています。
【江戸街道(村山通り江戸道)】
一本榎の前には、東西方向に「江戸街道」と書かれた新しい表示標があります。この道は、徳川家康が江戸入府後、江戸城築城のため、青梅成木地方から石灰を運ぶために整備された道で、当初は「成木街道」ともよばれた「最初の江戸街道」(村山通り江戸道)です。田無橋場・九道の辻・奈良橋庚申塚・箱根ヶ崎を経由していました。なお、江戸時代には青梅街道とはよばれず、青梅から江戸方向を見て「江戸道」、江戸から青梅方向を見て「青梅道」等とよんでいました。
http://tokyomizuho.blogspot.jp/2012/08/13.html
http://kenzo1808.blog.fc2.com/blog-category-4.html
http://www.h6.dion.ne.jp/~arc-yama/sketch/machi/doc/kishimura.html
○「二本榎(天神塚)跡」(石畑214)
一本榎からは北西に細い旧道(江戸街道)が続き、瑞穂石畑交差点で新青梅街道を斜めに横切り、最初の十字路に「二本榎」があったといわれています。ここには「天神塚」があったといわれますが、今は何も残ってはいません。塚にあった庚申塔・宝篋印塔・線香立ては、現在、瑞穂町歴史資料館にあります。
【武蔵土地改良記念碑】
その先左手に、「武蔵土地改良記念碑」があります。「昭和31年横田基地拡張」という文字が読み取れます。
○「日光街道の起点(箱根ヶ崎宿の関屋)」(箱根ヶ崎)
さらに歩くと瑞穂第一小学校の前に、「江戸街道」という新しい表示標があります。その先左手「関谷家」の先で、江戸街道は日光街道と交差します。瑞穂町で言う「江戸街道」は、ここを起点に東に向かうといいます。『御嶽菅笠』に描かれている箱根ヶ崎宿の「関屋」は、この角の関谷家のことだそうです。なお御嶽菅笠とは、江戸後期に出された江戸から御嶽神社(奥多摩)への参詣案内書、青梅街道をたどる道中記です。
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