10月25日(土)
この日は単独で行動した。
午前8時過ぎ、地下鉄1号線マンウォルサ駅に着いた。
ソウルでも郊外のあたりだ。
ザックを背負ったハイカーらしき団体が幾人も歩いている。
その人たちのあとをついていく。
ドボン山というのは有名な山だと聞いていた。
でも人もあまりいないし、あたりの建物も廃墟のようになっている。
20分ほどで道標が現れ、登山道に入る。
道はよく整備されていて歩きやすい。
麓からたくさんのお寺がある。
登山道横の岩にも「ナムアミダブツ」と刻んである。
でもハングルだと、なんとなく重々しさに欠けて、ありがたみも少ない。
仏教徒のくせに、こいつら「南無阿弥陀仏」ぐらい漢字で書けないのだろうか?
1時間ぐらい登ると大きなお寺があった。
地下鉄の駅名にもなっているマンウォルサ(望月寺)だ。
自動車や重機が入れない山の中なのに立派な建物がいくつもあるので驚いた。
午前10時、尾根を登りつめて稜線に着いた。
ここから最高峰のジウンボン(740m)まで岩稜が続いている。
かなり大きくて急な岩山をいくつも越えて行くことになる。
ポデヌンソン(砲台稜線)という名前のリッジだ。
楽しく歩いていった。
やがて道が二股に分かれていた。
危険な道と安全な道と書いてある。
よくわからないから危険な方へ行ってみる。
岩のピークを登り切って、少し下りになる。
その先が突然に岩壁のようになっていた。
ピンとフィックスがあるからなんとかなるけど。
何もなければ3級から4級のロッククライミングだ。
慎重に足場や手がかりを選びながら進んでいく。
核心部はトラバース気味の狭い登りだった。
「こんなところを登るのか。。。」
日本語でつぶやいていたら、すぐ近くにいた韓国人が話しかけてきた。
「日本人ですか?ここは怖いですね!」
登ってみると足場がしっかりしていて、ピンを掴めば簡単に行けた。
ここを降りたら緩やかな下りになった。
すぐに目の前が最高峰ジウンボンだった。
反対側から登ってくる道と合流する。
ここからすごく大勢の人がいた。
反対側のルートは、難しいところを避けて直接最高峰へ登れるのだ。
午前11時30分、登頂。
頂上は足の踏み場もないほど。
記念写真を撮る場所もない。
霧がかかっていて景色も良くないから、そそくさと降りる。
下りは反対側のメインルートにした。
次から次へと行列して登ってくるハイカーとすれ違いながら歩いて行く。
韓国人は山登りが本当に好きなんだなあ。
12時30分、チョンチュクサ(天竺寺)というお寺に着いた。
ここも山の中の大きなお寺だ。
お参りして帰ろうとした。
そしたら本堂の隣の棟に食堂のようなところがある。
どうも皆んな無料で食事をしているようだ。
ビビンバのお接待だった。
セルフサービスでご飯と味噌汁をよそおう。
テーブルで食べる。
ご飯をたくさん盛ったからお腹いっぱいになった。
最後は食べ終わった食器を自分で水道水で洗って片付ける。
タダ飯が食えるなんて、素晴らしいお寺だ!
近所にあったら毎週来てもいいなあ。
ということで、下山したのが午後1時30分だった。
地下鉄の駅まで、ずらりと屋台やお店が並んでいた。
ここも登山道以上に賑わっている。
おしゃれなアウトドアの店やレストランもある。
チャンギ(韓国将棋)をやっている人たちもいた。
中国将棋とよく似ているが、ちょっと違う。
駒が成ることがない。
地下鉄の乗り場近くには焼き魚のお店がたくさん並んでいた。
お寺で食べたビビンバは精進料理で、動物性蛋白質をとっていない。
これでは身体に良くないので、焼き魚で一杯やることにした。
どうせならと、30代ぐらいの女性二人でやっているお店に入った。
鮎のような、なんかよくわからない魚を頼んだ。
子持ち魚のほうは、卵が歯ごたえがあって美味しかった。
ビールといっしょにチビチビとやっていた。
30代のおねーさんの一人が、やたら話しかけてくる。
「日本人か?観光できたのか?山に登ってきたのか?彼女はいるのか?」
さらにサービスだと言って、いろいろ追加で料理を持ってくる。
キムパプやチヂミやテンジャンチゲまで出てきた。
そのたびに「これは本当にサービスか?無料か?」と確認する。
お寺で大盛りビビンバを食べたし、ビールも2本飲んだし、お腹がいっぱいになっている。
でもせっかくのサービスを残すのは悪い。
大食い選手権に出場しているような気概で食べ続けた。
店を出るとき、おねーさんは「名前と電話番号を教えてくれ。日本に電話していいか?」と言った。
携帯の番号を教えたけど、その後かかってこない。
国際電話だから国番号を最初に入れなければいけないけど、おねーさんはそれがわからないのだろうか??
ということで、ほろ酔いになり、お腹がいっぱいになり満足しながら地下鉄に乗った。
朝来たときより一つ手前のドボンサン駅だ。
ここからソウルの中心まで30分ちょっと。
ゲストハウスに帰ったけど、まだ満腹だ。
最後の夜だから豪勢にカルビなど食べつくそうと思っていた。
でももうお腹に入らない。
近くのコンビニで焼酎と肴を買ってきて、宿で済ませた。
酔っ払いながら思っていた。
明日は日本に帰るのか、面倒だなあ。
まあいいや、また来年も山登りに来るぞ!
(おしまい)
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