木曽川完全遡行の記録、通算14日目だ。
7月21日(日)
午前7時、民宿いとせを出発する。
目の前には、木曽川の向こうに糸瀬山が見える。
民宿の名前はこの山の景色が良いからだろう。
中央アルプスの前衛峰だ。
大桑村スポーツ公園を出て、川の手前を左に曲がる。
舗装道路を歩いて行くと、やがて大きな工場がいくつも建っていた。
平成の大合併でまわりの自治体はどんどん合併していった。
なのに大桑村は独立して残っている。
「IHIターボ」という大企業の本社と工場があるからだ。
そのIHIターボの第二工場を過ぎる。
道路が突然細くなる。
ここからは林道だ。
未舗装の道になる。
ちょうど木曽川の右岸の切り立った崖の上に道が作ってある。
川や中央線や国道を見下ろすように歩いていく。
また舗装道路になってきた。
坂道を下っていく。
赤い鉄橋の桃山橋を渡る。
すぐに国道19号だ。
目の前に「ドライブイン木曽」があった。
山登りの帰りに、よくここで定食を食べた。
500メートルほど歩くと中央線倉本駅に着いた。
この無人駅舎では、登山の前夜に酒を飲みながら泊まり込んだものだ。
何度も通ったところを、こうしてあらためて歩いてみると新鮮な気分だ。
さらに1キロほど歩いて諸原橋を渡る。
昭和31年にできた木造の古い橋だ。
国道の対岸の静かな田舎道を歩いていく。
この田舎道は、地図上では下川原というところで行き止まりになっている。
だからもう一度橋を渡って国道に戻る予定だった。
でも新しくキレイな道ができていた。
県道509号線という。
なんだかよく分からないから、たどっていく。
県道はトンネルに入っていた。
その右脇、川沿いにもう一つ道がわかれて続いていた。
こっちの道はどこまで行っているのだろう。
1キロ先の小野ケ谷橋まで行ければ、すぐに寝覚の床だ。
こういうときに地図が当てにならないことがよく分かった。
国土地理院のこの付近の地図は昭和61年に調査したのが最新版だ。
GPSのグーグルマップでは林道などが載っていない。
こういうときに、いちばん頼りになるのがバイク向けのツーリングマップルだ。
だけどこれも登山道や杣道は省略してあるし、林道も一部しか載っていない。
つまり今回は、地図で調べてもよく分からないところに来た。
これは面白い!
一発勝負で進んでみることにした。
狭い舗装された林道を歩いていく。
このまま行くと、とんでもないところに登り、突き当りで終わりそうだ。
沢を越えたところに、ガードレールの隙間から踏み跡が下に降りていた。
それを辿って行くと、県道のトンネルの出口に降り立った。
県道の下の原っぱにワダチの跡がある。
なんとなく道のようなので、こんどはそれをたどっていく。
排水路が横切って道が途切れていた。
石垣を下りて河原に出た。
登りやすいところから土手に上がり、藪こぎをするうちにまた道があった。
それは次の木曽川の橋、小野谷橋に続いていた。
なんだか適当に歩いているうちに目的の橋まで来てしまった。
橋を渡って500メートルで「寝覚の床」駐車場に着いた。
ここをゆっくり見学するのは初めてだ。
浦島太郎がここで玉手箱を開けたという伝説がある。
キレイな花崗岩のゴルジュ帯だ。
まずは遊歩道が崩壊のため立入禁止になっている「裏寝覚」へ。
崩壊といっても、ちょっと道が崩れているだけで、これまで歩いてきたところに比べればどうということもない。
静かで良いところだった。
また戻って上流へ歩いて行くと「寝覚ノ床美術公園」があった。
しょぼい現代美術が幾つかあった。
メインの「寝覚の床・浦島堂」は河原の岩を伝っていく。
ちょうど観光客が骨折して、救急車が来ていた。
たしかに慣れていないと危険かもしれない。
「浦島堂」はゴルジュの岩のてっぺんにあった。
2畳ほどのお堂で、浦島大明神と書いた御札が飾ってあった。
階段を登って行くと「臨川寺」というお寺だ。
江戸時代からの古いお寺らしい。
ここで一番楽しいのは宝物殿だ。
浦島太郎グッズがたくさん収集してある。
キティーちゃんの浦島とか、よく分からない絵皿や土人形。
すごいのは浦島太郎が使った釣竿と文具が展示してあること。
その横にウミガメの剥製があるけど、竜宮城へ行ったカメさんなのだろうか??
それにしても犬山の桃太郎神社もそうだけど、木曽川というのは馬鹿馬鹿しいほど奥が深い。
臨川寺から正門を出ると国道19号だ。
道路を横断したところにカレー屋さんがあったので昼食。
「カレーハウス・ロッキー」だ。
ここのは3日以上煮込んだカレーだそうだ。
さすがに美味しかった。
カレー屋から国道の旧道を下って行くと上松町の市街だ。
線路沿いに歩いて、上松駅に着いた。
ちょうど2時6分の列車に乗り、南木曽駅へ。
駅から歩いて天白公園に置いてある車に戻った。
帰りは妻籠の奥にある日帰り入浴施設「木曽路館」へ。
のんびりと汗を流す。
来月は木曽路の中心地、木曽福島の観光とグルメの旅。
さらに足を伸ばして藪原まで行く予定。
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