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2010年07月12日23:11

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<ネタばれ注意>まだ君を好きになれる 心から(映画「ぼくのエリ 200歳の少女」を見て)

「また君に恋してる いままでよりも深く
 まだ君を好きになれる 心から」
(作詞:松井五郎・作曲:森正明・歌:坂本冬美
 「また君に恋してる」より)

 今ロングヒット中の坂本冬美の歌「また君に恋してる」の
1フレーズ。この映画をみながら、この1フレーズが
頭の中に流れてきた。
 恋する者の覚悟と信念が歌われているような気がする。
だが、そういう者たちを傍から見ていると、健気で、はかなくて、
悲しくて、痛々しい程胸が締め付けられる。
逆に言えば、それ程の強い思いでないと、愛情は
あっけなく吹き飛んでしまう。ましてや永遠の愛を
誓うならば。
 そう思うと、この映画にぴったりなフレーズだと益々
思えてくる。

 舞台は北欧スウェーデンの田舎町。冬になると気温は
氷点下まで落ち、一面が雪に覆われた銀世界に変わる。
 主人公の少年の名前はオスカー、12歳。
 両親は別居中。詳しくは語られていないが離婚している
かもしれない。息子の気持ちを全然分かろうとしない母親。
たまにしか会えないのに息子よりも仲間との約束を優先して
しまう父親。家族の誰一人としてオスカーの気持ちを理解
してくれない。孤独感にかられる。
 学校ではオスカーはいじめられっ子。3人のいじめっ子に
いたずらや暴力を受けるが、誰もオスカーの味方を
する者などいない。寄ってたかって一人をいじめるという
図式は世界万国共通のようだ。先生が全くいじめに
気づかないという点も日本とそっくり。ますます孤独感を
深めるオスカー。
 ある日、オスカーの住んでいるアパートに、一人の
老人と一人の少女が越してくる。それもオスカーの
隣部屋に。
 物語が進んでいくうちに、この老人と少女は親子や
祖父・孫というような関係ではない事が何となく分かってくる。
 ある日、アパートの中庭で一人オスカーが遊んでいると
越してきた少女が近寄ってきた。その少女の名前はエリという。
大人しそうだが凛としている少女。オスカーは一目ぼれする。
オスカーはエリに語りかける。エリに年齢を聞くと
だいだい12歳と答えた。「だいたい?」。エリは自分の
誕生日を知らない。プレゼントをもらった事がない。
そう彼女も孤独なのだ。ますます彼女に心魅かれるオスカー。
 彼女にもっと近づきたいとオスカーは、エリに
ルービックキューブを教えたり、デートに誘ったりした。
 そんなオスカーの優しさにエリも段々とオスカーに
心を開いていく。
 いじめを知ったエリはオスカーに言う。「立ち向かわなく
てはいけない。そうでないと生きていけないから」。
その言葉に励まされたオスカーはいじめっ子たちに逆襲を
誓う。
 二人の仲が順調に行き始めた頃、町では全身の血を全て
抜かれた遺体が次々と発見される。
 この事件は二人の関係に微妙な影を落とし始める。
何とエリの正体は人間の血を吸って生きながらえている
ヴァンパイアだったのだ。当然事件に関わっている。
だいたい12歳というのは見掛けの年齢で、実際に
生きた年数は相当なものである事もそれと無く臭わせる。
 大人ならばここで二の足を踏むのだろう。
事実と己の感情との狭間で心も体も真っ二つに
切り裂かれそうな思いになるはずだ。もしかしたら
その折り合いがつかず、彼女の前から逃げ出して
しまうかもしれない。
 だが純真無垢な少年の心には迷いはなかった。
孤独という真っ暗闇の中に一筋の明かりを灯してくれた
かけがえのない存在だから。それはオスカーに
対するエリの気持ちとて同じだ。
 二人を見ていると、拙者自身今まで生きてきた中で
これほど真っ直ぐに、これほど一途に人を愛した経験が
あっただろうか?と思ってしまった。そう考えると
二人の愛情にジェラシーすら覚える。
 事件の犯人を探し出そうと、追っ手が二人のもとに差し迫る。
 ますます二人の思いが強いものとなっていく。
 果たして二人は追っ手から逃げきる事ができるのか!? 
「また君に恋してる いままでよりも深く」
このフレーズが画面から聞こえてきそうだった。

エリが半永久的な若さで生きて行かれるのには秘密があった。
その秘密とは?
エリと一緒に越してきた老人の正体とは?
追っ手が迫り来る二人の運命は?

それらの謎が全て分かるラストは「うまい!」と感心させられた
のと同時に、胸が締め付けられそうになった。二人が背負っている
運命と、そうとしか生きられない宿命に。
またあのフレーズが画面の中から聞こえてくるような気がして
ならなかった。
「まだ君を好きになれる 心から」


(終わり)



 
 
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