11月7日(土)に南アルプス深南部へ行った。
以下はその記録だ。
前夜、浜名湖SAで午前0時を過ぎるのを待つ。
高速代を1000円にするため。
それで戸中林道のゲートに着いたのは午前2時だった。
寝酒のビールを飲む。
酔いが醒めないうちに朝になった。
午前6時30分、林道を歩き出す。
天気は晴天だ。
7時30分、林道のゲートからちょうど4キロの地点に来た。
「4キロ」という立て札がある。
緩やかな尾根の末端がある。
今回はここの尾根を登る計画だ。
登山道はないが、植林帯が続いているので踏み跡ぐらいあるだろう。
だけど、どこから登ったらよいのか分からない。
取り付きは全部急な斜面になっている。
もちろん人が登った形跡もない。
どうせならということで、尾根のいちばん先っぽから登り始めた。
岩がやたらと脆い。
手がかりにつかむと、ごそりと落ちてきたりする。
足もとが崩れて、ずるりと滑ったり。
なんとか20メートルほど登ると傾斜も緩やかになる。
木の幹につかまりながら快調に登っていく。
すぐに踏み跡が出てきた。
それもかなり、はっきりしている。
赤テープも要所ごとにつけてある。
林業用の杣道だ。
たぶんこれに沿っていけば、かなり上まで楽に行けるだろう。
踏み跡とテープは、ときどき不明瞭になったりした。
地図を拡げて位置を確認しながら、なんとか登っていく。
それにしても、あたりには人の気配が全くない。
南アルプス深南部というのは、もともと登る人が少ない。
さらにここは登山道がないルートだ。
山の中にひとりぼっちだ。
じつに気持ちがいい。
座り込んで休憩していると猿や鹿が寄ってきた。
そんなに人間が珍しいのだろうか。
稜線が近づいてきた。
登りきれば一般道があるはずだ。
踏み跡やテープがだんだん途切れてくる。
もうさっぱり分からない。
適当に登っていく。
午前10時、稜線に着いた。
明瞭な登山道がある。
あーよかった。
これで今回の登山は終わったようなものだ。
登山道に沿って「バラ谷山」へ向かう。
さすがに南アルプス深南部だけあって、一般道も不明瞭だ。
すぐに違う道に迷い込んでしまう。
しかしまあ方向さえ間違わなければ、そのうち正しい道に戻ることができる。
とぼとぼ歩いて1時間ほど。
突然、開けた広場のような場所に着いた。
富士山が大きく見える。
思わず「おー!」と声が出た。
バラ谷山(2010m)の頂上だった。
ここは日本最南端の2000メートル峰だ。
「本邦最南2000mの地」と看板も立ててある。
ということは、今年登った青森の八甲田山や愛媛の石鎚山よりずっと高い。
なのに登山道もろくになくて、めちゃくちゃ地味な山だ。
さすが南アルプスだなあ。
少し寝転んで展望を楽しんだ。
すぐ1キロ先には「黒法師岳」がある。
さらにたどっていくと不動岳、池口岳、その向こうに3000メートル級の山々がある。
ほんとうに、ここは日本アルプスの南の端っこだ。
その後のことは、とくに書くこともない。
黒法師岳に登り、反対側の尾根を降りて、等高尾根という下山道を駆け下りて、戸中林道に着いた。
林道ゲートに駐車してある車に戻ったのは午後5時。
ちょうど日が暮れかけた頃だった。
すっかり暗くなった山の中を運転して町に戻る。
相変わらず細くてガタガタの道だ。
南アルプス深南部はじつに奥深い。
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