「本明寺」を出てからしばらく街の中心に向かって走る。
鶴岡市の市街に来た。
交通量も多くて、お店もいっぱいある。
そんな街の真ん中に「南岳寺」がある。
ガスト鶴岡店の裏だ。
お寺の隣ではマンションが建設中だった。
お寺の敷地は半分ぐらい墓地になっていた。
ここは檀家さんもいて裕福なのだろう。
本堂は立派な鉄筋コンクリート建てだ。
「即身仏はこちら」という案内板のほうに行く。
ピンポンを押して扉の中に入る。
20畳ぐらいの部屋に即身仏さんがいた。
空調の効いたきれいな部屋だ。
先客がいて、熱心にお寺の奥様の話を聞いている。
わたしも混じって、お話を聞く。
上品そうな奥様だ。
PTAの副会長などをしていそうな感じの方だ。
ここの即身仏さんは明治時代の新しいものだ。
かなり保存加工がしてあって、内臓や脳は取り出されている。
だけど皮膚や筋肉はよく残っていた。
立派なガラスケースに入れられている。
両サイドには、それなりに高価そうな仏像や、即身仏さんが生前に書いた掛け軸などが展示してある。
博物館の展示室のような雰囲気だった。
ここでも即身仏さんの古着のお守りを売っていた。
300円と安かったから買う。
つぎに向かったのは「海向寺」。
最後の即身仏寺だ。
鶴岡市のとなりの酒田市にある。
車で国道7号線を20分ほど走る。
酒田市内の港の近くにあった。
お寺のすぐ向かいが映画「おくりびと」のロケ地だった。
山崎努が社長をやっている会社の建物だ。
いまでは「おくりびと記念館」になっている。
観光客がたくさん来ている。
だけど「海向寺」を参観している人は一人もいなかった。
ここは日本でただ一つ、2体の即身仏がいるお寺だ。
小さなコンクリート建ての倉庫のようなところに即身仏さんたちはいた。
鉄の扉を開けてもらって中に入る。
さすがに2体ならんでいると壮観だ。
ステレオの迫力である。
建物の壁には訪れた人の感想文なども貼ってあった。
小学生の作文もあって
「即身仏を見てすごいと思いました。」なんて書いてある。
外の廊下にはライシャワー元駐日大使の手紙も展示してあった。
「異なる文化に触れて感動している。」
即身仏さんたちは、たくさんの人たちに拝観されているのだ。
案内してくれたのは理知的な感じの奥様だった。
ご主人の住職さんも勉強家の方のようで、ご夫婦で熱心に即身仏の歴史を研究しておられるようだ。
興味深いお話しをたくさんしていただいた。
湯殿山の即身仏さんたちの相関関係とか、宗教的な意味とか、古文書で見た歴史とか。
車を「海向寺」の駐車場に置かせてもらって、付近を観光した。
ちょっと歩くと港の見える丘があった。
見渡すと出羽三山が見えた。
あの山の向こうから、三日間かけて即身仏めぐりをしてきた。
即身仏も素晴らしかったけど、案内してくれたお寺の人も良い人たちばかりだった。
なかなか楽しかったなあ。
東北旅行はこれで終わったのではない。
この日から一週間近く、まだあちこちをさまよい続けた。
だけど話が長くなるから、いちおうおしまい!
(完)
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