黒法師岳・敗退の帰り道、立ち寄ったところがある。
山住神社に参拝したのだ。
山奥にある神社だった。
林道ゲートから水窪ダムを横切って、また山の中へと入っていく。
高度が上がり、1000メートルを超えたところに山住峠というところがあった。
山住神社の本殿は峠の辻にあった。
ここはニホンオオカミを祭ってある。
狛犬がオオカミだった。
あまり古いものではない。
形態もなんだかマンガチックでかわいかった。
大きなご神木や古い拝殿が歴史を感じさせる。
売店があった。
おみくじやお守りが売っている。
オオカミの絵を描いた御札が売っている。
ずいぶんリアルなオオカミだ。
絶滅前は、このあたりにもたくさん生息していたのだろうか。
売店の神主さんにお話を聞く。
オオカミは山の神である。
山の神気により農作物などを守ってくれる。
昔はこの神社も講が盛んで、全国からオオカミの御札を求めに来たそうだ。
同行者は長野県出身だが、子供の頃にオオカミの御札をよく見かけたそうだ。
おもに畜舎とか馬小屋とかに張ってあったらしい。
オオカミは肉食動物で、シカやイノシシなどを捕食していた。
つまり農作物を荒らす害獣を退治してくれる、いいやつだったのだ。
しかもやつらはイヌ科だから、人間にはあまり危害を加えない。
だから神とあがめられ、神聖視されていたんだろう。
ニホンオオカミが絶滅してから100年がたつ。
いまだに山奥の神社でひっそりと御札になっている。
やっぱり日本人とオオカミは、近世までは良好な関係だったようだ。
しかし意地悪く考えれば、絶滅動物を描いた御札なんて効き目あるのだろうか。
もうこの世界のどこにもニホンオオカミは存在しないのだ。
雨はしとしと降り続いている。
神社をあとにしてわたしたちは街へ帰る。
またしても長い長い林道を走った。
静岡県・奥遠州は本当に山深い。
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