節足動物門昆虫綱甲虫目カミキリムシ科 Aromia bungii
中国大陸・モンゴル高原・ロシア極東部・朝鮮半島・ヴェトナム北部が原産地ですが、木材梱包材や感染した苗木を通じて世界各地に拡散しています。
成虫は、触角と長い脚を除いて、体長が通常約30mmですが、最小では22mm、最大では38mmの記録もあります。光沢のある黒い前翅と赤い前胸背板の組み合わせによって識別出来ます。黒色の触角は体長と同等かそれ以上の長さになり、全身が黒い個体も存在します。刺激を受けると麝香・柑橘系の独特の匂いを出します。
夏の間、雌はバラ科サクラ属の木の樹皮の裂け目、主に樹幹の基部に卵は樹皮に産み付けます。産卵から約10日後に孵化した幼虫は白っぽく、当初は靭皮(ジンピ)部を食害しますが、後に幹の中にトンネルを掘って木部にも侵入し、トンネル(食道)は幅12mmに達し、摂食活動により大量の糞が蓄積されて幼虫によって樹木の外へ押し出されるため、サクラ属の樹木の根元に見られるこの糞は、この害虫の調査において、被害の有無を示す有用な兆候となります。被害は甚大であり、激しい被害を受けると果実の収量や樹木の成長が低下し、最悪の場合、樹木が枯死する事もあり、特に桜の大敵とされています。
幼虫は完全に成熟すると体長50mmに達し、場合によっては数年を要して成長、その後、蛹期を経て成虫となります。
主な寄主植物は、桜・桃・梅・梨・杏で、果樹や観賞用のサクラ属の種に加え、バラ科に属する他の近縁植物も寄主となります。ポプラ・オリーヴ等への寄主が見られたとの記録もありますが、疑わしい模様です。
6月中旬〜7月下旬に成虫となり、成虫の寿命は1〜2ヶ月ですが、繁殖力は非常に強く、雌は生涯に300〜1000個もの卵を産みます。成虫は熟した果実や腐敗した果実を餌とし、酢に誘引されます。実験室では、林檎の切れ端を与える事で生息を維持出来ます。成虫は飛ぶ事が出来ますが、その分散能力は年間数百m程度の短距離に限られると考えられています。
2010年にイタリア南部カンパニア州ナポリ近郊地域で大発生を引き起こし、数百本の果樹が枯死しました。現在もイタリア国内で広がり続けており、2013年には北部のミラノ近郊、2020年にはローマから近いラツィオ州、2023年にはトスカーナ州で発見されています。ドイツ南部では、2011年にバイエルン州ローゼンハイム近郊で被害が確認されました。
日本では平成24(2012)年に愛知県で初めて発見されて以降、分布を拡げており、平成25(2013)年には埼玉県、平成27(2015)年には大阪府・徳島県、平成28(2016)年には栃木県、令和3(2021)年には神奈川県、令和7(2025)年には茨城県・三重県・滋賀県・群馬県・東京都・千葉県で定着が確認されました。これらの地域における個体群はすべて地理的に隔絶しており、DNA解析の結果、個体群は複数の経路での移入に由来する事が示唆されています。
特に大量に植樹されている染井吉野の被害が顕著なため、平成30(2018)年、環境省によって特定外来生物に指定され、見つけた場合は必ず誅殺する事が義務付けられています。私も写真撮影後に誅しました。
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