1)
一つ目の問題。
関東圏在住の方々にはわかって当然のことかもしれないが、
救急車が所属している太田市は「群馬県」。
患者が最初に搬送された病院は佐野市、つまり「栃木県」にある。
隣同士だか違う県だ。
救急車による搬送は市町村単位で行う。
県境を越えての搬送は通常は行わない。
ただし、状況が特殊な場合は救急隊長判断で県境を越えての搬送があり得る。
この事例では「妊婦が佐野市在住、佐野市にかかりつけ病院あり」とのこと。
それまでの経過を知らない病院に妊婦を搬送するのはリスクが大きい。
(別な言い方をすれば「あとが面倒」)
太田市は栃木県に接しており、それほどの長距離ではない。
それらを鑑みて太田市の救急車が佐野市に向かったと思われる。
佐野市のかかりつけでは「手にあまる状況」とされた。
‥妊婦健診だけしか行っていない入院施設のないクリニックだった可能性がある。
痛みがひどいまたは出血がひどいなど、入院した上での処置必要ということだろう。
では別な病院に搬送するしかない。
緊急対応できて産婦人科やNICUのある大きい病院、この場合は自治医科大学付属。
栃木県下野市にある。
佐野市から下野市に向かう途中で事故が起きた。
すれ違いがやっとのガードレールもない田んぼの中の道。
救急隊員はカーナビを見ながら運転した、と報道されている。
普段は行かない他県、しかも最初の搬送先からの再搬送。
慣れない道と慣れない状況で事故が起きてしまった。
やむをえないとは言わないが、救急隊員はスーパーマンではない。
日本中どこへでも要求通りにすいすいと行けるわけではない。
もっと太い道路を行けばよかったのにとか脱輪するのがおかしいとか、
救急隊員を責めるコメントが散見されるが、いくらなんでも酷であろう。
2)
二つ目の問題。
救急搬送依頼があったのは午前5時ころ。
太田市のコンビニ駐車場から「1時間前から妊婦が腹が痛い」という内容。夫から。
1時間前といえば午前4時、この季節では夜明け前である。
佐野市在住の妊婦がなぜ午前4時から腹が痛いのをほっといた?
なぜ腹が痛い状態で隣県の太田市のコンビニにいた?
産婦人科医の立場から言わせてもらえば、
妊婦が夜中(夜明け前は夜中だ)に他県のコンビニ駐車場にいるなど、
とても考えられない。
いったい何の重大なご用事がおありになったのか?と思う。
距離的には、もし午前4時に太田市にいて腹が痛くなったら
とりあえず佐野市の自宅に帰って安静にして午前5時を迎えることだって
可能だったのではないか?
自宅から救急車を呼べば栃木県を走り慣れた佐野市消防所属につながったのに。
佐野市の救急車なら下野市の自治医大病院は知ってるはずなので、
脱輪するような狭い道を選ばないことも可能だったと考える。
3)
そして最後に、これは分娩に立ち会った医師が言ってるが、
「21週の流産と脱輪事故には因果関係がない」。
この言葉に対して「100%因果関係がないなんて断言できない」とか
コメントしている人もいるが、診察した医師が言うのだから
素人さんの意見が入り込む余地がない。
産婦人科医の自分が考えるにおそらく
「もし救急車が光の速さで駆けつけてその速度で自治医大にきたとしても」
流産が避けられないような状況がはっきりしていた可能性が高い。非常に高い。
この事例からもし学ぶなら
「妊婦はかかりつけ病院のある場所から離れるな」
「今が安定していても突然の状況変化がありえるのが妊娠、甘く見るな」
ということ。
妊娠をなめてはいけない。妊婦自身も、周囲の人間も。
■妊娠中の女性搬送中に救急車が脱輪事故 搬送遅れその後流産 道幅狭い道路で対向のトラック避け側溝に脱輪 消防「重く受け止め」 病院の医師は「因果関係なし」と説明
(TBS NEWS DIG - 03月05日 15:17)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=266&from=diary&id=8695380
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