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2026年01月07日17:57

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【映画】『恋愛裁判』

東宝様からご招待いただき、昨年12月にプレス試写で拝見することができました。

 
『淵に立つ』『よこがお』『LOVE LIFE』などの傑作を作り上げてきた深田晃司の新作なので、当然見るつもりでいた。しかし多少の不安もあった。「女性アイドルの恋愛禁止ルールを巡る裁判」という題材は、興味本位的な面白さこそあれ、1本の劇映画にするほどのものなのか。ましてや、あの深田晃司にはミスマッチな題材ではないのかと思ったからだ。劇場で見る予告編も、その印象から外れるものではなく、期待と不安が相半ばする感じだった。

実物を見ると、少なくとも途中までは、その予感は当たっていた。ストーリー的にはほぼ想像がつく展開ばかりで、題材的な新鮮味はない。
ただし予想を超えていたのは、その語り口の緻密さだ。脚本も演出も撮影(四宮秀俊!)も演技も一切のゆるみなし。新鮮味はなくとも、ドラマとしての彫りの深さは秀逸なもので、実写版【推しの子】という称号は本作にこそふさわしいとさえ思った。「なぜ深田晃司が、あえてこの題材を?」という疑問はなかなか消えなかったが、十分に佳作と言えるレベルに達していた。

だが話はそこでは終わらない。終盤の30〜40分くらいだろうか。裁判の行く末が見え始めたあたりから、この映画は別次元への飛翔を開始するのだ。

ネタバレを避けるため漠然とした表現しかできないが、その辺りから「人生の選択」という、本作の真のテーマが明らかになる。
見る前の予想に反し、この作品は「アイドルの恋愛禁止」というルールを人権に反するものだと糾弾するような内容ではなかった。もちろんそのルールを単純に肯定するわけではないが、そこで描かれるものは「個人のさまざまな選択」であり、つまるところ「自分はどのように生きるべきなのか」という問題に収斂される。人生の岐路において何かを選択する困難さ、どのような道を選んでも必ず残る後悔や不安、それでも人は傷つきながら前へ進む以外にないという希望と絶望を描く物語だ。

だからこの映画には、理念の対立や選択の相違こそあれ、憎悪のぶつかり合いや、人間性を抑圧する分かりやすい悪役は存在しない。主人公の真衣(齊藤京子)とは真逆の立場に立つマネージャーの早耶(唐田えりか)や社長の吉田(津田健次郎)も決して悪役ではなく、それぞれに自らの生き方を選択し、貫いた結果として、裁判の場に立つのだ。

深田晃司は、これまで人間の暗部に焦点を当てたエキセントリックな作品が多かったように思う。それに対してこの『恋愛裁判』は、エキセントリックさは控えめ。最終的に感じられる後味は、苦さに満ちた希望であり、(見ていないものも多いが)これまでの深田映画で最も多くの人に訴求する可能性を秘めた作品となっている。
見る前の私と同様「アイドルの恋愛禁止裁判に関する物語など、見なくてもだいたい想像がつく」と思っている人がいたら、ぜひ騙されたと思ってご覧になるといい。きっとそれを超える感動を覚えるはずだ。

主演の齊藤京子は素晴らしい熱演で、脇を引き締める唐田えりかも良いが、ぜひ注目してほしいのは梨紗役の小川未祐。役柄的に目立つポジションではあるが、それを差し引いても抜きんでた存在感だ。俳優もやっているが、どちらかと言えばミュージシャンとしての活動がメインのようで、聞いてみると、これがまた実験性と叙情性を兼ね備えた非常に面白い音楽。次代を担う若き表現者として要注目だ。


https://renai-saiban.toho.co.jp 


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