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2025年12月30日00:30

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【本】『11の物語』パトリシア・ハイスミス

今年は去年と打って変わって、ほとんど本を読めなかったのだが、その中で最も印象的な1冊を上げるなら、間違いなくパトリシア・ハイスミスの『11の物語』だ。

パトリシア・ハイスミスと言えば『太陽がいっぱい』や『見知らぬ乗客』『キャロル』などの原作者として知られるが、実は非常に文学性の高い作家であることは前から知っていた。だが『太陽がいっぱい』などは映画が好きすぎるが故に、それとはだいぶ雰囲気が違うことが分かっている原作を、あまり読む気が起きなかったのだ。しかしこの『11の物語』は、『PERFECT DAYS』で「すっぽん」が引用された程度で、直接の映画化はされていない短編集。それでようやく読んでみることにした次第だ。

文字通り11の短篇からなる作品だが、驚愕の面白さ。つまらない作品が1つもない。「短編集」という枠組みで言うなら、これまでの人生で読んだ中でもベストに位置する作品ではなかろうか。

まずジャンルの豊かさに驚かされる。ホラーあり、ミステリーあり、恋愛心理を描いたものあり…どの作品も明確な起承転結があり、第一級のエンタテインメントになっている。しかし、それだけにとどまらないのは、どの作品も「強い緊張を強いられた人間の心理」が克明に描かれているからだ。それは殺人を犯した者の心理であったり、怪物に追われる者の心理であったり、役に立つ人間でありたいという強迫観念に支配された者の心理であったりする。ほとんどの場合、登場人物の置かれた状況は極端なものだが、全てが我が事のようにリアルなものとして感じられる。特殊を通じて普遍に到達した、見事な心理小説ばかりだ。

つまらない作品は1つもないが、特に好きなのは、恋する者の愚かさを描いた「恋盗人」、母親の抑圧から逃れようとする少年のガラスのような心理を描いた「すっぽん」、走馬灯のような人生の思い出と未来への希望と絶望を描いた「モビールに艦隊が入港したとき」あたりか。

これはやはり『太陽がいっぱい』などのリプリーシリーズも読まないといかんな。

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