「ワン、ツー、スリー(ラヴ・ハント作戦)」One, Two, Three。1961・ミリッシュカンパニー/ピラミッドプロ・白黒35�丱轡優泪好魁璽弃册範�語(BD)。監:ビリー・ワイルダー。原:フェレンツ・モルナール戯曲『Egy, kettő, három』。脚:IALダイアモンド。撮:ダニエル・ファップ。編:ダニエル・マンデル。
音:アンドレ・プレヴィン。出:ジェームズ・キャグニー、ホルスト・ブッフホルツ、パメラ・ティフィン、アーリン・フランシス、リーゼロッテ・プルファー、ハンス・ロター、ハワード・セント・ジョン、レオン・アスキン、カール・リーフェン、ティル・キウェ、ヒューベルト・フォン・マイヤーリンク。
東西冷戦下の『鉄のカーテン』を風刺した喜劇で、スクリューボールコメディの完成形と言っても過言では無い可笑しさは、冷戦を知らない人達にもスラップスティックコメディーとして充分に(というか過剰に)楽しむ事が出来る喜劇の傑作です。日本BD版はそれを支える字幕和訳のセンスがこれまた抜群。
そしてスクリューボールコメディ名物、超有能な秘書!。舞台は1961年のベルリンですが、撮影中に所謂『ベルリンの壁』が構築されたので解説が対応追加されてます。勿論、ロケも東側の許可は降りず、まだ壁の無いブランデンブルク門はバイエルン・スタジオに実物大オープンセットが組まれました。
それでも圧巻は西ベルリンロケで、独『コカ・コーラ』社屋や工場は実際のベルリン支社。東西冷戦だけでなく、政治・民族文化、資本主義、共産主義、組織社会を徹底的にオちょくってバカにしており、しかも実名で組織やブランドが次々に登場してよく許可が降りたよなと感心します。さらに主人公は
ロバート・マクナマラ国防長官(元フォード社長、後に世界銀行総裁)を風刺したパロディーである事は映画の内容から偶然の一致では無いと思います。お笑いとはいえ国際社会の分析本気度が余りに高く、宇宙開発ではソ連が合衆国をリードしていた焦りも反面教師的に表現。キューバとソ連の関係は
フルシチョフとカストロの写真をプラカードに掲げた行進映像で示唆(日本語字幕による説明無し)。「キューバは葉巻をソ連に送り、ソ連はロケットを送る。」との台詞で、直後のミサイル基地の発覚とキューバ危機を予見しており椅子から転げ落ちるほど驚きます。
「ロケットを贈る」のロケットはミサイルの事ですが、露語では双方『ракета(ラケータ)』で、全体が宇宙競争で米国が負けてる流れなので意図的にロケットとしたと思われます。なお英露語の違いは「ファイヤーフォックス(1982)」の木原たけし訳吹替版クライマックス【必ずロシア語で考える事】で堪能出来ます。
一方、共産圏の広がりを都市名で列挙する台詞では『キエフ(キーウ)』をスルーしており、他にも同様な例の作品がある事から現在の国際情勢を慮った翻訳段階での演出意図と思われます。当時の米国文化を比喩するのに人気TV番組名が使われており、西部劇ドラマ「ガンスモーク」も抜かりなく翻訳。翻訳家の優秀さが昭和レベルで素晴らしい。
独社員が踵を鳴らしてローマ式敬礼をしようとする『そんな奴は居ねぇよ』とツッコミたくなる爆笑演出から、アメリカ人は全員ヤンキーじゃない(北部連邦地域出身者の事で、南部連合地域をヤンキーとは呼ばない)など、日本人には分かり辛い意味のマシンガントークで翻者は本当に大変だったと思います。
『ダグラスDC-6』旅客機が軒下まで入って来る空港は『テンペルホーフ』ですが、よく見ると不自然な部分があり米国内の格納庫に書割りを張ったものと推定。『ボーイング707』などが映る滑走路シーンは民間化直後のテーゲル空港だと思います。本作では世界を制するアメリカンブランドがこれでもか!とばかり
登場しますが、航空会社は勿論『パン・アメリカン航空』(誰がこの1/4世紀後にパンナムが倒産すると予見したでしょうか)。車も勿論見物で、空港ではAEGのターレットカーやスタインボックのフォークリフトが活躍、ベルリン市内ではフォルクスワーゲンのビートルやバン、メルセデスベンツの高級車は勿論、
戦前からの三輪トラック『テンポ・ハンシート』、航空産業から転向した『メッサーシュミット・KR200』、DKWは乗用車やサイドカー『SB200』、カーチェイスシーンで活躍?するのはグリルにフォード風の尖りがある1958年型『モスクヴィッチ407』で、台詞である英国車のコピーというのは演出上の設定。
本作ではコカ・コーラのソ連(共産圏)輸出契約に成功しますが、現実では資本主義の象徴として認められず東側進出はペプシコーラが行っており、やはりラストシーンから現実が本作に追い付く結果に成ってるのが後の時代から見て可笑しさ倍増(なので後の東欧ロケ作品にはペプシが登場)。
またその内容は邦画で同時期の「社長シリーズ」や、特に本作直後から開始されたクレイジーキャッツの「無責任シリーズ」(共に東宝)に影響を与えていると感じます。Jキャグニーといえば私的には「ミスタア・ロバーツ(1955)」のモートン艦長、ブッフホルツといえば「荒野の七人(1960)」のチコですね。
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