山田 彩乃
【究極の愛の形】
お腹の子は、お腹に宿ったその瞬間から、一生お母さんの細胞を守り続ける。
「子供は自分の分身」という言葉は、比喩ではなく科学的な事実であることがわかりました。
たとえお別れすることになった子であっても。
始まりは、1893年にドイツの病理学者が、亡くなった妊婦の肺から胎児の細胞を見つけたことでした。
ターニングポイントは、約120年後の2011年。
ニューヨークのシンシナティ子供病院の研究チームが、マウスを使った実験で「胎児の細胞が母親の心臓の傷に集まり、新しい心筋細胞に変化して修復を助けている」ことを突き止めました。
2012年には、ワシントン州のフレッド・ハッチンソンがん研究センターの研究により、亡くなった女性の脳から、数十年前の妊娠時に取り込まれたと思われる男性(胎児)のDNAが発見されました。
これにより、「胎児の細胞は全身に広がり、脳や心臓といった重要機関の一部として一生機能し続けている」という事実が世界に衝撃を与えました。(「胎児マイクロキメリズム」と呼びます。)
この絆は、出産に至ったかどうかにかかわらず、「命が宿ったその瞬間」から始まり、母親の体内で驚くべき働きをすることがわかっています。
◎ 損傷部位を検知して駆けつける
母親の心臓や肝臓がダメージを受けると、そこへ移動して自ら細胞を修復しようとする。
◎ 寿命をサポートする生存戦略
母親の体の劣化を防ぎ、生命維持を助ける。
◎ 境界を超えた共存
本来、細胞はは「異物」として排除される仕組みにも関わらず、免疫機能を飛び超えて母親の細胞に溶け込み、互いの生存確率を高め合う。
たとえお別れすることになった子であっても、その細胞はお母さんの体の中に残り、今も傷ついた場所をそっと直し続けてくれているのですね。
一人で生きているようでいて、私たちは細胞レベルで「大切な存在」とずっと共生し、守り合っている。
そんな究極の愛の形が、私たちの身体には組み込まれているようです。
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