普段は見ることのない明治座での商業演劇だが(だってチケット代高過ぎだろ!)、たまたまご縁があり、ゲネプロにご招待のお声がけをいただいたので、こんな機会でもないと、この手の公演はなかなか見ないから社会勉強で…という感じで見に行った。やはり世の中ご縁とご恩ですね。
山崎豊子の超有名作で、昔NHKのドラマが大評判になったが、残念ながら原作にもドラマにも接していない。この舞台が初『大地の子』である。
物語に関しては圧倒的に素晴らしいもので、まさに文句のつけようがない感動的な大河ドラマだ。
個人的には、昔 中国第五世代の映画にハマったことをきっかけに、文革や下放については散々見たり読んだりしたので、よく理解できることばかり。逆に言うと、その手の知識がない若い人などは、いきなりこれを見せられてどう思うのか、興味が湧く。
この時代の中国は本当に酷い国だったとあらためて思う。今も世界に冠たる監視国家であり、お世辞にも自由な国とは呼べないが、それでも文革時代に比べればはるかにマシだろう。今の日本も酷い酷いと言いつつ、こちらの酷さと比較したら、まるで桁が違う。
スターリン時代のソ連やクメールルージュ時代のカンボジアもそうだが、20世紀に共産主義国家が行った同国人に対する蛮行は、人類史の中でも最悪の部類に属することを痛感する。と同時に、中国に関して言えば、そのような怪物体制を作り上げてしまった大きな一因は、日本の侵略にあったわけだが。
ついそんなことを書いてしまったが、物語は政治批判よりも、そんな過酷な歴史に翻弄される人々の人間ドラマを主眼に描く。人生のあらゆる要素がてんこ盛りで、どんな人であれ、多彩な登場人物の誰かに共感せずにはいられないことだろう。
役者で特に良いのは、まさに大地のごとき巨大な人間性を体現した山西惇。この人、『エンジェルス・イン・アメリカ』でロイ・コーンを演じてから、完全に一皮剥けたのではなかろうか。物語の中でも、とりわけ悲劇的な運命をたどる奈緒がそれに次ぐ素晴らしさ。逆に主役の井上芳雄が、何だか硬い感じで、舞台を引っ張る力強さに欠けるのは気になった。ちなみに歌は一切ない。上白石萌歌は清楚で可愛かった。
そんな具合に素晴らしいところも多いのだが、舞台としては技術的な面で大きな不満がある。とにかくセリフが聞こえないのだ。とりわけ前半は、静かなセリフ劇の場面が多いのに、セリフ劇でセリフがまともに聞こえないのだから洒落にならない。そのせいで周りは居眠りする人だらけ。中でも最悪だったのは、声にエコーがかかった収容所のシーンで、半分も聞き取れないのには絶望的な気分になった。6列目のど真ん中という良いポジションでその状況なのだから、もっと後ろの方や端の席はどうなっていたことだろう。
それでも後半はかなり改善されたし、ドラマの核心部分に入り、もはや多少聞き取れなくても何を言っているのか理解できる状況で、周りの人々もしっかり目を覚ましていたw いや、しかしそうなると、やはり前半のあのセリフの聞こえなさは、音響の問題ではないのか? 普段、こんな大きな劇場で芝居を見ないのでよく分からない。実は商業演劇はみんな、こんなものなのか? だとすれば商業演劇と言いながら、商品としての価値が低すぎだろう。
まあ本日はゲネプロなので、まさにそういう部分を今日で調整し、本番ではセリフがはっきり聞こえる状態になっていると信じたい。内容そのものは素晴らしいが、普通に13000円払って、あんなセリフの聞こえない芝居を見せられたら、さすがに怒るぞ。
お客さんとして来ていたらしい田中美里様を、途中休憩で見かけた。凛々しくお美しい、中年女性の鑑のようなお方だった。若い頃よりも、最近の彼女の方がはるかに好き。
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