初公開時に見て以来なので、およそ30年半ぶりの再見となる。
ご存じの方も多いと思うがIMDbのユーザーレイティングにおいて9.3点を記録してオールタイムナンバーワンの座に君臨し、今や歴史的名作の1本に数えられている作品だ。
だが私は初公開時に見たとき、本作をあまり評価できなかった。オスカーの作品賞候補にもなったことで非常に期待して見たのだが、「良い部分はすべてスティーヴン・キングの原作にあるもの」、すなわち「原作小説を読めば済む話」であり、映画ならではの良さを感じられなかったからだ。その原作である「刑務所のリタ・ヘイワース」も、文庫本で併録されていた大傑作「ゴールデンボーイ」の影に隠れた感があり、キングの諸作の中で特筆すべき作品とは言いがたい。
アカデミー賞では7部門にノミネートされながら1つも受賞せず、公開時にそこまで大評判になった印象もない。それでもキネ旬で1位になったのには驚いたが、2位が『スモーク』、3位が『マディソン郡の橋』…と見ていけば、傑出した作品がなった年であることが分かる。
そんな本作がいつの間にか世紀の名作としての地位を不動のものにしている。もうキングの原作は細かいことは忘れているし、一度見直して、あらためて評価してみようと思い、劇場に向かった。日曜日とは言え、午前十時の映画祭としては異例なほどの混み具合で、一般的にも人気が高い作品であることが伺える。
結論としては、初公開時よりもはるかに素直に楽しめた。テーマ的にもストーリーテリング的にも、ハリウッド映画の王道と言える内容。不屈の精神で刑務所のような施設の中に希望をもたらしていくアンディ(ティム・ロビンス)のキャラは、『暴力脱獄』のルークや『カッコーの巣の上で』のマクマーフィーなど、アメリカ映画が大好きなヒーロー像だ。そこにスティーヴン・キング作品らしいえげつなさが加わり、王道の安定感と、そこから逸脱する刺激がバランス良く組み合わされている。
今回見て気がついたのだが、本作の構造はかなり『戦場のメリークリスマス』に似ている。結末こそ大きく違うが、非人間的な施設で苦しむ人々を導き、人間性を回復させていくイエス・キリスト的な人物の物語は、もはや1つの定番と言っていいものだろう。
また物語の語り手となるのは、アンディではなく、彼と出会ったことで自らの罪を自覚し希望へと導かれるレッド(モーガン・フリーマン)だ。この構図はイエス・キリストと、その行いを語り伝えたマタイなど弟子との関係と相似している。作中に登場する聖書が、ある形で希望への道標となり、その中の言葉が実現することからも、全編が宗教的寓意に基づいていることは間違いない。
そんな具合に、キングの原作を忘れた事で、純粋に1本の映画として楽しむことができた。優れた映画であることは確かだ。
しかしこれがオールタイムベストクラスの名作と言われると、さすがにちょっと首を傾げるものがある。
実に丁寧に作られた作品ではあるが、丁寧すぎて142分の上映時間は長すぎるように感じた。公開時に「(悪い意味で)原作に忠実過ぎる」と感じたことからも分かるように、「小説の映像化」としては面白いが、原作に囚われない映画ならではの魅力という点ではやはり物足りない。アカデミー賞7部門にノミネートされているが、あらためて確認すると、予想通り監督賞にノミネートされていないことからも、それが分かる。撮影監督ロジャー・ディーキンスのソフトな陰影に満ちた絵作りは魅力的だが、21世紀に入ってからの諸作と比較すれば、息を呑むほど素晴らしいとまでは言えない。
非常に魅力的な物語ではある。だが「映画として非常に魅力的か」と言うと、「悪くはないが、もっと映画的な作品は他にいくらでもある」というのが妥当な評価だろう。つまり、初公開時よりも作品としての評価は高まったが、評価の本質自体は変わらなかったということだ。個人的には、年間ベストテンの8位から10位くらいの間に入る作品という印象だ。
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